職場の人間関係を悪くする「4大毒素」とは? “ギスギス感”を解消するポイントをプロメンターが解説

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「後輩たちへ」

長く仕事は続けていきたい。でも、どんな仕事が自分に合っているのか、そもそもどんな人生を送りたいのか、自分のありたい姿が明確にならない女性も多いはず――。そこでこの連載では、さまざまな人生経験を積んできた『Mentor For』のメンターたちが、“豊かなキャリア”を描いていくためのヒントを後輩女性に向けて送ります

こんにちは。MentorFor公式メンターの前田典子です。金融、そして人材育成業界でのキャリアを生かし、プロのメンターとして活動しています。前回は、職場のコミュニケーションでのモヤモヤ改善法について寄稿しました。

今日は職場の人間関係を蝕んでしまう「毒素」とについて、お話したいと思います。
毒素を発生させないために、あるいは発生している毒素に対して、どの対処すべきなのか、解説していきます。

職場が暗い、ギスギスする……それって何で?

背を向け合ってギスギスした様子の女性同士の写真

職場の雰囲気が何となく悪い」と感じたことはありますか?

ギスギスしていたり、皆が暗い表情で仕事をしていたり、活気がなかったり……。このような状況だと、そこにいるのが心地良くないだけでなく、仕事がやりにくいものです。

結婚生活の研究者でワシントン大学のジョン・M・ゴットマン博士は、著書『結婚生活を成功させる7つの原則』(第三文明社)の中で、夫婦関係をダメにする4つの危険要因として、「非難」「侮辱」「自己弁護」「逃避」(害が大きい順)を紹介しています。これらの要因が重なり、継続していくことで90%の夫婦が離婚に至るとのことです。

チームの関係性を改善する「システム・コーチング(R)」

実は、先ほどご紹介した夫婦関係をダメにする4つの危険要因は、あらゆる人間関係に当てはまります。無論、職場の人間関係においても同様です。

また、チームの関係性を改善していくための「システム・コーチング®」というコンサルテーションの手法があるのですが、そこでは、この4つの要因を「4つの毒素」と名付けて、チームメンバーでのワークや話し合いを実施します。

まずその毒素について解説します。

【職場の関係性を壊す毒素1】非難

文字通り、誰かのことを一方的に「あなたが悪い」と言ったり、思ったりすることです。自分のことはすっかり棚に上げています。これが起こることで、他の毒素の発生も誘発されていきます。

このトラブルが起こったのは○○さんのせいだ」、「私がミスを起こすのはあなたの指示が悪いからだ」、「上司の対応が悪いので私達のやる気が出ない」……こんな言葉を発したり、耳にしたりしたことはありませんか?

職場の仲間を非難する女性の写真

【職場の関係性を壊す毒素2】侮辱

誰かへの見下しを含んだ否定的な言葉や感情です。「どうせ○○さんはできないよね」、「○○さんは、モチベーションが低い人だから」といった言葉が代表的。

【職場の関係性を壊す毒素3】防御

誰しも非難をされれば防御したくなります。しかし、言い訳を重ねると人間関係はより悪化し、また新たな「非難」を発生させることがあります。

そのミスが発生したのは、午前中行われた会議室に携帯を置き忘れていて連絡先が分からず、問い合わせているうちに時間に間に合わなかったからで……」、このような感じで、あれこれと言い訳を重ねてしまったことはありませんか?

【職場の関係性を壊す毒素4】逃避

望ましくない状況や、周囲からの指摘に向き合わず、無視して逃げ出すことです。これも、非難や侮辱に対して起こりがちで、その後の非難や侮辱も引き起こします。

自分が聞きたくない指摘を「はいはい、分かりました~」と右から左へと聞き流す行為や、 「あ、すみません、私、来客対応ありますので」とその場から立ち去る行為などは、まさに「逃避」ですね。

皆さんの職場にも、このような「毒素」はありませんか? もしくは、たとえ表面的にはないように見えても、まるで毒素が発酵しているように、皆のもやもやが職場の底に溜まっている状況はないでしょうか?

このような状態では、たとえ良いコミュニケーションを取ろうとしても、なかなかうまくいきません。言いたいことが伝わらなかったり、発言が誤解されたり、良かれと思ってしたことがかえってまずい結果になったり……。そこにいる全員がストレスいっぱいになるでしょう。そんなときは、まず「毒素」の存在を疑ってみてほしいと思います。

また、もしかするとあなた自身も何らかの毒素を発生させているかもしれません。ですから、まずはあなた自身の言動や思考/感情の振り返りからスタートすること。次に、毒素を発生させないために、あるいは発生している毒素に対して、どのようにしたらよいのか考えてみましょう。

最も害の大きな毒素「非難」を発生させないコツ

会話を楽しむ女性たちの写真

まず、ゴットマン博士が「一番害が大きい」と言っている「非難」を発生させないことが一つのポイントです。そのコツをお伝えします。

1.自分の怒りをコントロールしよう

仕事を通していろいろな人と関わっていれば、多少ムカッとくることは誰にでもあります。昨今、アンガーマネジメントという「怒りの扱い方」が注目されています。そこでは、まず「6秒間待つ」ことをすすめています。感情のおもむくままに発言するのではなく、まず6秒こらえて待ってみる。深呼吸も効果的です。すると、当初の感情が抑えられて冷静になることができます。

2.「私」を主語にしてみる

「○○さんが悪い」という気持ちが芽生えたとき、「1.自分の怒りをコントロールしよう」をした上で「自分」を主語にして考えてみましょう。あなたにも非はなかったでしょうか? 

状況を俯瞰した上で「あなた」主語の「あなたが悪い」ではなく「私は~と思う」「私は~してほしいと思っている」と「私」主語で考え、もしくは伝えましょう。

3.職場の仲間との会合では「私」の話をしよう

職場の仲間との会合(飲み会や食事会)は、その場にいない人の噂話や悪口になったりしないでしょうか? その話の内容は「非難」の毒素が蔓延しています。翌日職場に行くことで、皆で揃ってその「毒素」を持ち込んでしまうことになりかねません。

職場の仲間との会合では「他者」ではなく「私」の話をしましょう。前回の記事でも書きましたが、飲み会はお互いの「人となり」を知ることができる貴重な機会。ぜひお互いが「私はこんなことを考えている」「私はこんなことに興味を持っている」といった話をできる建設的な場にしていきましょう。 

職場に毒素を発生させない文化は、皆で創っていくことが大事です。基本的なことですはありますが、「お互いが感謝し合い」「お互いを大切にし合う」職場づくりを意識しましょう。そのことについては次回の記事で触れていきたいと思います。

※参考文献:「結婚生活を成功させる七つの原則」ジョン・M・ゴットマン&ナン・シルバー (第三文明社、2007)                   
※「システム・コーチング®」は、CRR Global Japan合同会社の登録商標です

前田典子

前田典子さん

『Mentor For』 公式メンター。国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。国家資格キャリアコンサルタント。都市銀行、外資系銀行を経て研修会社に転職。2000年に独立し、人材育成コンサルタント/コーチとして、「人が幸せに働くこと」を組織と個人両面から支援。20代から70代まで、経営者、ビジネスパーソンのコーチングも行っている ■Mentor for