結婚できないんじゃない。「結婚したくない」20代女性の本音【連載:働くオンナ学】
この連載では、家族留学事業を行うmanma代表の新居日南恵さんが、各種データを使って20代の働く女性たちのリアルな姿を考察していきます。20代女性の仕事観、結婚観、人生観って?
こんにちは。株式会社manmaの新居日南恵です。
皆さんは、日本の総人口が今後40年でどれくらい減るか、ご存じですか?
現在の日本の総人口は1億2632万人。下記のグラフを見ていただくと分かるとおり、年々下降の一途をたどっていて、これから40年で約8700万人にまで総人口が減るという予測まで出ています(国立社会保障・人口問題研究所)。
また、子どものほとんどが「籍を入れたカップル」から生まれる日本では、結婚しない人の増加が進むにつれて、少子化も進むという構造になっています。
最近では、50歳を過ぎても独身人生を謳歌する男を描いたテレビドラマ『まだ結婚できない男』(関西テレビ放送)の視聴率が比較的好調とのことですが、事実、50歳を過ぎても結婚しない人の割合は、男女ともに増加傾向にあります。
こちらのグラフをご覧ください(『平成29年版 少子化社会対策白書 全体版』)。
1970年時点ではたった1.7%だった50歳男性の未婚率(生涯未婚率)は、2015年時点では23.4%にまで上昇。2035年には男性の生涯未婚率は29%、女性も19.2%にまで上昇すると言われています。
では、20代の未婚割合はここ最近どう変化してきたのでしょうか。
25~29歳の未婚率の推移を見ると、男女ともに上昇傾向。今や、半数以上の人が、20代では結婚していません。
30代も同じく、未婚率は上昇。男性では1985年に28.2%だったのが、2015年には47.1%へ。女性は、1985年には10.4%だったのが、2015年には34.6%まで上がっています。「30代で未婚」は今やマイノリティーとは言えなくなっているのが分かりますね。
堅実に貯金、出費は最小限に……「一人で生きる」将来に備える20代
では、なぜ、若者たちは結婚しないのでしょうか。
国立社会保障・人口問題研究所の第15回出生動向基本調査によると、独身でいる理由として25~34歳では「適当な相手にめぐり会わない」という選択肢が男女ともに1位になっていました。
そこで、地方自治体などが婚活サポートに乗り出すなど、「適当な相手」にめぐり会えるような支援がなされるようになっていったのです。
でも、本当に「適当な相手にめぐり会わないこと」が若者が結婚しない最大の理由なのでしょうか。逆に、適当な相手との出会いさえあれば、進んで結婚をするもの……? そんな疑問から、周囲の20代女性に直接話を聞いてみました。
すると、自らの意思で「結婚したくない」と考える女性たちの姿も浮き彫りに。彼女たちの意見をまとめてみました。
Aさん
両親の関係性があまり良好ではないので、「結婚=幸せ」と思えない
Bさん
家事をする男性が増えたとはいえ、まだ家事を「手伝う」というスタンスの男性が多い。そのため、「女だから」という理由で家庭の中でもやらなきゃいけないことが増えてしまうのが嫌
Cさん
一人でいる方が気楽。結婚しない方が上手く生活できそうだと感じる
Dさん
結婚をすると、自分のやりたいことがあってもお金のかかることとかは、相手の承諾が必要になる可能性もある。だから、好奇心があるうちは結婚はしたくない
Eさん
自分で稼いだお金は自分のために使いたい。自由に生きていたいから一人がいい
いずれも納得感のある意見ばかりです。
でも、「結婚したくない」彼女たちには、経済面での不安や、家族など周囲からのプレッシャーはないのでしょうか?
