24 DEC/2019

転職の年収交渉で失敗しないコツは? 絶対やってはいけないNG行動【キャリアアドバイザーの本音 えさきまりな】

転職をするときに無視できないのが年収。せっかく転職をするのなら、多少なりとも年収は上げたい。少なくとも、今より下げたくはない……!

でも、年収の交渉ってどうやってやればいい? そもそも希望年収ってどうやって決めればいいの?

そんな「年収交渉」にまつわる疑問を「キャリアアドバイザーの本音」を発信する人気キャリアアドバイザーのえさきまりなさんに聞いてみた。

>>前編もあわせて読む

えさきまりな

キャリアアドバイザー えさきまりなさん
1986年生まれ。短大卒業後、自動車ディーラーでの事務職、エステティックサロンでの接客・店長経験を経て、2016年株式会社キャリアデザインセンターへ入社。キャリアアドバイザーとして実績を残し、2020年に退職。現在はSHE株式会社にてキャリアコーチングを担いながら個人でも人材紹介を行うなどキャリアアドバイザーとして活躍している
Twitter:@MarinaEsaki

※この記事は2021年11月17日に内容(論客プロフィール)を更新しています

前編の「年収交渉するための事前準備」に続く後編では、いよいよ「年収交渉のテクニック」について見ていこう。

年収交渉のタイミングと、「絶対やっちゃダメ」なことは?

−−前回の記事で適正年収の調べ方と希望年収の決め方が分かったところで、「年収交渉のテクニック」を聞きたいです! まず、どのタイミングで交渉するのがいいんですか?

最終面接で好感触な実感が持てたり、内定をもらったりしたタイミングで交渉するのが安心です。

一度出した内定を企業が取り消すのはタブーなので、内定が出てから受諾するかどうかを回答するまでの期間に交渉をするのが一番オススメ

逆に初期の段階で年収の交渉をしてしまうと、「お金のことしか考えていない」と思われてしまう恐れがあるので注意しましょう。付き合い始めの恋人に「年収いくら?」って露骨に聞かないのと同じですね(笑)

−− なるほど(笑)

希望年収は1次面接の時点で聞かれることも多いですが、その際に「今の年収を下回る年収を伝える」「年収が下がっても仕方がないといった発言をする」ことは絶対に避けてください

特に面接や転職活動がうまくいっていない時ほど、内定欲しさに自分を低く見せてしまいがちなので注意しましょう。

また、相手から打診された年収に対して、たとえ希望より下だったとしても、反射的に「大丈夫です」と言ってしまう人も多いです。

基本的には「一旦考えさせてください」と伝えて、冷静になって考えるのが鉄則。どちらもそのまま希望よりも低い年収で入社が決まってしまうケースがよく見られます。

一度承諾したことを後から覆すのは難しいので気を付けてくださいね。

年収交渉の成功率アップのカギは「本命以外も受けること」

−−他に年収交渉をする際のテクニックには、どんなものがありますか?

複数企業の選考を進めることが重要です。本命の1社に絞って選考を進めようとする方が非常に多いんですけど、本命の会社以外も受けましょう。

−−ただ、働きながらの転職活動は時間の余裕がないので、できれば受ける会社は絞りたいような……。

えさきまりな

転職活動にコストをかけたくない気持ちは分かりますが、労力をかけなければ年収アップはなかなかできません。最終的に得るものを大きくするために、本命の会社以外も受けていただきたいですね。

−−年収アップは地道に行うものなんですね。では、複数企業の選考を進めることの何がいいんでしょう?

数社との面接の中で「だいたいどのくらいの年収がもらえそうか」が分かってくるはずなので、それが年収を交渉する材料になります。

例えばA社から450万円を提示された時に、「B社からは500万円提示されているので上げてほしい」という交渉ができるんです。

複数内定を得ていれば、「たくさん内定がある=各社が欲しい優秀な人」という評価になりますし、1社だけで選考を進めるよりも交渉はグッとしやすくなりますよ。

−−「モテる人が素敵に見えてよりモテる」のと同じ理屈ですね……!

はい。もっと高い年収が欲しいという漠然とした気持ちだと強く出られないですけど、根拠があれば「年収を上げてほしい」って言えそうじゃないですか?

