副業でやってきた仕事を本業にしたくなったら? 副業先の企業に転職するときの注意点
長く仕事は続けていきたい。でも、どんな仕事が自分に合っているのか、そもそもどんな人生を送りたいのか、自分のありたい姿が明確にならない女性も多いはず――。そこでこの連載では、さまざまな人生経験を積んできた『Mentor For』のメンターたちが、“豊かなキャリア”を描いていくためのヒントを後輩女性に向けて送ります
「副業(複業)」をテーマに読者の皆さんからの質問に答えさせていただいている、Mentor For公式メンター兼広報の井上千絵です。
私はPR会社の会社員として、そして、個人活動としての複業(Mentor Forを運営するMANABICIAでの広報など)を、2年間続けています。その中で数々の反省や葛藤もありましたが、複業の魅力に取り憑かれて今日まで走ってきました。
読者の皆さんからの質問にも、私自身の経験を出来るだけ包み隠さずお答えしたいと思っていますので、お付き合いください。
先輩に聞きたい!
今回の相談内容
業務委託として副業していた会社に、転職したいと思っています。副業先への転職で気をつけた方がいいことってありますか? 本業の会社への印象が悪くならないか、心配しています。
初めて質問を読んだ時、きっとCさんは充実した副業活動をしてきたのだろう、とワクワクしながら回答を考え始めました。
これまでに書いた記事でも触れましたが、私にとって副業の最大の醍醐味は、自分の「好き」にとことん向き合い、戦略的にキャリアを考えられるようになること。
Cさんは副業をしていた会社への転職を希望されているのですから、まさに副業を通して、心から「好き」で夢中になるものと出会えたのではないでしょうか。そこで、Cさんが心配するような「副業先への転職で印象が悪くなる」とはどういうことなのか、自分ごとに置き換えて考えてみました。
そこで出てきた答えは、今の職場の上司や同僚に「●●さんの副業は、転職活動の一環だったんだ」「うちの会社にいるのが嫌だったんだ」と思われるような状況はなるべくつくりたくない、ということです。
では、意図せずそう思われないようにするためには、何をすればいいのでしょうか。その方法を2つ考えてみました。
方法1:「アルムナイ」として退職後も関わる意思を示す

Cさんが本業とすぐにでも縁を切りたいということでしたら別ですが(笑)、転職時の印象を気にするということは、きっと今の会社にお世話になったと少なからず感じているのだと想像します。また、転職後も今いる会社の人たちとは良好な関係を築いていきたいとも思っていらっしゃる印象です。
そこで提案したいのが、「アルムナイ」になる意思があることを退職交渉時に伝えてみること。
最近、「アルムナイ」という言葉をよく耳にするようになりましたよね。英語では学校の卒業生・同窓生を意味しますが、そこから派生して、企業の元社員を戦力に変える人事制度が今注目されています。実際、退職者が出戻ってきたり、業務委託として関わるなど、アルムナイ人材をポジティブに活用する事例が広がり始めています。
人生100年時代ですから、長い目でキャリアを考えると、今の会社と再びどのような形であれ関わる可能性がゼロではないと思います。
実は私も、退職したテレビ局から2年前に声が掛かり、今は再び業務委託として働いています。外から関わるからこそ、中にいた時には見えなかった視点で貢献できていると感じています。
今の会社で育ててもらったお礼とともに、ゆくゆくはアルムナイとして仕事にかかわり続けることもできると意思表示してみてはいかがでしょうか。それであれば「今の仕事や会社が嫌だからやめる」というニュアンスにはなりにくいはずです。
方法2:引継ぎは余念なく。後任フォローも積極的に

もう一つ、転職を前にして大切なことがあります。当然のことのようにも思われがちですが、引き継ぎの期間を十分に確保した上で後任者のフォローをしっかりすることです。
冒頭で述べたような「副業は転職活動の一環でやっていたんだ」というマイナスの印象を払拭するためにも、本業への誠意を示す最後の舞台が後任者への「引き継ぎ」です。
誰が担当してもCさんのこれまでの業務を継続できる状態を整えておくこと。関係各所に後任者を紹介すること。今、目の前にある本業のバトンをしっかり後任に渡すことで、Cさんの転職をポジティブに受け止めてくれる社内の空気感が自然とつくられていくでしょう。
最後に、副業で本当にやりたいことと出会い、キャリアチェンジするということは、素晴らしいことです。転職に引目を感じてしまいがちなのも分かりますが、会社や周囲の同僚には「本気の思い」をしっかり伝え、ポジティブな転職をしてほしいと思います。
Cさんの新たな挑戦を応援しています!

【この記事を書いた人】
井上千絵
慶應大学大学院卒。民報テレビ局の報道記者8年、直近の2年は宣伝広報を担当。結婚・出産を経てテレビ局を退職し、PR会社で週3日会社員、個人事業で週2日の複業スタイルに。個人事業は2020年ハッシン会議として法人化。個人ではMentor For(運営会社MANABICIA)のメンター・広報責任者をはじめ、スタートアップ・地方企業を中心に情報発信・PR領域の戦略立案やメディア立ち上げの事業を複数担当。一児の母
関連する記事を読む
『後輩たちへ』の過去記事一覧はこちら
>> http://woman-type.jp/wt/feature/category/work/junior/をクリック