高山さん(20代前半、仮名)は、「金銭的な不安は正直なところあります。なので、今から貯金したり、福利厚生の良い会社に勤めたい」と言います。
特に、大きな出費となる住宅費用を抑えるために、「社員寮がある会社」や、「住宅手当がもらえる会社」で働くことを重視したいとのこと。
一方で、「日本にいれば飢え死にする事はないし、贅沢しなければ大丈夫でしょう」と楽観的に語ったのが、佐藤さん(20代前半、仮名)。
宝石やブランド物のような贅沢品には興味がないため、「質素な暮らしでも全然平気です」と答えてくれました。
男女間で賃金格差があるとはいえ、それも年々縮小傾向。女性も自立して稼いでいけるようになったからこそ、「一人で生きていくくらいは稼げる」という自信を持っている20代も多いのでしょう。
それがまた、女性たちの結婚への意欲を下げているということも言えます。
また、堅実に貯金をしたり、出費を控えたり、「一人で生きていくこと」を前提とした現実的な解決策を20代前半の彼女たちが既に意識しているということにも驚かされました。
自分の人生は自分で決める。でも、「結婚しないのは、親不孝?」
では、両親や周囲からの「結婚しろ圧力」はないのでしょうか?
「人からどう言われても気にしません。自分の人生をどうするかは、自分で決めるのが一番いいですから」、そう堂々と話してくれたのは、鈴木さん(20代前半、仮名)。
同世代の川野さん(20代前半、仮名)は、「母から『孫がはやく見たい』と言われると、プレッシャーは感じます。あと、結婚しないのは親不孝なのかな?って思うこともある」と、心の内を明かしてくれました。
結婚して子どもを持つことが良しとされるのは分かるけれど、キャリアと同じように、結婚するかどうか、子どもを産むかどうかも、自分の価値観に基づいて決めたい。それが、20代女性の本音です。
もちろん、20代の未婚率が上がっているのは「結婚したくない」人が増えているという理由だけではありません。お金が無くて結婚できない人、相手が見つからない人、結婚したくてもできない人も多くいます。
ただ、こうした要因の他に、20代女性の人生観や理想のライフスタイルが多様化してきているということを見逃してはいけないと思っています。
今の20代にとって、結婚は人生の多様なオプションの中の一つの選択肢。
実際に、国立社会保障・人口問題研究所が行った未婚者への調査では、「いずれ結婚するつもり」と答えた男女の割合は9割前後で、1987年ごろから大きな変化はありません。
でも、「結婚は個人の自由であるから、結婚してもしなくてもどちらでもよい」という考え方について「賛成」と答えた人の割合は、1992年には30.9%だったのが、2009年には48%まで上昇しています。
結婚後、出産後の“豊かな暮らし”がイメージできない?
私自身は普段、若い世代のための子育て家庭への体験訪問プログラム「家族留学」のサービスを運営しています。
そのため、「家族留学」に申し込んでくれる大学生や、20代の働く女性たちの声を聞く機会も多いのですが、結婚にネガティブなイメージを持っている人は少なくないと感じます。
また、彼女たちの中には、「結婚は墓場なのか」「自由を奪われるのか」、子育て家庭の実情を自分の目で見ることで確かめたいと口にします。
話は少し前に戻りますが、そんな若い世代に必要なのは、「適当な人との出会い」を支援することなのでしょうか?
大前提、「結婚するもしないも本人次第」という価値観はこれからますます浸透していくでしょう。
そんな中、国や地方自治体が既婚率を上げ、少子化に歯止めをかけたいと思うなら、パートナーと共に時間やお金を共有しながら生きていく人生の豊かさを真摯に伝えることが大事なのかもしれません。
さらには、事実婚やシェアハウスでの共同生活も含む、パートナーシップの魅力を感じてもらうことの方がよっぽど合理的だとも思います。
私自身はというと、これまでに、子育て中の共働き家庭の方から「子どもが生まれたことで、確かに生活上の制約もできたけれど、子どもたちが与えてくれるものの方がはるかに多い」という話を聞く機会がたくさんありました。
だからこそ、「お金や時間、自分の資産を自分のためだけに使う人生こそが幸せなのだろうか?」という考えを持っています。でも、こうやって家族を持つ幸せについて語ってくれる方が身近にいなければ、こういう考えにも至らなかったはずです。
結婚しない・結婚する、子どもを持つ・持たないという二者択一だけでなく、事実婚というカタチを選んだり、結婚はしないけれど子どもは持つというという生き方があったり、選択肢が無数にある世の中だからこそ、それぞれの道を選んだ人たちの声がもっと20代に届くといいなと思います。
一方で、そうした情報を元に自分にとって最良の道を慎重に選ぶというのも、私たち20代にとっての小さなミッションです。
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