コロナ禍の転職活動のポイントって? StayHome中に“リモート転職”した女性の体験談から探る
コロナショックで生活が変わる中、自分の働き方や生き方を見つめ直した人は多いだろう。
会社の経営状況が悪化してしまったり、これまでやっていた仕事ができなくなってしまったりと、転職を考えざるを得ない状況に置かれた人も少なくない。
ただ、「コロナ不況」といわれ、まだまだ先行きが不透明な状況で、転職なんてできるのだろうか?
そこで、前職を退職して間もなく緊急事態宣言が発令され、StayHome真っ只中の4~5月に転職活動をした阿久津 潮音さんの体験談を紹介する。
後半では、阿久津さんが「納得できる転職」を実現できた理由を3つに分けてキャリアアドバイザーが解説。コロナ禍での転職活動のポイントをチェックしよう。
3月末:退職を切り出す
4月7日:東京都で緊急事態宣言発令
4~5月:リモートで転職活動に専念(約60社応募/約30社面接/1社内定)
6月:株式会社MyRefer入社
緊急事態宣言発令の直前に、転職先未定のまま退職
阿久津さんが退職を決意したのは今年3月のこと。営業として所属していた人材紹介事業から、会社の撤退が決まったのがきっかけだった。
「コロナの影響で事業撤退したわけではなかったので、会社に残ること自体への不安はありませんでした。ただ、社内に他の営業部門はなくて。営業の仕事はとても楽しく、やりがいを感じていたので、それなら営業の仕事ができる他の会社に転職しようと考えました」
退職を切り出したのは、ちょうど新型コロナウイルスが流行り始めたタイミング。辞めることが決まってから間も無く緊急事態宣言が発令された。転職先が未定のまま辞めるリスクはあったが、社内でやりたい仕事ができない以上「残る選択肢は一切なかった」という。
「ただ、やはり転職活動では苦労をしました。本当は有給消化中の4月中に決めたかったのですが、結局転職先が決まったのは5月末。約2カ月と、想定よりだいぶ時間がかかってしまいました」
苦戦した理由は、書類や面接の通過率の低さ。以前転職活動をした際は10社応募・1社内定だったが、今回は60社応募してやっと1社から内定が出た。「企業の選考ハードルが上がっているのを感じた」と振り返る。
「即戦力の経験者採用の求人が増えていて、ポテンシャル層の採用は見送る会社が多い印象でした。私の営業経験は半年程度だったので、未経験に近い状態だったんです。選考を受けてる途中で採用自体を中止する会社もあって、外部要因に左右される部分もありました。とにかく応募数を増やす必要がありましたね」
“リモート転職活動”のメリット・デメリット
阿久津さんが転職活動をしていた4~5月は自粛期間の真っ只中。面接はほぼ全てオンラインで行われた。対面での面接とオンライン面接の違いについて、「相手に伝わる情報量が全然違う」と阿久津さん。
「面接官の方に『もっと自分のことを話した方がいい。画面上の印象しかないから、話して情報量を増やさないと良さが伝わらない』というフィードバックをもらったことがあって。それ以降は『話しまくる』を意識するようになりました。大げさにリアクションを取ったり明るいトップスの服を着たりと、画面の印象が明るくなるようにもしていましたね」
とはいえ、オンラインだからこその良さもある。
「画面にカンペを出せるので、志望動機や自己分析の内容を見ながら話せたのはよかったです。移動がない分、面接が始まる直前まで準備ができますし、1日に4~5件面接を詰めてもどうってことありません。何より交通費がかからないのは助かりました。たくさん面接をすることへの負担が少なかったのは、コロナ禍ならではの良さだったと思います」
「特に志望度があまり高くない初期の段階であれば、オンラインで十分」と阿久津さんは続ける。
「カジュアル面談や一次面接など、会社に興味が持てそうか、相性が良さそうかといった判断をする場面なら、オンラインの方がお互いの負担は少ないように思いました。求職者からすると出向く必要がないのはありがたいし、会わなければお断りもしやすい。画面共有で資料を見せてもらいながら説明を受けられるし、質問も気軽にできますし、問題ないなと」
ただし、志望度が上がれば上がるほど、対面の重要性は増していく。社内や社員の雰囲気を知る上で、やはりオンラインでの限界も感じたという。
「中には最終面接だけ対面という会社もありましたが、それはありがたかったですね。それが難しい場合であっても、選考に関わらない現場の方とお話する機会を挟んでもらえると、もうちょっと雰囲気が掴みやすかったかもしれないなと今振り返って思います」
初心に戻れたのは、コロナ禍だったからこそ
阿久津さんが今回の転職先であるMyReferに応募をしたのは、5月半ば。面接3回、カジュアル面談1回を経て、5月の最終週に内定を取得し、6月1日から働き始めた。不通過続きだった中、内定を得られた要因は何なのだろう。
「転職活動が長引いて不安も大きかったですけど、それでも焦らずに『自分は何をやりたいのか』を突き詰めて考えたことが、良い結果につながったんだと思います。コロナの影響もありなかなかうまくいかず、途中で自己分析をやり直したんですよ。自分が何をやってきて、どうなりたいのか。エージェントに登録してプロの手も借りながら、紙に書き出して言語化し、説明できるように整理したことが大きかったと思います」
