オフィスワーク、電車通勤、会社の人間関係「どれも無理」――“組織不適合”で生きづらさを感じていたOLが内向型を武器に働けるようになった理由

内向型

コロナ禍、リモートワークを初めて経験した人が増えた。もしかすると、「オンラインベースの働き方の方が、自分に合っているかも」と感じた人も多かったかもしれない。

また、その中には以前から、組織で働くことに“つらさ”を感じていた人もいたはず。

例えば、

・人と会うと疲れてしまう
・オフィスにいると集中できない
・上司や同僚と人間関係を築くのが苦手
・朝電車に乗るだけで疲れてしまう
・職場にいると、ネガティブになってしまう

など、こうした悩みを抱えている人は少なくないのではないだろうか――。

現在、内向型コンサルタント・心理カウンセラーとして活動している堤ゆかりさんも、かつては組織の中で働きづらさ、居心地の悪さを感じていた一人だった。

堤ゆかりさん 内向型コンサルタント

Orion合同会社 代表   内向型コンサルタント/心理カウンセラー 堤ゆかり 「内向型を直さず活かす人を増やす」を目指し、個人セッション・副業/起業支援・講演などを行う。 インスタフォロワー1.3万人。「日本人女性初」の内向型に関する書籍『もう内向型は組織で働かなくてもいい』を出版(世界文化社)
◆Twitter:@tsutsumi_yukari
◆Instagram:tsutsumi_yukari
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堤さんは、会社組織に馴染めない、うまくやっていけないと悩む人たちに向けて、自身のSNSなどを通じて「内向的な気質」を直さず生かす働き方や生き方を発信している。

年間の相談実績は300件を超え、講演会やセミナーにも引き合いが絶えないという。

堤さんは、「日本の女性の中には、無理やり外向的になろうとするあまり、自分を苦しめてしまっている人が多い」と話す。

では、堤さん自身はなぜ、内向的な気質を生かす働き方にたどり着くことができたのだろうか。

「内向型」は社会でうまくやれないという勘違い

自分が「内向型」だと知ったのは、2016年の終わり頃のこと。

OLを辞めて独立してから2年が経っていたのですが、SNSに載せる笑顔とは裏腹に、トーク力が乏しいことや、要領が悪く何かと作業に時間がかかってしまう自分に劣等感を抱いていました。

そんな時、たまたま見つけたブログに「内向型」について書かれていて、すごく驚いたんです。なるほど、これは気質の問題であって、病気とか自分がダメということではないのか、と。

とはいえ、明るく社交的でチームワークが得意な「外向型」の方が世の中では高く評価されるしな……とは思っていて。自分の内向的な部分は「直さなければいけない」と考えていました。

内向型 堤ゆかり

しかし、2018年夏にたまたま参加したとあるトークライブが私の転機になったんです。

そこで聞いた話をきっかけに、過去に自分が人から感謝された経験や、仕事で成果を出せた時のことを振り返ってみました。すると、それらが自分が「内向型」だったから出来たことだと気付いたんです。

私は大勢の人がいる会議で発言したりするのは苦手だったけれど、一対一であればじっくり人と話すことができた。

それに、オフィスだと作業効率がすごく悪くて「自分はダメだ」とネガティブに考えがちだったけれど、一人でいられるときなら集中して仕事ができる。

会社にいるから不得意が目立っていただけで、環境を変えたらたくさん得意なことがあったんだ――。それから、「内向型の気質をうまく生かそう」とマインドチェンジができたのです。

「内向型」の悩みをSNSで発信したら、共感の声が続々

内向型についてもっと知りたいと思った私は、勉強したことをメモする感覚でTwitterを始めました。すると、「自分だけじゃなかった」「安心した」といった共感のコメントをいただけるように。

そこから、「何か自分にできることはないか」という気持ちが強くなっていきました。

2018年の秋頃には、本格的にInstagramの発信も開始。内向型とはどんな人か、内向型を生かすためにはどんな考え方が大切か、私自身が内向型の自分に苦しんできた経験などを発信して、フォロワーの皆さんから悩み相談を受けるようになりました。

内向型 堤ゆかり

心理カウンセラーの資格を取得したのは2019年の秋頃。

内向型コンサルタントとしてのスキルを磨きたいと思い受講を決め、本格的に“過去の自分”と同じような悩みを持つ方からの相談にお答えするようになっていきました。

会社組織に適応することに縛られるのではなく、まずは内向型特有の「強み」を認識し、フリーランス、副業掛け持ちなど、自分に合う働き方を選択できるように提案しています。

以前は、同僚とうまく人間関係が築けなかったり、友人が少ない自分にコンプレックスを感じたりしていましたが、「内向型」を強みに変えられた今では、誰かと自分を比べて落ち込むことはほとんど無くなりました。

それに、本当に大切にしたい人とだけ、じっくり付き合うことができるようにもなりました。

家族と過ごす時間、一人で穏やかに過ごす時間、“自分の人生において大事にしたいこと”が、段々とクリアになっていったのです。

また、仕事においても「量より質を大事にしたい」という軸が明確になりました。

以前は、セミナー参加者の人数や顧客数こそが「成功のバロメーター」だと思い込んでいた時もありましたが、今はご相談者の方と行うカウンセリングや講座も、マンツーマン・少人数を重視。

内向型 堤ゆかり

一人一人とじっくり向き合って、満足度を高めるような仕事をする方が私には合っていると分かっているから、無理に“誰かみたいにやらなきゃ”とは思いません

私の失敗経験、成功体験、そういうものを等身大で発信しながら、同じ悩みを持っている人に寄り添いたいんです。

自粛期間中に浮き彫りになった願望は、どれもあなたの本心

最近は、20代、30代の働く女性からのご相談がますます増えています。コロナ禍、これからの働き方や生き方を見直した人が多かったのかもしれませんね。

相談者の皆さんに私が必ずアドバイスするのは、「内向型は武器」だということ。これは、先ほどまでお話してきたとおりです。

内向型 堤ゆかり

その上で、自分が今後どんな風に働いていきたいのか、生きていきたいのかという理想と照らしあわせて次のアクションを決めていきます。

例えば、今の会社の働き方の何が嫌だと感じているのか。どんな働き方は避けたいのか。それがどう変わったらうれしいと感じるのか……。

自分の感情にじっくり向き合う一人の時間をつくり、現状と理想を言語化してみることから始めるのがおすすめです。

コロナ禍、自粛生活中に感じた不安や違和感など浮き彫りになった願望は、どれもあなたの本心です。

ただ、こうした感情は忙しい日常の中でだんだんと薄れていってしまうもの。忘れないように書き留めておきましょう。

こうして自分の本音に向き合って、自分の理想を分解していくと、何に取り組むべきなのかが分かってきます。

もちろん、内向型だからといって全員が転職をする必要もないし、起業したりフリーランスになったりする必要もありません。

今の会社にいながら内向型を生かす働き方ができれば、すっきり悩みが解消される人もいます。答えは人それぞれです。

内向型を認め、自分の本音としっかり向き合うことで、自分に合う選択肢を見つけてほしいと思います。皆さんがいま感じている生きづらさも、次第に解消されていくはずです。

取材・文/栗原千明(編集部) 人物画像提供/堤ゆかりさん

書籍紹介

内向型 堤ゆかり

『もう内向型は組織で働かなくてもいい 「考えすぎるあなた」を直さず活かす5ステップ』(堤ゆかり著/世界文化社)
本書では、「内向型」を武器に変えるための現実的なステップをご紹介。特別な才能がなくても、あなたの経験を生かせる仕事があります!