松島花さんインタビュー「女優の仕事はマイナスな変化も魅力になる」
笑顔を封印し、厳しい刑事役を熱演
女性ファッション誌のモデルとして活躍し、屈託のない笑顔と抜群の着こなしにファンが多い松島花さん。最近ではテレビドラマで女優としての顔を見ることも多くなってきた。
そんな松島さんの初出演映画が、9月12日に公開される東野圭吾原作の『天空の蜂』だ。最新鋭の巨大ヘリが乗っ取られ、原子力発電所の上空に静止。日本全土の原発を破棄しなければヘリを墜落させると要求する犯人との緊迫感ある攻防戦が繰り広げられる。
『天空の蜂』が撮影されたのは2014年。当時の松島さんにとっては、ほぼ初めての演技だった。普段の彼女とは程遠いイメージのハードコア作品で、トレードマークの笑顔を封印し、愛知県警の厳しい刑事役を熱演した。
「映画デビュー作がこのような大作でしたので、最初は怖気づいてしまいました。でも、もう一生懸命やるしかないと吹っ切ってからは、全力で臨みました。撮影中は、映画が作られていく工程を自分の目で見て、肌で感じることができるということがうれしくて、とにかく楽しかったです。ただ演技に関しては、自分がやるべきことは何か、どう演じればいいのか、必死に考えながら一つ一つのシーンに集中していたので、撮影が終わるたびに、緊張から解放され、全身からドッと力が抜けていきました」
現場でしか作れない演技を知る
女性刑事役を演じるにあたり、松島さんは時間を掛けて役作りに取り組んだ。
「『感情のアップダウンが少なく、冷静にきっちりと仕事をこなしながら上司をサポートする刑事』という役柄を、自分の中で作り上げていました。ただ、撮影の数日前に、堤幸彦監督からサプライズがあって……。台本にあった標準語ではなく、尾張弁で話すことが決まったんです。ピシッとシャキシャキした女性のイメージを膨らませていたのですが、方言に引っ張られ過ぎて、どう表現していいのかが分からなくなってしまったんです」
映画の中の松島さんは、地元を知り尽くした敏腕刑事という雰囲気を醸し出している。普段の彼女とは正反対の厳しい表情が印象的だ。だがこれは、堤監督や方言指導の先生、共演者らと相談しながら、現場で作り上げていった賜物。
また、映画で印象的なのは、とある女性がテレビモニターを見て動揺を走らせる瞬間を、松島さん演じる女性刑事だけが見逃さなかったシーンだ。
「あの場面は、自分で何度も動いてみながら、事前にタイミングを計算していました。けれど最終的には、本番での相手の方の演技に素直に反応しようと意識しました。役作りもそうでしたが、現場に身を置いたからこそできること、分かることがあるんですよね。頭でっかちに考え過ぎなくても、思い切って飛び込んでみることで得られるものがある。そのことに気付いてからは、難しそうなチャレンジであっても、まずはやってみようと思えるようになりました」
次のページ
『できた!』の感覚がない演技の仕事『Another Action Starter』の過去記事一覧はこちら
>> http://woman-type.jp/wt/feature/category/work/anotheraction/をクリック