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AUG/2020

ノルマなし、足で稼ぐ必要なしの営業スタイルが浸透中――営業部女子課・太田彩子さんに聞く、保険営業職の新常識

女性の働きやすさの実態は?
変わる、保険営業職のシゴト

新型コロナショックの影響で、生命保険のニーズが高騰。コロナ禍の影響を受け、保険営業職の働き方も大きくアップデートされている。そこでこの特集では、識者・人事・営業職として活躍する女性たちへの取材を通じ、保険業界の女性活躍の実態、仕事の醍醐味を探っていく――

企業の女性活躍やダイバーシティの推進を背景に、営業職として働く女性は増えつつある。なかでも生命保険業界は、他業界に先駆けて女性の営業職を積極的に採用してきた長い歴史があり、女性が働きやすい環境づくりや管理職への登用も進んでいる。

だが、保険営業職の仕事に対して「長期的なキャリアが描きにくいのでは」「ノルマがきつそう」などのイメージを持つ人はいまだに多い。

そこで女性営業職のコミュニティー「営業部女子課」を主宰し、これまでに数多くの働く女性たちを支援してきた太田彩子さんに、変わりつつある営業職の働き方やキャリアについてお聞きした。

戸倉彩さん

一般社団法人 営業部女子課の会 代表理事、株式会社ベレフェクト代表取締役
太田彩子さん

育児をしながらリクルート「ホットペッパー」の営業担当として社内表彰を複数回受賞。2006年、独立。主に女性営業職を対象とする人材育成やキャリア開発を手がける。09年、営業女性の活躍を目的としたコミュニティー「営業部女子課」を立ち上げ、会社を超えたネットワーキングの場作りや各種講座開催、行政と連携した地域の女性活躍支援などを行っている

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営業職の長時間労働は過去の話。今は柔軟な働き方が可能に

「長らく営業職は男性中心の仕事だと考えられてきた」と話す太田さん。その理由としては、長時間労働や休暇の取りにくさなどが挙げられる。

太田さん

かつての営業は足で稼ぐスタイルが主流で、とにかく一人でも多くのお客さまと会うことが求められました。だからお客さまに呼び出されたら、時間外だろうと休日だろうと飛んで行かなければいけなかった。

つまり、お客さまに合わせた働き方が当たり前だったのです。よって仕事の拘束時間が長くなり、育児や介護などで働く時間に制約がある女性は営業職のキャリアを諦めてしまうケースが少なくありませんでした。

しかしそんな話は、すでに過去のもの。特にここ数年で企業の働き方改革が進んだことにより、営業職を取り巻く環境は大きく変化した。残業時間も法律で規制され、会社側も社員に長時間労働をさせないための仕組みやルールづくりを進めている。もちろん営業職も例外ではない。

オンライン商談
太田さん

以前は『営業職なら残業して当然』という雰囲気がありましたが、それは昔の話。お客さまに合わせて長時間働くスタイルは、今の時代に合わなくなっています。世間全体に『長時間労働は良くないこと』という認識が浸透し、お客さまの側も就業時間外に営業をいきなり呼びつけたりするのは非常識だと考えるようになったことは大きな変化ですね。

今は、自分で時間を効率的に管理しながら、個人や家庭の事情に合わせて柔軟な働き方ができる時代。特に生命保険業界は、会社の制度や職場環境の整備もかなり進んでいる印象です。

その変化をさらに加速させたのが、今回の新型コロナショックだ。人との接触を減らすことが求められ、企業の間でテレワークが拡大する中、営業現場でもオンラインや電話による非対面のリモート営業の導入が急速に進んでいる。

太田さんが主宰する「営業部女子課」では、新型コロナウイルスの感染が拡大していた今年4月に現場で働く営業を対象にテレワークに関する調査(※)を実施。慣れない非対面営業に戸惑う声もあったものの、「移動時間が削減された」「時間効率が良くなりアポ数が増えた」「商談の時間が短縮された」などのメリットを挙げる回答も多く寄せられた。

(※)一般社団法人 営業部女子課の会「コロナ時代のモノの売り方~営業職のテレワーク」アンケート

太田さん

営業活動のデジタル化が進んだことは、女性の営業職にとって大きなメリットです。

リモート営業が増えたことで時間を効率的に使えるようになり、仕事の生産性が高まりました。特に育児や介護と仕事を両立している女性営業の皆さんからは、『限られた時間で効率的に仕事をこなせるようになった』と前向きに捉える声が多く聞かれます。

同じ調査では、88%の人が「今後リモート営業が拡大する」と回答した。非対面営業が主流になれば、以前の足で稼ぐ営業スタイルはますます時代遅れになっていくだろう。

太田さん

今はお客さまのニーズが多様化しています。例えば保険商品を売るときも、100人のお客さまがいたら100通りの人生があり、100通りの悩みがある。ですから一人一人のお客さまに寄り添い、その方に適した提案をする力が求められます。

つまり単に商品を売るのではなく、お客さまに合わせたソリューションを提供することが営業の役割だということ。そのために必要なのは、昔のように気合いと根性でとにかくたくさんのお客さまに会うことではありません。