実際にそういう局面になると、グッと強気になれる女性が多いです。

それに、内定が出ると自信にもなるんですよ。特に今より高い年収を提示されたら「本当に年収って上げられるんだ!」って実感が持てる。

本命の会社があるならなおさら、他に内定を持って自信を付け、かつ交渉を有利にするのが理想的ですね。

−−でも、それって本命じゃない会社に悪いような……。

気にしなくて大丈夫ですよ。冷やかしではないですし、話を聞いてみて「良い」と思えば本当に入社する可能性もあるわけですから。そこに罪悪感を持つ必要はありません。

普段やっている仕事を「明確な実績」に変える方法

−−思うように内定が出なかった場合は、どうやって交渉したらいいですか?

その年収を希望する根拠を示しましょう。「同級生がこのぐらいもらっているから」「前職がいくらだったから」ではなく、納得感のある根拠を元に交渉するのが基本です。

−−納得感のある根拠って、例えばどういうものでしょう?

一つは「その会社で何ができるか」です。私がお手伝いして研修コンサルタントとして転職した女性の中に、未経験にも関わらず年収400万円から600万円にアップした方がいました。

彼女は営業職だったのですが、同時に自社の研修プログラムを自分で作って、講師を務めていたんです。

企業向けの研修コンサルタントは初めてだけど、「講師として登壇した経験があるから、将来的にはコンサルタントだけではなく研修講師としても活躍できる」ことを根拠に、年収の交渉をしたわけです。

−−これまでの仕事の経験やスキルを元に「何ができるか」を示すということですね。納得感のある根拠、他にはどんなものがありますか?

「仕事の実績」ですね。ただし、「実績=特別な成果」ではありません。

−−というと?

飛び抜けた業績や分かりやすい成果はなくても、しっかり仕事に取り組んでいる方であれば実績は必ずあります。

具体的には、ぜひ「自分の仕事を業務委託に出したらいくらになるか」を計算してみてください。

「自分の業務の価格帯」が分かると思います。そうすれば「今は〇万円もらっているけれど、本来は〇万円の価値がある仕事なので、〇万円くらい欲しいです」って交渉ができますよね。

今は事務作業を外注する企業も増えていますから、実績が見えにくい事務職の方でもこれなら自分の実績を可視化できますよ。

−−金額に換算してしまえば普段やっている仕事も「明確な実績」になるんですね……!

えさきまりな

転職者の方とカウンセリングをする中で、「こんなことしかやってないんです」ってお話いただく内容が「素晴らしいじゃないですか!」ってことがたくさんあるんです。

自分一人でそれに気付くのは難しいですから、壁打ち相手を見つけて自分の強みを発見してもらうのも有効だと思います。

それでも実績が見当たらないという方は、転職以前に普段の仕事のスタンスを見直した方がいいかもしれません。

−−どういうことですか?

「時間を拘束されている対価として給料をもらっている」という考え方で仕事をされている場合、年収アップは難しい傾向にあります。

特にサービス業の方に多いのですが、「残業が多いのにこれしかお金がもらえない」ことに不満を抱くものの、じゃあ勤務時間中に何をやっているかというと、「立っているだけ」なんてこともあって。

そこからキャリアチェンジをしていきなり年収をあげるのはやっぱり難しいです。

まずは「自分の年収がどのような仕事によって成り立っているのか」が説明できるよう、意識して仕事に取り組んでみてください。

この仕事に対してこの給料では物足りない」という考え方ができれば、適切な年収アップができると思います。

−−複数社を受ける、年収をあげたい根拠を持つなど、年収交渉のテクニックが分かってきました。ただ、こういう交渉をして、企業から嫌がられることはないんでしょうか……?

私たちキャリアアドバイザーもガンガン年収交渉はしていますし、企業側は交渉されることにも慣れていますから、臆せず交渉して大丈夫ですよ。

それに、嫌がられたらそれはそれでフィルターになります。その会社に入ったとしても希望する年収はもらえないわけですし、入社後も年収交渉がしづらい会社だということですから。

「年収をきちんと交渉できる」のは、「自分の仕事に責任を持っている」ということ。 皆さんが納得のいく年収で良い転職ができることを祈っています!

>>前編はこちら

取材・文/天野夏海 写真/栗原千明(編集部)