「売る」から「コンサルティング」へ。保険のアフターフォローに重点を置いた職種・カスタマーコンサルタントの働き方とは
新型コロナショックの影響で、生命保険のニーズが高騰。コロナ禍の影響を受け、保険営業職の働き方も大きくアップデートされている。そこでこの特集では、識者・人事・営業職として活躍する女性たちへの取材を通じ、保険業界の女性活躍の実態、仕事の醍醐味を探っていく――
今回お話を伺ったのは、第一生命保険株式会社で「カスタマーコンサルタント」の採用・育成を担当する南ちひろさん。カスタマーコンサルタントは、いわゆる保険の営業職とは異なり、既契約者のアフターフォローに重点を置いた職種だ。
「保険の営業」というと、新規の顧客開拓がメインというイメージを持っている人も多いかもしれないが、アフターフォロー中心のカスタマーコンサルタントの働き方とは、一体どんなものなのだろうか。
プロの手を借りたい保険の見直し。高まるアフターフォローのニーズ
――カスタマーコンサルタントは、第一生命さんの中でどのような役割を担っているのでしょうか?
カスタマーコンサルタントのミッションは、すでに第一生命の保険にご加入いただいているお客さまのアフターフォローを行うことです。新規の顧客開拓を行うことは、メインミッションに入っておらず、既存のお客さまの保険の見直しなどをお手伝いします。
実際のところ、弊社のお客さまの中にはご高齢の方も多いのですが、30年以上前にご加入された保険をそのままにしていらっしゃる方も少なくありませんでした。当然、収入やリスク、生活スタイルは加入時からだいぶ変わってきていますから、保険に求めるものも変化しているはず。
しかし、お客さまご自身でライフスタイルにあわせた保険の見直しを行うのは難しいのも事実です。
そこで、弊社のカスタマーコンサルタントが現在ご加入の保険内容を確認し、お客さまの「今」のニーズに適したものかどうかを一緒に確認させていただくようにしています。
―― 一般的に「営業」という言葉からイメージする仕事とは、だいぶ違いますね。
そうなんです。「保険を売る」というよりは、「コンサルティングをする」というイメージの方が近いかもしれません。
お客さまのライフスタイルも多様化していますし、相続や税制などの視点も含めて、お客さまの資産をどう運用するか、ということを総合的にご提案することが求められていると感じます。
――具体的にはどのような活動をするのでしょうか?
まず、一人のカスタマーコンサルタントにつき約400名程度、すでにご加入いただいているお客さまの情報を取り扱うことができる仕組みになっています。
2年以上弊社のアフターフォローができていないお客さまを中心にご連絡させていただいて、現在加入されている保険の内容を一緒に確認します。
ご高齢のお客さまの場合は、アポイントを取ってご自宅に伺い、お話しさせていただくことが多いです。
窓口での相談や、コールセンターなどでのお手続きも可能ではありますが、カスタマーコンサルタントと対面で相談できる方がご安心いただけるという声をよくいただきます。
コロナ禍に模索する、新しい働き方
――やはり対面でのコンサルティングには根強いニーズがあるのですね。ただ、最近はコロナ禍で従来の活動が難しくなっていることもあるのではないでしょうか?
そうですね、ただそこは弊社でも柔軟に対応しています。
例えば、緊急事態宣言が発令されていた間はカスタマーコンサルタントも在宅勤務に移行。これまでのような対面での活動は難しくなりましたが、手紙や電話、アプリなど、さまざまな手段を用いて「今だからこそ必要な保険や医療関係の情報」を提供させていただくようにしました。
いろいろな方法で出来るフォローをさせていただいた結果、お客さまからは「気に掛けてくれてうれしい」と言っていただけたことも。今回のトライアルアンドエラーが、お客さまとの関わり方を改めて見直すきっかけになりました。
――オンライン化は今後も進めていくのでしょうか?
その通りです。ただ、お客さまのご要望はさまざまなので、選択肢を広げるということであって、対面でのご提案も引き続き大事にしていきたいと考えています。
一方で、社内では今年4月に入社したカスタマーコンサルタントの研修はオンラインも活用し、実施しました。これまでは集合研修を行うことが基本でしたが、オンラインでもメリットは多いと気付きました。
アフターコロナでも、完全に従来のやり方に戻すのではなく、メリットがあるものについては柔軟に継続していく予定です。
20-30代女性が中心。長く働き続けられるワケ
――カスタマーコンサルタントの皆さんは、全員が中途でご入社されていると伺っています。営業経験者の方が多いのでしょうか?
