『佰食屋』オーナー中村朱美さんが“ランチタイムのみ・100食限定”を貫く理由――「売上至上主義をやめたら、会社も社員も幸せになれた」
幸せな働き方は自分で選べる! 新時代に輝く女性たちへのインタビュー
――あなたのお仕事は?
1日にランチタイムのみ、100食しか売らない国産牛ステーキ丼専門店「佰食屋」、すき焼き専門店「佰食屋すき焼き専科」、肉寿司専門店「佰食屋肉寿司専科」のオーナーとして3店舗を経営しています。
――この仕事を始めたきっかけは?
特製ソースをかけたご飯の上に上質な国産牛のステーキを盛りつけたうちの看板メニューは、元は夫の自慢のレシピでした。自宅で初めて食べたときの衝撃といったら!
気づいたら半分以上食べていて、食べ進めるにつれ、「ああ、もう食べ終わっちゃう」と寂しさを覚えたほど。
夫の老後の夢は自分のレストランを開くことでした。こんなにおいしいステーキ丼、もっといろんな人に味わってほしい!
そう思った私は、28歳のときに夫を「その夢実行するなら今なんじゃない?」と半ばたきつけるように説得。私と夫の2人でわずか10坪、14席の「佰食屋」をオープンさせたんです。
ちなみに私たち夫婦、食べ歩きは好きでしたが、飲食業界で働いた経験はほぼゼロ。ズブの素人の挑戦でした。
――不安はなかった?
スタートする際、我が家にはまだ子供もおらず、夫婦2人だけ。
貯金500万円を軍資金にとりあえず1年やってみよう! もしダメだったらまた会社員として働けばいいと思っていたので、不安はありませんでした。
でも、いざ開業してみて大変さを実感。佰食屋なのに最初は20食すら売れなかったんです。
来る日も来る日もお客様は10人、15人、夜まで営業をしても20人と到底100食には届かず。日に日に不安は募り、毎晩寝る前に泣いていましたね。
不安を吐露するたびに励ましてくれたのは夫。「みんな店を知らないだけ。知ってもらえたら絶対お客様は来るよ」と。夫の支えがなければ、くじけていたかもしれません。
この夫の言葉どおり、ある人のブログ記事がきっかけで一気にお客様が増え、オープンから3カ月後、初めて100食を完売することができました。
オープンしてから1年ほどたった頃、やっと大丈夫かな、これならいけると思えるようになりました。
――ランチのみ、100食しか売らない理由は?
飲食店は勤務時間が長く、土日は休めず、最低限のスタッフで店を回してる。だからお客様が増えれば増えるほど従業員は大変。
なのに給料が増えるわけではないんですよね。どんなに頑張っても対価を得にくい。
こんな三重苦を自分の会社の従業員には強いたくない。そう思って行き着いたのが業績至上主義の撤廃です。
売り上げをギリギリまで減らす、そうしてたどり着いたのが100食という答えです。
1日の販売数を決めて「早く売り切ることができたら早く帰れる」という仕組みにすれば、皆無理なく働けるのではな
いか、と思ったのです。
目標はいたってシンプル。本当においしいものを100食心を込めて販売し、早く帰ろうということです。
仕込みや掃除を含めても例えば朝9時から始まり遅くても17時台には退勤できるので、家族の時間、プライベートな時間を持てる働き方ができるのです。
私自身も2人の子供を出産したことで家族の時間が最優先になりました。仕事に1日の大半を費やし辟易するのではなく、個々の時間を持てることこそ豊かなのではないかと思っています。
なので、事業拡大や成長に興味はありません。求めるのは穏やかな成功。販売数を100に限定したように、収入も上限を決めました。
そうすることで自ずと事業規模も定まってくるんです。
――あなたが思う理想の仕事(働き方)とは?
無理せず働くことができる「持続可能」な働き方を自分で選び、つかみ取ることです。
時代は日々変化しています。いつ何時何が起きるか誰にも予測はできませんが、どんな状況になっても稼げる仕組みを持っておくことは大切だと思います。
そのとき大切なのが自己決定権を持つことです。就業時間も働き方も、稼ぎたい金額もやることも、仕事の後の時間をどう使うかも、すべて自分で決められる。
それこそが納得できる幸せな人生なのではないでしょうか?
※この記事は『これが私の生きる道! 彼女がたどり着いた、愛すべき仕事たち』(世界文化社)より、転載しております
『これが私の生きる道! 彼女がたどり着いた、愛すべき仕事たち』(世界文化社)
本書は、自分らしい幸せな仕事や、固定観念にとらわれない柔軟な働き方を見つけた女性たちにスポットを当てたインタビュー集です。
「自分も何かやってみたい! 」と考える方に向けて、新しいロールモデルをご紹介する一冊となっています。この本を手に取った方が、少しでも何か前に一歩踏み出せますように……。
『これが私の生きる道!』の過去記事一覧はこちら
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