テイラー・スウィフトの素顔を追うドキュメンタリー映画『ミス・アメリカーナ』が教えてくれること「私たちは“いい子”じゃなくていい」

海外ドラマコラムニストの伊藤ハルカが、旬な海外ドラマ作品の中から、注目のパワーウーマンをご紹介! 強くて、知的で、お茶目で、美しい……個性的なキャラクターが続々と登場する海外ドラマから、女性の“働き方&生き方”を学んじゃおう!
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今回は海外ドラマの枠を飛び越え、ソングライターやパフォーマーとして活躍するテイラー・スウィフトの素顔を追うドキュメンタリー映画『ミス・アメリカーナ』をご紹介します。

テイラー・スウィフトといえば、グラミー賞を10回、アメリカン・ミュージック・アワードで29回もの受賞歴を持つ歌姫。20代にして、世界的大スターの地位を築きました。
しかし、華々しく見えるキャリアの裏では、ルッキズム(※)にセクハラ、SNSでの猛烈なバッシングなどに苦しめられた過去も。
(※)外見的に魅力がないことは悪いことと結び付ける考え方のこと
幾度となく壁にぶつかり、打ちのめされそうになりますが、テイラーは決して諦めず立ち上がり続けます。そんな彼女の強さに、私たちも“戦う勇気”をもらえるのです。
今月のオススメ作品:『ミス・アメリカーナ』(Netflix)
『ミス・アメリカーナ』は、2019年12月に30歳を迎えた歌姫テイラー・スウィフトの素顔を追ったドキュメンタリー映画。
デビュー前のあどけない姿や、16歳でデビューしたばかりの姿、20代になりスターの道を駆け抜けてきたテイラーの姿が、赤裸々に映し出されています。
ヒットソングができるまでの舞台裏や、2020年1月31日に発売されたばかりの新曲『Only The Young』の誕生秘話が明かされたり、歌手テイラー・スウィフトの才能をたどるのにぴったりな一作です。
一方で、「若くして成功を手にした女性」になった彼女が、過去に不当な扱いを受けてきた真実も描かれています。
公の場でカニエ・ウエストに批判されたり、「#TaylorSwiftIsOverParty」とハッシュタグをつけたテイラーバッシングの投稿がSNSで広まったり、ラジオDJからセクハラを受けたり……。
彼女はこれまでに数々のトラブルに巻き込まれてきました。
ゴシップ誌などから入ってくる情報だけを目にしていると、「バッシングを受けても自業自得」と言って片付けたくなるかもしれません。
しかし、その渦中にいるテイラー自身はどう感じていたのか。本作ではテイラーの口からこれまでに明かされなかった本音が語られています。
無論、多くの人から一方的にバッシングを浴びてテイラーが平気だったわけではありませんでした。立ち上がれないほど落ち込み、心を痛め苦しんだ彼女の様子が、本作では映し出されています。
しかし、今なおステージに立ち輝き続けるテイラーを見れば、彼女が幾多の困難を乗り越えてきたことがお分かりいただけるはず。
このドキュメンタリーは、お騒がせセレブの日常を追う陳腐な一作では決してありません。それに、若きアーティストの成長ストーリーでもありません。
誰に批判されようとも、自分を信じて「正しいこと」をすると決めた一人の女性によるタフネスストーリーなのです。
今月のパワーウーマン:テイラー・スウィフト
幼い頃にカントリーミュージックに心奪われ、16歳の時にカントリーミュージシャンとしてデビューしたテイラー。
「成功の秘訣は運と縁」なんていう人もいますが、彼女の成功は必然。類まれなる音楽の才能と、並々ならない努力、チャンスを掴むために起こした行動の数、そして家族の支えがあって成し得たものなのです。
この作品を見ていただくと、テイラーが成功すべくしてした人だということがよく分かります。
また、20代でスターダムにのし上がったテイラーは、摂食障害を患っていたことを『ミス・アメリカーナ』の中で初めて明かしています。
その理由の一つは、SNSでの誹謗中傷。外見を悪く言うようなコメントが目につくようになり、次第に食べることができなくなっていったと言います。
さらに、敬けんなクリスチャンの家庭で育ったテイラーは、幼い頃から“いい子でいること”を必死に守ってきました。
スターになってからも、政治的な発言は控え、自分の意見は隠し、ファンやマスコミから嫌われないよう自らを必死に取り繕ってきたのです。
しかし、彼女自身がいい子に振る舞っていても巻き起こるトラブルの数々……。
20代前半の彼女は自然な笑顔をつくることすらできなくなっていきます。
人の期待に応え、いい子でいようとしてきたことが、彼女の心を満たすどころか、どんどん蝕んでいったのです。
しかし、トラブルの数だけ気付きを得たテイラーは、少しずつ自分なりの「幸せ」を掴み取っていきます。
30歳を迎えたばかりの彼女は次のように語っています。
「美の基準は一つではないし、今では人から『太った』と言われても気にならない。私は今の方が幸せ」と。
そして、「たとえ歌手生命に影響を与えたとしても、自分の意見ははっきり伝えたい」「政治の場で若者にもっと声を上げてほしい」とも言及しています。
「人からよく思われたい」という気持ちは、誰でも少しはありますよね。だからこそ、人から気に入られる自分、人に求められる自分をつくってしまいがちです。
しかし、「いい子でなくてもいい。自分が幸せだと思う行動をして」と、テイラーは訴え掛けます。
正しくあること、自分で自分を幸せにしてあげること、そして、それらを守るために戦うこと。時に壁にぶつかることもあるかもしれませんが、自分が信じた道を進めば大丈夫。
力強く生きる彼女を見ていると、そんな気持ちになってきます。
作品情報
『ミス・アメリカーナ』
Netflixオリジナル映画。独占配信中
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