いいえ、全くそんなことはありません。
営業経験のある方も中にはいますが、保険に関しては「全くの未経験」という方がほとんど。前職もサービス業、学校の先生、事務職など本当にさまざまです。しばらく専業主婦をしていたという方もいらっしゃいますよ。
研修も4カ月間丁寧に行いますし、挑戦しようと思えばどなたでもトライできる職種だと思います。年齢層も20代から40代まで幅広いですが、多いのは20代後半から30代前半の比較的若い方ですね。
――20代~30代の女性たちが、長く働き続けられるように、環境づくりで工夫しているポイントはありますか?
はい、弊社では全社的に女性が仕事と家庭を両立できるような環境をつくるべく、かなり充実した福利厚生制度を用意しています。
カスタマーコンサルタントも例外ではなく、産休・育休が取得できるのはもちろんのこと、一定の条件のもとで保育所の利用料の30%を会社が負担するという「育児サービス経費補助制度」(※)などもあります。
(※)育児サービス経費補助制度
子どもが満3歳を迎えた後、最初の3月末日までの育児サービス料(保育所などの利用料)について、所定の条件を満たした場合、利用月ごとに負担した費用の30%(子ども一人につき月額2万円限度)が支給される。
――保育所費用の負担までしてくれる会社は、なかなかないですよね。
そう思います。
また、福利厚生の制度が充実しているだけでなく、カスタマーコンサルタントなら、自分自身でアポイントや休暇などの調整もフレキシブルにできますし、ワークライフバランスを大事にしながら働けます。
――次に気になるのはキャリアのことなのですが、カスタマーコンサルタントとして入社した場合、ずっとその仕事を続けることになるのでしょうか?
基本的には、カスタマーコンサルタントの組織の中で、リーダーポジションに就くことを目指していくことになります。
ただ、急にリーダーになるわけではなく、入社2年目以降から段階的に特別研修などを実施して、徐々にキャリアアップが図れるように仕組み化しています。
さらに、最近は新たな試みとしてジョブローテーションの制度も始めました。
これは、カスタマーコンサルタントとは異なる部署に異動し、経験を積むことができるというもの。他の職種や他の部門の仕事を経験することで、自分自身の可能性を広げ、ビジネスパーソンとしての視点を高めて仕事ができるようになってもらえればという意図があります。
――これまで、どんな部署に異動した方がいらっしゃるのでしょうか?
例えば、代理店営業の部署に異動したコンサルタントがいます。代理店営業ですと、さまざまな保険会社の商品を取り扱う代理店の方々に、弊社の商品の特徴をお伝えするスキルが必要になります。
弊社の商品内容を熟知する必要があるだけでなく、それをどのようにお客さまに提案していただくか、ということまでを考えて代理店の方々にお伝えしなければいけません。
商品知識に加え、リーダー職に必須である“教える”というスキルも身に付くわけですから、仕事のスキルもよりいっそう磨かれますね。
“真面目にコツコツ働ける人”が活躍できる
――南さんご自身は、カスタマーコンサルタントの採用・育成をする立場として、どのような人が向いていると感じますか?
お客さまの人生に心から寄り添うことができる人、ですね。
先ほども申し上げた通り、カスタマーコンサルタントは「商品を売る」仕事ではなく、お客さまの「課題を解決する」仕事。
じっくりとお客さまの声に耳を傾け、ニーズに合うご提案をさせていただく必要がありますので、“強気な提案ができる”とか“口がうまい”とか、そういった能力は重要ではありません。
――ノルマなどはないのでしょうか?
資格維持などの目標はありますが、一般的にイメージされる営業の売り上げノルマとは異なりますね。
カスタマーコンサルタントの目標は、販売件数だけではなく、お客さまにお会いした数なども含めたトータルの活動量で設定しています。なので、収入も安定していますよ。
ノルマ達成を目的に働くのではなく、お客さまのために安心して長く働ける人を増やしたい。そういう想いで目標設定や給与の仕組みを設計しています。
仕事を長く続けたい人や、誠実な仕事を通してお客さまの人生に寄り添う仕事がしたい人、そういう気持ちを持った皆さんがイキイキと活躍できる場を今後もつくっていきたいと考えています。
取材・文/太田冴 撮影/洞澤佐智子(CROSSOVER)
『変わる、保険営業のシゴト』の過去記事一覧はこちら
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