転職活動において「何がしたいのか」は重要だ。先行きが見えない状況であればなおさら、やりたいことが明確で、それに向けて自走できることの重要性は増すだろう。
「もし今もまだ転職先が決まっていなかったとしても、バイトをしながら転職活動をしていただろうと思うくらい、妥協はしたくなかったんです。世の中の状況に関係なく、やりたいことが明確になっていれば、良い会社と巡り会えるんだなと実感しています」
どんなに不況になったとしても、全ての求人がなくなるわけではない。世の中の状況が悪い中で採用活動をしていることを「体力のある会社と判断することもできる」と阿久津さん。
「今は希望通り、営業として日々働いています。2カ月ぶりの仕事は体が慣れなくて最初は疲弊しましたけど、今は感覚を取り戻して、仕事に燃えています。毎日必死ですが、早く即戦力として働けるように頑張りたいですね」
「採用してもらったことを本当に感謝している」と阿久津さんはいう。そう思えるのも、コロナ禍で転職活動をしたからこそだろう。
「StayHome期間中の2カ月間で、改めて当たり前のことってないんだなと感じました。私はすでに退職していたので、働かせてもらえることのありがたさにも気付けました。『会社にぶら下がるのではなく、自分が頑張らなければ』って、初心に戻ることができましたし、そういうマインドで転職活動ができたのは、コロナ禍だからこその良さだったと思います」
【キャリアアドバイザーの視点】
「転職成功」3つのポイントを解説
阿久津さんが良い転職ができた理由は、大きく3つ。それぞれのポイントについて説明しましょう。
1. たくさんの企業に応募をしている
阿久津さんは今回約60社の求人に応募していますが、応募数を増やすことで自分の選択肢を広げることができています。
求人票を眺めている時点では不明瞭な点が多く、企業のカラーも面接官の人柄も、詳細な業務内容も、年収も分かりません。採用されるかどうかも全く分かりませんから、応募前の段階で企業を比べて判断するのは難しいもの。
実際に転職支援をする中で、「書類応募時の志望度はあてにならない」と思うことは多々あります。「思ったより印象が良くて志望度があがった」「なんか違うと感じた」など、書類応募時と面接後で志望順位が大きく変わるのはよくあることです。
つまり、応募時点から選択肢を狭めてしまうよりも、内定獲得後にベストだと思う企業を総合的に判断する方が納得感のある転職活動になります。
特にコロナ禍の今は急に採用が中止されることもありますので、最終的に残る選択肢が多くなるように内定獲得を目指していただくといいと思います。
2. 面接のパフォーマンスを向上させた
面接には「準備」と「場慣れ」が大事です。
面接内容について試行錯誤し、修正を加えてながら、面接時のパフォーマンスを最大化する。そのためには、転職理由や志望動機に一貫性があるかと考え抜く準備や、面接官の質問に端的に的確に回答できるための場慣れが必要です。
答えられなかった質問への回答を見直し、次の面接に臨めば面接通過率は上がっていきます。また、不意な質問も何度か面接を受けるとよくある質問だったと気付くケースもあります。
自分自身の転職活動を振り返っても、最初の頃の面接はボロボロでお見送りでしたが、5社目以降は負けなしだったのを覚えています。そういう意味では、1社目から志望度の高い会社を受けるのは避けた方が無難だとも言えますね。
たとえ未経験転職であっても、面接時のパフォーマンスを向上さえることで高評価を得て、年収を落とさずにオファーを勝ち取ることもできます。ぜひ「準備」と「場慣れ」を意識してみてください。
3. 「自分が頑張る」というマインドを持てた
「会社にぶら下がるのではなく、自分が頑張らなければ」というマインドに、転職活動を通して気付いたのが素晴らしいと思いました。
面接ではどうしても「前職の〇〇が嫌だった」といった不満がこぼれてしまったり、「次の会社では〇〇を叶えたい」という権利の主張になってしまったりすることが多いもの。
でも、阿久津さんのように「自分が頑張る」というマインドを持っている方は、お話ししていて言葉の端々に責任感や自律性を感じることができます。面接官からしても「一緒に働きたい」という気持ちになるものです。
特にベンチャーやスタートアップなど、裁量を任せてもらえる分、自主性を求められる環境ではより大切なポイント。もしも阿久津さんが「会社の恩恵を受けたい」という気持ちで転職活動をしていたとしたら、内定獲得はまだまだ遠かったのではないかと思います。
今は転職をする絶好の時期とは言えないかもしれませんが、自分のマインド次第では、この時期だからこそ自分にとって最適な企業に出会えるチャンスもあると思います。
転職をするからといって、次の会社で一生働き続けるとは限りません。自分の糧となる経験を身に付けて、また転職するという道もあります。
「会社に何かをしてもらう」のではなく「自分が頑張る」というマインドを持って、「この選択肢は今後の可能性を広げるものか、それとも狭めるものか」を意識し、意思決定をしていきましょう。
企画・取材・文/天野夏海