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FEB/2020

【中谷美紀】女優歴26年。一つの道を極められたのは「いつでも辞めていいと思っていたから」

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一流の仕事人には、譲れないこだわりがある!
プロフェッショナルのTheory

この連載では、各界のプロとして活躍する著名人にフォーカス。人の心を掴み、時代を動かす“一流の仕事”は、どんなこだわりによって生まれているのかに迫ります

今年で女優デビューから26年。ドラマ『ケイゾク』や『永遠の仔』(ともに日本テレビ)など話題作への出演が続き、40代となった今も挑戦を続ける中谷美紀さん

中谷美紀
中谷美紀(なかたに・みき)さん
1976年1月12日生まれ、東京都出身。1993年に女優デビュー。最近の主な出演作に、ドラマ『あなたには帰る家がある』(TBS系)、『あの家に暮らす四人の女』(テレビ東京系)、映画『ボヤージュ・オブ・タイム』、舞台『黒蜥蜴』など。Netflixオリジナルシリーズ『FOLLOWERS(フォロワーズ)』は2020年2月27日(木)全世界190カ国で独占配信

近年は『ゴーストライター』(フジテレビ)で才能に限界を感じた作家を、『病室で念仏を唱えないで下さい』(TBS)で救命救急医を演じ、役の幅を広げている。

今回、中谷さんが挑んだのは、蜷川実花監督作品のNetflixオリジナルシリーズ『FOLLOWERS』の主人公、写真家の奈良リミだ。

中谷美紀

彼女のトレードマークは、金髪ショートに高いヒールのルブタン。仕事には、一流メゾンの服をまとって向かう。

リミは人生のほとんどを仕事に懸けてきた女性だ。恋愛のこと、結婚のこと、出産のこと、悩みは尽きないがキャリアはいたって順調。写真家として第一線で活躍し続けている。

中谷美紀

「私はリミのように猛烈に仕事をしてきたわけではありませんが……」と控えめに語る中谷さんも、女優の世界で確かな地位を築いてきた。

26年もの長い時間をかけ、一つの道を極めてこられた理由を聞くと、「いつでも辞めていいと自分に言い聞かせてきたからかもしれません」という意外な言葉が――。

それは一体どういうことなのだろうか。女優・中谷美紀の仕事哲学を聞いた。

「いつでも辞めていい」は自分の心を守る呪文

「仕事を辞めるタイミングを逸してしまったんですよ。今回の『FOLLOWERS』もそうなのですが、心動かされる作品に出会い続けて夢中で演じているうちに、いつの間にか月日が経っていたという感じで」

少し照れくさそうに笑いながら、中谷さんは話し始めた。

20代も30代も、多忙を極めていたのは確かだが、中谷さん自身はそんな時期を「いつでも仕事は辞められる」と考えながら乗り越えてきたと明かす。

中谷美紀

「私は役づくりで自分を追い込んでしまうことが多かったんです。

例えば、ドラマ『永遠の仔』で性的虐待を受けた女性を演じた時には、友人との交流を一切絶ち、共演者との雑談すら控えて、自らに孤独を強いていました。

しかも、そのドラマを評価していただいたことで、次々にヘビーな作品へのオファーが舞い込んできて。精神的につらくなる時もありました」

そういう時に自分を心を守るための防衛策が、「私はいつだってこの仕事を辞められる」、「転職だってできるし、いつでも違う仕事を選んでいいんだ」と自分に言い聞かせることだったという。

私たちはつい、「簡単に何かを投げ出してはダメだ」とか、「つらいことから逃げるべきじゃない」とか、あれこれと“それらしい理由”を見つけては、自分自身を追い込んでしまう。

でも、実際はどうだろうか。

本当はもっとたくさんの可能性があるはずだし、どう生きてもいいはず。その可能性に気付くことができると、心のバランスも保ちやすくなる。

「もしも今からキャリアチェンジするなら、アートキュレーターでしょうか。自分が素敵だなって思った才能あるアーティストを、世界中の人に紹介する仕事がしてみたいです。それってとても魅力的じゃありませんか?」

