スカートブランド『SHE Tokyo』ディレクター浅葉果林さん「挑戦のきっかけは、自分が歩んできた道に必ずある」
幸せな働き方は自分で選べる! 新時代に輝く女性たちへのインタビュー

「SHE Tokyo」ディレクター
浅葉果林さん
1982年生まれ。大分県出身。百貨店の婦 人営業部を経て、大手SPA(製造小売 業)会社に転職。2017年、大人の女性の ためのスカートブランド「SHE Tokyo」を スタート。オンラインショップ、百貨店の期間限定ショップにて取り扱い中。その他、企業のディレクションも手がける
――あなたのお仕事は?
「出過ぎず、存在感のある佇まい」というコンセプトをもとに、大人の女性がときめくスカート作りをしています。
デザイン、素材作り、展示会や受注会の開催、販路の交渉など多岐にわたります。

1枚1枚にこだわりを凝縮したスカートは、コレクションするファンも多い
――前職の経験で今の仕事に生かされていることは?
新卒で入社した百貨店では、お客様との関係を築けるよう、自ら環境づくりを整えたんです。独自の商品セレクトを発信する売り場に配属されたものの、新人は在庫整理に明け暮れる日々。
個人の売り上げノルマもあるのに「これではダメだ!」と奮起した私は、在庫管理の効率化と顧客管理を徹底的に見直しました。
在庫がすべて頭に入っているのでスムーズに接客でき、おのずと結果もついてきた。目標のためにとにかく率先して動く、その大切さに気づけました。
その後、数十年ぶりの大幅なリモデルが決定し、ワンフロアのリモデルをゼロから立案するプロジェクトチームに抜擢。独自性のある楽しいフロアにするために、心血を注ぎました。百貨店ならではの「売り手の意志で商品を買い付けて発信する」ノウハウを体系的に学びました。
その後に転職をした大手SPA会社では、商品企画から素材開発など〝ゼロから作る〞業務経験が、前職とは全く異なる点。会社の雇用形態も多様で、100%中途採用で全員プロフェッショナル。「こういう働き方もあるんだ」という発見になりました。
マーケティングを徹底し、「消費者の需要を突き詰め、万人に受けるものを作る」という考え方。両社で売り手・作り手のどちらの視点も養われました。
そして、「物を売る」という感覚よりも「お客様の役に立つ」ことを一貫して大切にしてきたことが、今の私の礎になっています。
――ブランドを始めたきっかけは?

ツイードの織り、サテンのグロス感、シアーなサークル刺しゅう、洗練のカラーリング……心躍るスカートは、オリジナルの素材作りからこだわっている
百貨店時代、シャツやパンツに比べてスカートに注力しているブランドがなく、安定的なバイイングに苦労した経験があったんです。
それから数年後、知人に「今、好きなことができるとしたら何をしたい?」と何気なく聞かれたとき、「大人の女性のためのスカートブランドを作りたい」と自然に答えている自分がいて。
質問をした知人は、今一緒にブランドを運営している、株式会社「パンソン」の仲間。パズルのピースがバチッと合った気がしました。
会社員時代はブランドを立ち上げるとは思ってなかったけど、必死で進んでいれば道はつながる、そう感じています。
――やって良かったことは?
引き返せない状況を自ら作ったこと。ブランド準備中には、とにかく周りの人に「始める!」と断言し、無我夢中でやりました。
応援してくれる人が増えていき、人の温かさを強く感じられたのは、フリーランスになったからこそ。

ブランドをスタートしてからは、得意な事を得意な人が分担し、能力を持ち寄るようにしています。
例えば、コレクションのイメージ撮影は、信頼しているプレスの方とスタイリストさんにディレクションからお願いすることで「そんなスカートの見せ方があるんだ!」と新たな角度からブランドの魅力を見つけてもらえたり。
可能性がぐんと広がっていくのを感じます。
――うれしかったことは?
お客様の顔が、パッと華やぐ瞬間に出会えること、それに尽きます。
自分にフィットする服をまとったとき、女性はキラキラ輝くんです。「私たちの服が誰かの役に立つんだ」と感じられることが、何よりの幸せ。
その喜びは、社会人1年生のときから変わらない、私のモチベーションですね。
そして、「一人のお客様に直接届ける」意識を常に持つようにしています。

SNSでは伝えきれない要素を詰め込んだ「SHE Magazine」
――苦労したことは?
技術力のある工場を見つけるまでは、それはもう大変でした。時には、レンタカーを借りて、メンバーと1日100㎞走らせて工場巡りをしたことも!
無名ブランドの私たちは門前払いも多く、作りたいものを具現化する大変さを痛感しました。
次第にこちらの熱量が伝わって、当初は半信半疑だった工場と関係を築けている今、感慨深いものがあります。
――人生で影響を受けた人は?
幼少の頃から〝ときめき〞を与えてくれた祖母。きれいな包み紙のお菓子、毎冬贈ってくれたコート、女性を輝かせるジュエリー……成長の過程で、女性に生まれた喜びを教えてくれた存在です。
――リフレッシュ方法は?
好きな服を着て、好きなものを食べ、自分なりの栄養を与えること。
平日の服装は、相手への敬意と思っているので、その日に会う方の年齢や職業によってコーディネートを考えているんです。
なので、休日は自分が好きなファッションをとことん楽しむ日。ヒールを履いてお出かけすると、気分がぐんと上がります。
――あなたにとって理想の仕事(働き方)とは?

仕事は、人生を共にするパートナーのような存在。支えられ、成長し、感動し、時には苦労をすることもある。
人生の紆余曲折を楽しむ感覚で、型にはめずに、諦めずに、年齢と共に変化しながら、最良の付き合い方をしていきたいですね。
「SHE Tokyo」としては、メンバー個々の能力がさらに発揮されるような、プロフェッショナル集団として成長していきたい。
地方や海外からも参加しやすいよう、究極のアウトソーシングを目指したいです。
――これから何かを始めたい人へのアドバイスは?
「挑戦した」という自負は、自分自身の糧になります。
やり始める前は、失敗することが不安だと思いますが、他人の成功体験って、自分にすべてが当てはまるわけではないですよね。私も失敗と反省の連続でした。
でも、自分で失敗することは、次にどうするかを考える筋力になる。とにかく一生懸命、夢中になれたら大丈夫!
その熱量こそが、自分自身や周りの環境を変える、原動力になると思います。
※この記事は『これが私の生きる道! 彼女がたどり着いた、愛すべき仕事たち』(世界文化社)より、転載しております
『これが私の生きる道! 彼女がたどり着いた、愛すべき仕事たち』(世界文化社)

本書は、自分らしい幸せな仕事や、固定観念にとらわれない柔軟な働き方を見つけた女性たちにスポットを当てたインタビュー集です。
「自分も何かやってみたい! 」と考える方に向けて、新しいロールモデルをご紹介する一冊となっています。この本を手に取った方が、少しでも何か前に一歩踏み出せますように……。
『これが私の生きる道!』の過去記事一覧はこちら
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