手取り月15万の事務からキャリアアドバイザーへ。年収4倍、「好き」より「得意」を生かす転職で掴んだ天職【えさきまりなさんのベストバランス】

仕事・収入・幸福度の相関関係は?
私のベストバランス

仕事が楽しければ、収入が低くても幸せ? 収入が高ければ、忙しくても幸せ? 幸せに働く「ベストバランス」は、意外と分からないもの。そこで、さまざまなキャリアの転機を経験してきた女性たちにインタビュー。仕事・収入・幸福度の相関関係について調べてみました!

今回登場するのは、女性のためのキャリアスクールを運営するSHE株式会社でコミュニティーマネジャーとして働く傍ら、キャリアアドバイザーとしても活躍しているえさきまりなさん。

えさきまりな キャリアアドバイザー

SHE株式会社 
えさきまりなさん

1986年生まれ。短大卒業後、自動車ディーラーでの事務職、エステティックサロンでの接客・店長経験を経て、2016年株式会社キャリアデザインセンターへ入社。キャリアアドバイザーとして実績を残し、2020年に退職。現在はSHE株式会社にてキャリアコーチングを担いながら個人でも人材紹介を行うなどキャリアアドバイザーとして活躍している。
Twitter:@MarinaEsaki

短大卒業後、自動車ディーラーの事務職、エステティックサロンの店長を経て、人材系企業に転職し、キャリアアドバイザーの道へ。「キャリアドバイザーの本音」を呟くTwitterアカウントが話題を呼び、フォロワー1万人を超える。

2度の転職を経て、キャリアアドバイザーという「天職」に出会ったえさきさん。「天職を見つけてから、収入も幸福度も上がった」と話す彼女に、“ベストバランス”を見つけられた理由を聞いた。

社会人9年目、「天職」と出会い年収最高額へ

就職してから現在までのえさきさんのキャリアの転機・年収の増減・幸福度の変化

就職してから現在までのえさきさんのキャリアの転機・年収の増減・幸福度の変化

――新卒で自動車ディーラーに事務職として入社されていますが、仕事選びにおいて収入面は気にしていましたか?

いいえ、全く。今では考えられませんが、当時はキャリアにも収入にも全然興味がなくて。

何の疑いもなく「近いうちに寿退社するんだ」なんて考えていました。なので、正直入社できればどこでもよかったんです。それで、地元・千葉県で当時有名だった企業に就職を決めました。

ただ、働き始めてみるとお給料が低過ぎて……。手取りが月に15万円くらいだったので、通勤のために中古車を買ったら、ローンと保険で一人暮らしどころか遊ぶお金さえなくなくなってしまいました。

えさきまりな キャリアアドバイザー

新卒時代の写真

しかも、社歴10年以上になる事務の先輩も、私とほぼ給料が変わらないと知って。女性が活躍できて年収アップできる仕事をしようと思い、エステティックサロンに転職をしました。

――転職して、年収アップに成功したんですね。

ええ。年収は100~200万円程度上がりました。ただ、個人の実績を評価していただいている感覚がなくて……。

――というと?

当時、店長業務をこなしながらカウンター営業も行っていたのですが、契約をたくさんとっても収入はほぼ変わらず。

仕事は楽しかったし仲間にも恵まれたけれど、店長の役職手当は月1万円のみで、残業代とか休日出勤とか単なる「長労働時間」への対価でしか給料が増えていなかったんです。

えさきまりな キャリアアドバイザー

店舗のメンバーと

そこで、「どれだけ長く働いたか」ではなく「どれだけ成果を出したか」で自分を評価してくれる会社で働きたいと思い、再度転職を決意。

社会人9年目のタイミングで、人材系企業のキャリアアドバイザーとして働き始めました。

――全くの異業種ですよね。どうしてキャリアアドバイザーになろうと思ったのですか?

人材業界に興味があったわけではなかったけれど、エステサロンで培ったカウンセリング能力を生かせれば、「キャリアアドバイザーとして働けるのでは?」と思ったんです。

その直感は、大正解でした。キャリアアドバイザーは本当に天職だったようで、みるみるうちに成約を決めていきました。

成果に応じてインセンティブも獲得し、スムーズに課長職にまで昇進。気づけば、年収は事務職時代の約4倍にもなっていました。

――年収4倍はすごい!

これは、私自身が何か大きく変わったわけではないんですよ。ただ、転職をして、仕事と環境を変えただけ。それだけでここまで評価と報酬がついてきたんです。

稼げるようになったのは、素直にうれしかったですね。そして、稼げる自分に出会ってから、自分に自信が持てるようになりました。

えさきまりな キャリアアドバイザー

キャリアアドバイザーとして講演も行う

――良い環境で働いていたと思うのですが、また転職をされていますよね。その理由は?

ある程度のことをやり切って、もう少し広い世界を見てみたいと思ったので外に出てみることにしました。

それで、2020年に人材関連のWeb系ベンチャー企業に転職したのですが、正直言ってこれは、「やっちまった」という感じでして……。

――「やっちまった」とは……?