プロの仕事は“好奇心”から生まれる

今年、43歳になった中谷さん。キャリアを重ねるうちに、段々と仕事に対するスタンスも変わってきた。

中谷美紀

「先程もお話したように、若かりし頃は演じる役のために自らの人生を犠牲にしがちだったんです。

でも、10年ほど前から最近はもっと役と自分を切り離して考えられるようになりました。

もちろん毎回真剣に取り組むことに変わりはありませんが、今は演じることを、与えられた役を表現する『媒介者』であることだと考えていまして。

原作や脚本の行間を読み取り、監督の想いをくみ取って、作品を観てくださるお客さまの気持ちを代弁することが仕事ですので、あまり力まないようにしています」

さらに、プロとして心掛けているのは好奇心旺盛でいることだという。なぜ、いい仕事をする上で大事なのが「好奇心」なのか。

「女優の仕事に限らず、仕事って『誰か』のためにするものですよね。その、『誰か』の気持ちを理解したり、状況を知ったり、自分の想像力の幅を広げてくれるのが好奇心だと思うんです」

テクノロジー、政治経済、環境問題……今、世界各地で起こっていることに可能な限り興味を示し、その周辺にいる人たちに想いを馳せ、自分が何かを演じるときにそっとその情報を引き出しから出す。

「そうした蓄積が自分の中にあると、新しい役を理解する手掛かりになるような気がしますし、新たな情報に触れた際にさらに質問してみたくなったりもします」

また、多忙な毎日の中で中谷さんが日課にしているのは、新聞を読むことだという。

中谷美紀

「朝、時間が許す限りスマホのアプリで新聞を読んでいます。全ての記事に目を通すのは無理ですが、一面に載った大きなニュースや社説などは必ず目を通す項目です」

結婚後、オーストリアに拠点を移した中谷さん。そこでは、友人同士でも環境問題や世界中のニュースを話題に盛り上がることが多いという。

「ラジオでドイツ語のニュースを分からないながらも聞いたりもしています。日々最新のニュースに触れて雑感程度でもアップデートしておかないと、食事の席で相づちすら打てないんです(笑)」

真剣に仕事に向き合ったから、最適なワークライフバランスが見えた

取材中、中谷さんは周囲のスタッフに自ら気さくに声を掛けていた。

久しぶりに会ったスタッフを見つければ「お元気でしたか?」と気遣う。「今日は取材に来ていただいて、本当にありがとうございます」と感謝の言葉を伝える。

とても丁寧に、周囲とのコミュニケーションを取る姿が印象的だった。

中谷美紀
ブラックロングジレ¥180,000/イヤリング¥230,000(TASAKI)

「移り気なので、自分ではない『誰かの人生』を垣間見るのが好きなんですよ。

年齢や性別、国籍、職業など、さまざまな立場の方々の目に映る世界、自分以外の人の物の見方を『知りたい』と思ってしまうんですね。

ですから、いろいろな方に話し掛けては、観察して、質問してっていうのを繰り返しているんです。そういう意味では、女優の仕事は向いているのかもしれませんね」

常に謙虚に、仕事仲間と向き合う中谷さん。そんな彼女の人柄も、長年この世界で引き合いが絶えない理由なのではないだろうか。

「40代は無理をせず、自分のペースで仕事をしつつ、新しいことにも挑戦し続けていきたいです。日本とオーストリアを行き来しながら仕事をする生活は忙しくもあるのですが、精神的にはとても充実しています。

今後も、仕事とお休みの緩急をつけながら、与えていただいた仕事には全力で取り組んでいきたいと思います」

仕事もプライベートも欲張り過ぎず、あくまで自分らしいペースで。

そんな境地に立てたのも、「とことん仕事に向き合った20代、30代があったから」だと中谷さんは振り返る。

自分にとっての“最適”を知る大人の女性は、何だかとても輝いて見えた。

取材・文/石川 香苗子 企画・編集/栗原千明(編集部)

作品情報

Netflixオリジナルシリーズ『FOLLOWERS』
監督:蜷川実花
出演:中谷美紀 池田エライザ 夏木マリ 板谷由夏 コムアイ 中島美嘉 / 浅野忠信 上杉柊平 金子ノブアキ 眞島秀和 / 笠松将 ゆうたろう
配信:2020年2月27日(木)、Netflixにて全9話全世界190ヵ国へ独占配信
http://netflix.com/followers

『プロフェッショナルのTheory』の過去記事一覧はこちら

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