尾野真千子&真木よう子『そして父になる』特別インタビュー【今月のAnother Action Starter Vol.12 Special】
6年もの間、大切に慈しんできた息子が赤の他人の子だったら?
産院で息子を取り違えられた二つの家族を通して、血のつながりや家族の意味を問いかける映画、『そして父になる』。福山雅治さんが演じる大企業のエリートビジネスマンを主人公に、家族の葛藤や選択を丁寧に描いた感動作だ。
今回の『今月のAnother Action Starter』はスペシャル企画として、映画『そして父になる』に出演し、「育ててきた子は実の子ではない」という衝撃的な現実に向き合う2人の母親を演じた、尾野真千子さんと、真木よう子さんにインタビュー。この役柄について何を感じ、女優としてどう取り組んでいったかを語ってもらった。
演じたときにどういう感情がわくか、
想像がつかない役どころだった
――まずは、台本を読んだときの感想をお聞かせください。
尾野:難しいなと思いました。題材が特殊ですし、分からないことだらけで。まず、わたしはまだ“母”ではないので、母親であるとはどういうことなのかが分からない。その上、子どもの取り違えという事件に関しても、どう理解し、どう受け止めればいいのか、まったく分かりませんでした。
ですから、その「分からない」という気持ちを大事にして、台本を理解しようとするのをあえてやめました。芝居をしていく過程で感じたことを、正直に出していきたいと思って臨んだ作品でしたね。
真木:わたしが台本を読んだ最初の印象は、「すごく衝撃的だな」ということ。それから、福山雅治さんが演じるエリートサラリーマンがどんどん父親になっていくというエピソードがとても素晴らしいと感動しました。
でも、母親として育てた子が自分の子ではないと分かり、その事実を受け入れていくシーンを撮るにあたり、自分にどういう感情が生まれるかは、わたしもまったく想像がつきませんでした。真千子と同じように、「現場に立つまではどうなるか分からない」と思いながら入っていきました。
――――では、役作りというのは特に意識されなかったのですか?
尾野:そうですね。現場で感じたことや、子どもたちが見せてくれる芝居とか表情とか、そういうものを大事にしてきました。
真木:是枝監督のやり方なのですが、わたしたちは台本をもらっているけれど、子役たちには台本は渡されないんです。子どもたちがどう動くか本当に分からないから、台本通りになんていかない(笑)。わたしたちは、その場その場で子どもたちの動きに対応していく感じでした。
――そのせいか、映画の中のお二人の母親姿はとても自然に見えました。
尾野:演じている最中はずっと、母親としてこれで本当にあっているのかなと不安でした。映画を見た人たちにはどう見えるんだろうとか……。
真木:そうだね。わたしもそれは気になってます。
尾野:わたしは納得していたとしても、見てくれた人たちも違和感なく「母」だと感じてくれるかどうかは別ですから。芝居を通して感じた気持ちはすごく大事にしましたが、結局ただの自己満足かもしれないので、皆さんの目にもそう映っていたら嬉しいですね。
二人の役を入れ替えたかった?
自身の性格とは真逆の役柄
――――まったく境遇の違う二人の母親を演じる二人ですが、プライベートではとても仲良しと伺いました。撮影現場では、お互いの存在をどう感じていたのでしょう。
真木:わたしの役は、真千子の役とは全然境遇が違うんです。田舎で、子どもがいっぱいいて……。
尾野:もう、てんやわんやしてたよね。
真木:うん、まさにてんやわんや(笑)。でもそれがリアルな母親の雰囲気になったのかも。だから、真千子を見ていて、1対1の描写って本当に大変だなって思っていました。一人息子だし、母親として揺れているシーンがたくさんあったから。わたしが子どもたちとてんやわんやしながら、パッと真千子を見ると、真千子が一人静かにじーっと下を向いて集中していることもありましたね。
尾野:そうそう、真逆ね(笑)。
――お互いに役柄に関して相談したり、話し合ったりは?
尾野:「役どころを交換したほうがいいんじゃない?」みたいな話はしたね。
真木:そうそう。したよね(笑)。
尾野:どっちかというと、わたしはよう子が演じている「ゆかり」のような人間なので。山育ちの自然児だし、キャラクター的にもリリーさんと一緒のほうが似合うんじゃないかって。都会暮らしという設定や、福山さんが夫という関係性は、よう子のほうがぴったりなんじゃないかと思っていました。
真木:確かに、性格と役柄が逆だって言ってましたね。
尾野:母親らしさに関しては、わたしはよう子の動きをじっと見て学びました。よう子を見ていると、やっぱり立ち居振る舞いや子どもとの接し方が「母親」なんですよ。
よう子はこういうときにどうするんだろう、この子に対してはどう接するんだろう、とか。今回ほど、間近でよう子をよく観察したことはありませんでした。
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