「自分らしく」が分からない人へ。キャリアのライザップ目指す『ゲキサポ』金井芽衣さんに聞く、“なりたい姿”をクリアにする方法
いま、女性たちの生き方は実にさまざまだ。結婚する・しない、子どもを持つ・持たないも個人の自由。働き方の選択肢も広がり、転職を重ねながら会社員として働く人、独立してフリーランスになる人、起業する人など、あらゆる道が開かれている。
一方で、選択肢が増え過ぎているからこそ、20代の女性たちが「自分らしい道」を選び取るのは難しい。どう働きたいのか、どう生きていきたいのか、それが分からず“キャリア迷子”になってしまう。
実際、オンラインキャリア相談サービス『そうだんドットミー』や転職支援サービス『ゲキサポ!転職』を運営する人材系ベンチャー、ポジウィル代表の金井芽衣さん(29)は、「20代の方から、転職以前のキャリアの悩み相談を受ける件数は顕著に増えている」と話す。
『ゲキサポ!転職』は、専任のキャリアアドバイザーが短期週中で転職支援を行なってくれるサービスで、ユーザーが負担する費用は2カ月間8回の相談で30万円。安くはない価格に思えるが、「利用者のほとんどが20代で、進むべき道が分からず迷っていた状況から、皆さんしっかり脱出していく」と金井さん。
数多くの悩める女性たちを導いてきた彼女に、目指したい未来をクリアにする方法を聞いた。

ポジウィル株式会社
代表取締役社長
金井芽衣さん
1990年群馬県生まれ。埼玉純真短期大学で保育士・幼稚園教諭の免許を取得した後、2010年に法政大学キャリアデザイン学部に編入。2013年、リクルートキャリアに入社し、法人営業を経験。何度もMVPを獲得する。17年に国家資格キャリアコンサルタント登録。同年8月にポジウィル㈱を設立し、同社代表取締役社長に就任
「私はどこへ向かえばいい?」
働き始めて目的地を失う女性たち
2019年8月にスタートした『ゲキサポ!転職』ですが、スタートから3カ月余りで100人以上の方に利用していただきました。中でもアラサー女性に多いのは、「これから先、どう生きていったらいいか分からない」という転職以前の悩みです。
でも、そう仰る方たちって、すごく優秀な方が多いんですよ。良い大学を出て、良い会社で働いている。周囲の人からうらやましがられるようなスペックを持っているのに、「このままじゃいけない気がする。でも、どうしたらいいか分からない」って悩んでいるんです。
進学や就職のように明確なゴールがあれば、「やるべきこと」が見えてくるんですけど、働き始めるとそうもいきませんよね。ゴールは自分が決めない限りないものだから、何をすればいいのか分からなくなって不安になる。頑張りたいのに何を頑張ればいいのか分からない、そんなモヤモヤした状態です。

また、20代後半の女性たちの悩みは、より複雑なものになっていきます。結婚や出産など、ライフステージの変化に関する心配事も絡み合い、自分が一体何に悩んでいるのかすらも分からない状態になってしまう人が多い印象です。
先日、『ゲキサポ!転職』を利用していただいた女性もそうでした。転職するかどうか以前に、夫の転勤があったらどうしよう、子どもが欲しいけどいつ産むべきなのか……とライフプランに関わる悩みが続々と出てきて。当社のアドバイザーと面談を重ねながら、「何から問題を解決するべきか」「本当に望んでいることは何なのか」をクリアにしていきました。
面倒だと感じる人もいるかもしれませんが、進むべき道をクリアにするには、徹底的に自分の本音と向き合うしかありません。そして、後で変わってもいいから、「仮のゴール」を設定する。そうして、目的地を目指してどう進んでいくか考えて、どの心配事から解決していくべきか優先度を整理するんです。
現代は、2週間に1度「キャリアの棚卸し」が必要な時代
そこで私が皆さんにオススメしたいのが、2週間に1回行う「キャリアの棚卸し」です。隔週ペースで自分が関わってきた仕事を振り返り、その時々で感じたことや、できるようになったことなどを職務経歴書にまとめられるように整理してみてください。
「2週に1度は頻度が高い」と感じる方もいるかもしれませんが、何事もスピーディーに変化していく現代社会においては、隔週ペースの振り返りでも自分の状況が大きく変わっていることがあります。
では、「キャリアの棚卸し」はどうやって行えばいいのか。その方法を3つのステップでご紹介します。
【1】会社や仕事に対する思いを、紙に書き出してみる
今の会社に感じていることを、良いこと・悪いことに分けて、思いつくままに書き出してみましょう。すると、「嫌なこともあるけれど、今の会社にはいいことの方がたくさんある」と気付くケースも。
また、これまでに経験した仕事を書き出していき、その時々でどんなことを感じていたかも付け加えてみてください。どんな仕事をしている時は心地良くいられたのか、あるいはストレスがたまったのか。何が得意で何が苦手と感じるのか、可視化できるようになります。
【2】書き出したことを深掘りして整理する
次に、書き出したことについて、「なぜそう思ったのか」「なぜそのような行動をとったのか」といった具合に、一つ一つの項目に「なぜ」をつけて考えてみてください。すると、あらゆる選択の背景にある「基準」が見えてくると思います。
それが、あなたが大事にしている価値観や、仕事をする上で守りたいと感じるポリシーであることが多いです。それが見えたら、将来のありたい姿も描けるようになっていきます。
【3】「ありたい姿」に向かうためのアクションを起こそう
自分が大事にしている価値観や、将来のありたい姿が見えてきたら、それに対していま何をすべきか考えてみてください。仮でも構いませんので、「いつまでに」「何を」「どのようにやるか」を決めてTO DOリストをつくり、できることから実際にアクションを起こしてみてください。
やるべきこと、やったことがちゃんと見えるようになると、迷いなく前に進めるようになっていきます。
日本の女性は自分を過小評価し過ぎている
また、「キャリアの棚卸し」には、人の助けが必要になることもあります。自分のことは自分が一番分からないものなので、利害関係がなく率直な意見をくれる人に、悩みを相談してみるといいと思います。

以前、『ゲキサポ!転職』に訪れたある女性は、某エージェントに転職相談に行ったところ、「前職の勤続年数が短いから、あなたに紹介できそうな求人がない」と言われてしまったそうなんです。そんなこと言われたら、不安になりますよね。
でも、そこで彼女はわたしたちのところに相談に来てくれて、キャリアアドバイザーと一緒に「キャリアの棚卸し」を行いました。すると、自分の強みや価値観がクリアになり、希望の会社に年収150万円アップで入社することができたんです。
彼女が年収アップを実現できたのは、「キャリアの棚卸し」によって、自信を得られたことも大きかったと思います。自分ができることは何か、自分が企業の中で発揮できる価値は何か、そして、これからどう働いていきたいのか。それらを明確に伝え、交渉できたからこそステップアップできたのです。
キャリア相談の事業をやっていて思うのは、自分を過小評価してしまう20代女性がとても多いということ。もっと自分に自信を持ち、得られて当然の報酬や、然るべき待遇を勝ちとっていけるように、まずは自分で自分のことを正しく理解する必要があると思います。
環境変化は激しいし、情報も溢れ過ぎている。人生はまだまだ長いし、ライフデザインの可能性は無限に広がっている。迷って当然の時代です。だからこそ、「もっと人を頼っていいよ」って、同世代の女性たちに今後も伝えていきたいです。
取材・文/石川香苗子 企画・編集・撮影/栗原千明(編集部)