それぞれのお客さまの話をじっくり聞き、さまざまなアイデアを出しながら、ニーズに合った提案をつくり上げていくことが求められています。

ノルマのない営業職も増加。目標を自分で管理する時代に

それでも「結局、営業職は数字がすべてなのでは?」「ノルマのプレッシャーが大変そう」と思う人がいるかもしれない。だがこの点も今と昔ではかなり事情が変わってきている。

保険営業
太田さん

確かに以前は、商品を売りまくって高い営業成績を上げた人がヒーローになる世界でした。でも今は先ほど話したように、ただ売ることだけが営業の役割ではなくなっている。

それに伴い、ノルマを撤廃したり、個人ではなくチームで目標を設定したりする職場も増えています。ですから『営業なら全員が死ぬ気でノルマを達成しなければいけない』というのも過去のイメージですね。

もちろん営業として成果を出すことは求められますが、会社の与えられたノルマを追いかけるのではなく、例えば『今日は新規のお客さま3人にご提案しよう』などと自分で目標を設定し、それをクリアすることを楽しみややりがいにしていく働き方に変わってきていると思います。

顧客のニーズが多様化すれば、営業する側にも多様化が求められる。営業チームの中にさまざまな視点や価値観を持つ人たちがいなければ、多様なニーズを汲み取ることは難しいからだ。だからこそ今まで以上に女性の力に期待が集まっている。

太田さん

女性の営業職が増えることで組織の多様化が促進されますし、私ももっと多くの女性が頑張れる仕事だと考えています。

いまだ残る女性営業の課題として管理職が少ないことが挙げられますが、意思決定者のほとんどが男性という同質化した組織では、新たなイノベーションが生まれず成果も出せません。

新しいアイデアや発想は、多様な背景や属性を持つ人たちがいてこそ生まれるもの。現場で活躍する女性はもちろん、管理職になる女性が増えることは組織にとって大きな意義があります。

保険営業

日本における女性管理職比率が伸び悩む中、生命保険業界では女性管理職を積極的に登用しており、この点でも他業界より女性の活躍が進んでいる。

管理職になる人、現場で営業として活躍を続ける人、育児や介護と両立しながら働く人など、すでに多様なロールモデルが存在していることは、これから保険営業職にチャレンジする女性にとっても大きなメリットとなる。

太田さん

女性にとって身近にロールモデルがいることは、長期的なキャリアを描く上でとても重要。『私もあんな人になりたいな』と思える女性がいれば、自分の将来のイメージが描けるからです。

しかもさまざまなタイプのロールモデルがいれば、『この先輩からお客さまへの提案の仕方を学んでみよう』『あの先輩の時間の使い方を真似してみよう』など、それぞれのいいところを吸収しながら自分のキャリアを伸ばしていくことができます。

営業職は「お客さまの“ありがとう”を集める仕事」

コロナ禍、生命保険の重要性はますます高まっている。未知の感染症が自分たちの身近に迫ってきたことで、健康やお金について不安を抱える人が増えているためだ。

保険営業
太田さん

コロナショックをきっかけに、人生観が変わった人も多いでしょう。すると今まで以上にお客さまに寄り添い、どうすればその方に幸せになって頂けるかを考えながら、二人三脚で今後のライフプランやマネープランを作っていく力が重要になります。

今はネットで簡単に情報収集できますが、情報が多過ぎるとかえってお客さまは選べなくなる。情報が溢れている時代だからこそ、自分に合うアドバイザーが欲しいと思っているお客さまは多いはずです。

もともと保険は住宅に次ぐ人生に二番目に大きな買い物と言われ、金額が大きいだけに顧客はどんな商品やプランを選べばいいのかと悩むことが多い。この重要な選択の場面で顧客の役に立てることは、保険営業職にとって大きなやりがいになる。

保険営業
太田さん

保険は大きな買い物だからこそ、その人の人生を変えてしまうくらいの影響力を持っている。つまり保険を提案する営業職は、お客さまの人生に影響を及ぼす仕事だということ。それはとても素晴らしいことじゃないでしょうか。

私は営業職を『お客さまの“ありがとう”を集める仕事』だと思っています。お客さまに幸せになって頂くための良い提案をして、結果的にたくさんの“ありがとう”を集める。そう考えれば、営業職のイメージは随分変わるのではないでしょうか。

「営業の経験がないから、自分にできるかどうか自信がない」と考え、保険営業職への転職をためらっている人もいるかもしれない。そんな女性に太田さんはこんなエールを送る。

太田さん

まずはやってみることが大事。やってみれば、『営業職とはこういうもの』という思い込みが外れることは多いですから。

それに営業職を経験すれば、人から信頼される力コミュニケーション力時間管理力など、ビジネスに必要なあらゆるスキルが身に付くので、人生にとってプラスにしかなりません。

『営業を経験したことでキャリアが充実した』と話す女性は本当に多いんですよ。ぜひ皆さんにも、人生で一度は営業職を経験して頂きたいですね。

取材・文/塚田有香

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