「“華原朋美”に愛を注いでいきたい」過去に向き合うことでたどり着けた心境

華原朋美

華原朋美(かはら・ともみ)

1995年デビュー。以後『I BELIVE』『I’m proud』などヒット曲をリリース。歌手活動の他、CM、ドラマ、バラエティーで活躍するも、2007年に活動を休止。12年12月、5年ぶりに芸能活動を再開。15年にデビュー20周年を迎え、同年5月20日に約9年ぶりのオリジナルシングル『はじまりのうたが聴こえる』を、6月24日には2つのベストアルバムを同時リリース予定

過去の自分に向き合って作った
『はじまりのうたが聴こえる』

「ねぇ、はじまりのうたが聴こえる
 あなたがいなくても 歩けるよ
 やさしい記憶が 今微笑んで
 旅立つことを 教えてくれた」

2015年5月20日、約9年ぶり、芸能活動再開後初のリリースとなる華原朋美さんのオリジナルシングル『はじまりのうたが聴こえる』には、こんなフレーズがある。作詞は華原さん本人。小室哲哉さんが作った曲を聴きながら、さまざまな感情を思い出し、書き留めていく中で生まれた歌詞だ。

「歌詞を作るにあたって、過去の自分にとことん向き合い、今まで体験してきたことを振り返りながら、たくさんの痛みやつらさ、幸せや喜びなどの感情を思い出していきました。そうしたら、どんな過去であっても最終的には『やさしい記憶』だけが残っていくんだな、という心境にたどり着けた。この4行のフレーズは、書くのにとても時間が掛かりましたが、こういう気持ちになれたことが、すごくうれしかったんです」

その一方で、『あなたがいなくても 歩けるよ』というフレーズは、自信がある人は絶対に口にしない言葉だと華原さんは続ける。

「『歩けるよ』とか『負けないよ』というのは、歩けなくなるかもしれない、負けちゃうかもしれないという不安を抱えている人が、あえて口にする言葉であるわけで。でも、それでも負けないぞ! と頑張る人って、とても人間らしい。この『はじまりのうたが聴こえる』という歌は、『強くなろう』と自分自身に言い聞かせている歌でもあるんです」

華原さん独特の透き通るような声と、心を震わせる歌唱力は健在。今回は聴く人が心地よく感じる音程を探るためにさまざまなキーを試し、歌詞が伝わるベストな高さを導き出すのにとても苦労したという。それだけに、「コーラスのキーと自分の声が合わさる部分の出来にとても満足している」と笑顔を見せる華原さん。聴いてくれた人が、「日々の生活のなかでつらいことがあっても、私は私、僕は僕で生きていくんだ」という思いを強くしてくれたらうれしいと話す。

華原朋美という輝く存在と、
その「中の人」である自分の役割

華原朋美

2015年は、歌手・華原朋美のデビュー20周年という節目の年だ。途中、約5年の活動休止を挟んだことにより、仕事に対する思いにも大きな変化が生まれたという。

「言われた通りにやるというのは、絶対にしなければならない基本のこと。でもそれだけで終わるのではなく、そのために何をしなければならないのかということまで考えるようになりました」

例えば、“華原朋美”という歌手をよりいっそう輝かせるために、若いころはあまり得意ではなかったトレーニングに励み、努力を重ねるようになった。

「テレビに映っている華原朋美は、マネージャーさんやヘアメイクさんが作り上げてくれた特別な存在。だから普段の私も、スタッフと同じように努力をし、愛を注がなければと思うんです。そんなことが、以前よりもできるようになったと感じています」

こうした感情は、「すべての働く女性に通ずるのでは?」と華原さんは話す。

「皆さんも、一つの商品やサービスを生み出すための努力をしていくうちに、そのモノやサービスに対して愛が芽生えることがあるんじゃないかな? そしてまた、商品を売り出すための苦労もあるんじゃないかと。私がやっているのもそれと同じです。特に“華原朋美”は、過去にいろんなことがあったから、新人のようにはいかない(笑)。そんな華原朋美にたくさん愛を注ぎ、できる限りの努力をしていくことが、私の役割なんじゃないかなって思います」

(次ページへ続く)

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