採用面接を受けた際、その会社の中でもかなり高めの報酬を提示していただけたんです。

年収も希望していた額を超えてオファーしていただいたので、「こんなに出していただけるのなら」とうれしくなってしまい、すぐ入社と決めました。

また、職業的に内定を得るテクニックや知識があったので、自分をよく見せ過ぎてしまいまして……。その結果、採用する側の期待値も、私の実力以上のものに膨らんでしまいました。

それで、働き始めてからは能力以上のものを求められ、キャパオーバーに。会社のカルチャーも自分にフィットせず、結局、3カ月という短い期間で退職してしまいました。

転職者の方に「短期離職は避けましょう」「面接は等身大で」って散々アドバイスしてきたにも関わらず……。大反省です……。

――そして、少しお休みしてから現在の会社に転職した、と。

はい。現職のSHEでは、コミュニティーマネジメントの仕事や生徒さんのキャリアコーチングを行いつつ、副業でキャリアアドバイザーの仕事も続けています。

えさきまりな

SHEに転職してからは、リモートワークがメイン。自宅のベランダで仕事をすることも

以前に比べて年収は少し下がりましたが、私の中で必要最低限だと思っている年収は担保できているので問題ありません。副業収入もあるので、欲しい収入はキープできている状態です。

今は「得意なこと」「やりたいこと」「収入」、それぞれちょうどいいバランスで働けているなぁと実感しています。

「得意」で仕事を選んだら、お金も幸せもついてきた

えさきまりな キャリアアドバイザー

――グラフを見てみると、キャリアアドバイザーになってから、収入も幸福度もぐっと上がっていますね。

その通りですね。これはきっと、「得意なこと」を仕事にできたからでしょうね。

私の場合、ただやりたいことができている時よりも、自分がパフォーマンスを発揮できて、さらにその能力を認めてもらえたときに最も幸せを感じるんです。

例えば、エステティックサロンに就職した時、私は美容も好きだしエステにも興味があるから幸せに働けるものだと思っていました。

でも、自分なりに成果は残したつもりだったけれどそれを認めてもらえず、報酬にも反映されずで、幸せとは感じなかった。
要は、「好きを仕事にする」だけじゃダメだったんです。

――「好きなこと」より、「得意なこと」を仕事にしたら幸せになれた、と。

はい。「得意なこと」でしっかり稼いで、そのお金を「好きなこと」に使った方が、自分の幸福度は上がると気付きました。

それに、得意なことを仕事にしたら、自然と自分が評価されるので、収入も上がっていき、仕事がうまくいくし生活も豊かになるから、仕事がどんどん好きになりました。

――逆に、えさきさんの幸福度が最も低かったのは、前職のベンチャー時代ですね。

この時は、キャパ以上の仕事を引き受けてしまって成果が出せず、どうしようもない状態でした。給与はたくさんいただけたけれど、それだけでは幸せは感じられないと知りました。

今思えば、最初は期待値を低くして入り、できることを少しずつ増やして徐々に成果を出し、ポジションや収入を上げていければよかったな、と。

自分を幸せにする天職は、待ってるだけじゃ見つからない

えさきまりな キャリアアドバイザー

――自分の幸福度を高める天職。どうすれば見つかるのでしょう?

まずは「得意なこと」で仕事を選んでみてください。そして、思い切って転職するなどして、働く環境を変えてみることですね。

私の場合も、転職を2度重ねてようやく天職と呼べる仕事に巡り会えました。よほど運がよくなければ、学校を卒業してすぐ天職が見つかる、なんてことはないと思います。

結局、失敗も含めていろいろなことを自分で経験したり、環境を変えたりしながら能動的に動いて、天職を見つけたんです。

――得意なことは、どうやって発見したのでしょうか?

これもやはり経験です。

キャリアアドバイザーになる前、エステティックサロンで働いていた時から、「自分はカウンセリングが得意だ」という意識はありました。

なぜなら、接客をする中で、人には言いにくい悩みを打ち明けてもらいやすかったり、ご本人が気づいていない潜在ニーズまで掘り当てることができたり、そういうことが他のスタッフと比べても上手くできている手応えがあったので。

――周囲の人よりうまくできていることに目を向けたんですね。

はい。なので、カウンセリングをする仕事が天職になるだろうな、という予感はキャリアアドバイザーになる前からありました。

――美容とキャリアだと、分野は違いますよね。カウンセリングはうまくいきましたか?

初めはすごく大変でした。自分はまだ駆け出しなのに、年齢が一回りも上の人や、管理職クラスの方、全く職種の違う方などに、キャリアのアドバイスをするわけですから。

こんな素晴らしい方々に対して、「私に一体何のサポートができるんだろう……」と思ったこともありました。

でも、努力して学んでキャリアや転職・採用に関する専門知識をつけたり、相談者の方と関係性を築いていく中で、どんどん仕事ができるようになりました。

――えさきさんは過去の転職で年収を上げていますが、未経験の仕事に挑戦するときには、年収が下がるケースも多いですよね?

未経験転職の場合は、ほとんどそうでしょうね。でも、初年度年収はあまり気にしなくていいと思いますよ。

入社した年の年収が前職と比較して一時的に下がっても、新しい会社で経験を積んで実績を出し、着実に収入を上げていくことはできます。

また、未経験の仕事ではなくても、大手からスタートアップやベンチャーに転職すれば、ほとんどのケースで年収ダウンします。

ただ、スタートアップやベンチャーで得た仕事の経験が、後の自分の市場価値の向上につながり、次の転職で大きく年収を上げることができたり、起業できるようになったり、キャリアの選択肢も収入も増えるケースは山ほどある。

一時的に年収を下げてでも「経験を買いにいく」というのも、一つの手です。

――そういう風に考えられると、キャリアの選択肢も広がりますね。

そう思います。多少の年収のアップダウンはあったとしても、自分の得意なことを生かして活躍ができ、評価される場所を探しながら、着実に収入を上げていけばいいんです。

得意を仕事にする、実績を出す、評価されて報酬が上がる、さらに仕事が好きになる……この“いい循環”の中に入る経験を、一人でも多くの女性に知ってほしいなと思っています。

取材・文/太田冴