大人の胸も、熱くなる。新作ドラマ『青春の記録』が描く韓国社会に生きる“夢追い人”たちの理想と現実
海外ドラマコラムニストの伊藤ハルカが、旬な海外ドラマ作品の中から、注目のパワーウーマンを紹介! 強くて、知的で、お茶目で、美しい……個性的なキャラクターが続々と登場する海外ドラマから、女性の“働き方&生き方”を学んじゃおう!
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今年は、『愛の不時着』にはじまり、『梨泰院クラス』、『サイコだけど大丈夫』など、数々の韓国ドラマがNetflixの今日の総合TOP10に並び、空前の韓流ブームとなりました。根強いファンと新しいファンが韓流ブームを押し上げ、毎月多くの韓国ドラマが新たに配信されています。
そこで今回は、夢の実現に向けてひたむきに生きる若者たちを描く韓国ドラマをご紹介します。
経済格差やルッキズムなど、今の韓国社会が抱える問題がリアルに描写されるのも本作の特徴。主人公たちが懸命に生きる青春の日々に、胸が熱くなります。
今月の作品:『青春の記録』(Netflix)
『青春の記録』は、韓国で9月7日から放送が始まった新作ラブストーリー。Netflixでは、毎週月曜・火曜日の韓国での放送を受けてすぐに配信する「ほぼリアルタイム配信」のスタイルをとっています。
本作は、タイトルの通り、20代の夢追う若者たちの青春を記録する一作。
セレブ家庭に生まれ育ち、母親の後援で有名俳優への道を駆け上るヘヒョと、ヘヒョの親友で俳優を志すモデルのヘジュン、プロのメイクアップアーティストを目指すジョンハの三人が主人公です。
へヒョと違って名誉もお金もないヘジュンとジョンハは、情熱と才能だけで芸能界で名を上げようとチャレンジします。しかし、不安定な暮らしを案じて家族に猛反対されたり、先輩からパワハラを受けて道を阻まれたり、厳しい現実に直面します。
そんな中、お互いに叱咤激励し、前進していくジュンとジョンハ。夢を追う若者たちの姿が、とてもまぶしく映し出されています。
また、このドラマで描かれるのは、現代を生きる若者たちの姿だけではありません。主人公の祖父や両親など、韓国の中高年世代が抱える葛藤も描かれます。
兵役や経済格差、ルッキズムやジェンダーなど、韓国の社会問題がリアルに描写されていくので、どの世代が見ても関心を持てる部分があるはずです。
ちなみに、作中では俳優志望のヘジュンが、自分の夢を実現させるために入隊の時期を延期しようとするのですが、ヘジュンを演じるパク・ボゴムは本作を撮影し終えた8月31日から兵役に服することになりました。
入隊直前の作品だっただけに、パク・ボゴムのリアルな心情がヘジュンに投影されているように感じられます。
今月のパワーウーマン①:アン・ジョンハ(パク・ソダム)
ここからは、二人の女性たちを紹介していきたいと思います。まずは、メイクアップアーティストの卵、ジョンハ。
アシスタントとしてサロンに勤務していますが、腕が良いため、先輩の顧客から指名されることも少なくありません。その度に、先輩から暴言を浴びせられますが、グッとこらえて冷静に対応します。
ジョンハは、仕事が休みの日にはメイク道具一式を持って街へ繰り出し、通りすがりの女性たちにストリートメイクを施します。
夜は、昼間のストリートメイクの様子を編集し、YouTubeへアップ。小さなことでもやり続ければ全てが夢の実現につながると信じ、コツコツ継続する努力家です。
現実の厳しさなんてものともせず、お金がなくてもへこたれず、職場と家の往復を続けるジョンハ。忖度することを嫌い、自分らしさを貫き、ひたすらまっすぐ夢を追って生きる姿に、胸を打たれます。
そんなジョンハを演じるのは、実力派俳優のパク・ソダム。今年、アカデミー賞作品賞を受賞した話題の映画『パラサイト 半地下の家族』で半地下に住む一家の長女役を演じたことで一躍有名になった俳優です。
ハリウッド女優のシャーリーズ・セロンも彼女のファンだと公言しており、作中の演技を大絶賛。国際派女優の道を歩み出した、今最も注目される若手俳優の一人です。
高校生の時に観た舞台をきっかけに、女優の道を志すようになったソダム。演劇学校に進学し、数々の映画やドラマに脇役として出演。どんな役に対しても徹底的に役作りをして挑み、限りなくリアルな演技を見せてきました。
かつては脇役のイメージが強かった彼女も、2015年に連ドラで初主演を飾って高い評価を受けてからは、数多くのドラマ、映画で主演を務めるように。10代で見つけた夢を、才能と努力で見事に掴み取ったのです。
そんな彼女自身の人生も、本作のジョンハに重なる部分がありますね。
今月のパワーウーマン②:ハン・エスク(ハ・ヒラ)
今回のコラムでは、もう一人紹介したい女性がいます。ヘジュンの母・エスクです。
彼女は息子のために家政婦の仕事を始め、家族に尽くす日々を送っています。息子が自由な人生を歩めるようにと働きづめで、彼女自身がやりたいことはいつも後回しです。
ヘジュンが入隊を延期し、父親と喧嘩になった時も、「あなたは好きな道を歩みなさい。そのために私が働いているんだから」とヘジュンの背中を押すエスク。
自分の夢を貪欲に追うジョンハとは違いますが、息子の幸せを切に願うエスクからも、強い信念を感じます。
時には、母としてではなく、一人の女性として幸せになりたいという思いも頭をよぎりますが、「家族の幸せこそが自分の夢」とエスクは信じています。
“夢”にはいろいろな形があり、それでいいんだと彼女を見ていると思います。
本作でエスクを演じるのは、韓国の実力派俳優、ハ・ヒラ。子役時代から韓国の芸能界で長期にわたり活躍し、20代では多くのドラマに出演。ヒット作への出演にも恵まれてきました。
最近では、母親役など脇役に回ることも多いですが、どの作品においても彼女にしか出せない「味」があり、その演技力は今なお高く評価されています。
本作では、20代から70代まで幅広い世代の“夢”が描かれます。また、夢の種類は、無謀なものからささやかなものまでさまざま。
彼らの生きざまを見ていると、「夢を抱くことはちっとも恥ずかしいことじゃない」と感じられるようになります。
思い切って夢を口にして、目標に向かって走り出したくなる——。そんな、眩しい作品です。
作品情報
『青春の記録』
【配信】
Netflixオリジナルシリーズ。独占配信中。
https://www.netflix.com/jp/title/81290301
『今月のパワーウーマン』の過去記事一覧はこちら
>> http://woman-type.jp/wt/feature/category/work/powerwoman/をクリック