仕事と結婚を天秤にかけなくても人生は自然とできてくる【今月のAnother Action Starter vol.11 フリーアナウンサー・青木裕子さん】

another action starter
青木裕子

「わたしの人生はわたしが決める」
自分の将来のために決意した退社という選択

『NEWS23』を担当するようになってから、青木さんは自分の人生とじっくり向き合う時間を持ち始めた。

「20代後半になり、一生アナウンサーとしてやっていくかどうかを真剣に考えたんです。同時に、アナウンサーでなければ何をしたいのかと。その結果、わたしの中では、このままアナウンサーとしてやっていくという選択肢はないんだと気付きました」

30歳前後を転機のときと捉える女性は多い。「仕事に自信を得たから」という人もいれば、「道を変えるのならラストチャンスかもしれない」と考える人もいる。青木さんの場合は後者。アナウンサーというキャリアを一度リセットして、留学をしたのち、大学のときから興味があった教育関連の仕事に就くための資格を取りたいと考えた。

ただし、その選択と恋愛はまったく別次元のものだったと青木さんは話す。

「自分の人生と彼のこととは一緒に考えないようにしていました。『わたしのことはわたしが決める』という気持ちがとても強かったんです。そもそも彼は結婚願望がなさそうなタイプだったので、この人とお付き合いを続けていくのであれば、わたしはたぶん一生結婚しない人生になるという覚悟も(笑)。だったらどう生きていこうとかと考えた結果、一生モノの“手に職”を付けなければと思ったんですよね」

結婚しないかもしれないという可能性を認め、自分の人生を前向きに生きる方策を考え始めた青木さん。「将来に向けて動くなら今しかない」と考え、会社に退職の意思を伝えたのは29歳のときだった。

そんな青木さんのポジティブな一歩が彼の心を動かしたのだろうか、退職が決まったタイミングで矢部さんからの突然のプロポーズ! 彼女の人生が大きく動き始めた。

完璧を目指す思い込みを捨ててみれば
新しい喜びが待っている

青木裕子

「本当に思いがけず結婚が決まったので、嬉しかったけれど、一生独身でも生きていけるように手に職を、と決めたばかりだったので少し迷いました」と振り返る青木さん。

たくさんのことを器用にこなすことが苦手な青木さんは、留学や資格取得の勉強と結婚生活を同時進行すれば、どちらかがおざなりになってしまうと考えた。そして悩んだ結果、留学と資格取得の計画を一度白紙に戻し、まずは夫が帰宅したときに気持ち良く過ごせる場を作ろうと、家庭生活を優先させることに。

ある種「捨てる」決意をした青木さんに、新たな道を示してくれたのは、他でもない、夫の矢部さんだ。

「彼が『これまで積み上げてきたものをゼロにすることはないんじゃない?』と背中を押してくれて。それがきっかけで今の事務所に入り、フリーランスとして新しい道を歩み始めたんです。今は、やることすべてが新鮮ですね」

さまざまな媒体で取材を受けるのも、局アナ時代とは逆の立場。これからはいろいろな仕事を経て自分にできることを確かめながら、ゆっくりじっくりと歩んでいきたいという。

忙し過ぎて常に時間に追われる働き方と、一つ一つの仕事に丁寧に向き合う働き方。両極端の働き方を経験した青木さんは、働く女性に対して「ちょっと自分に甘くなるのも大切」だとアドバイスする。

「この年齢になると、出来て当たり前のことがどんどん増えて、プレッシャーも大きくなります。一方で、友達のブログにはいいことしか書いていなくて、それもまたプレッシャーになってしまって(笑)。焦りますよね。でも、焦って気持ちを尖らせてしまうぐらいなら、一拍置いた方がいいと思うんです。そして、ちょっと自分を甘やかす。仕事も家庭も完璧を目指さず、少し外してみるぐらいがいいんじゃないかな」

たとえば、たまには食事を作らずにデリバリーや外食に頼ってみたり。料理が好きな青木さんも、忙しければ手を抜くことだってある。

「そうすると、主人も『たまにはいいね』って、むしろ喜んでくれるんです。ちゃんとやんなきゃダメだというのは、自分だけの思い込みなのかもしれませんね」

今はとても良いペースで働いていると話す青木さん。今後も縁をいただいた仕事を丁寧にやり遂げ、それが自分の幅を広げることになると嬉しいとほほ笑む。

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