仕事がマンネリ化してきたら? 転職に飛びつく前にやるべきセルフチェック3つのステップ
この連載では、さまざまな人生経験を積んできた『Mentor For』のメンターたちが、“豊かなキャリア”を描いていくためのヒントを後輩女性に向けて送ります
はじめまして、『Mentor For』公式メンターの宮本桃子です。ヤフー、ベンチャー企業、カオナビ社などへの参画などを経て、今年独立をしました。現在はスタートアップの支援や、働く女性のメンターとして活動しています。
今回は、長く勤めてきた会社の仕事にすっかり慣れて、マンネリ気味という方からの相談にお答えしたいと思います。
先輩に聞きたい!今回の相談内容
「仕事がマンネリ気味で……」
新卒で入社して以来、大手企業で8年ほど働いてきました。収入や環境などに大きな不満はないのですが、ここのところ仕事がマンネリ化しています。
年齢を重ねるごとに新しいことに挑戦しづらくなっていくかも、と思うと急に不安になり、そろそろ転職した方がよいのでは……と考えるようになりました。
ただ、安定した企業に勤めてきて、転職について本気で考えたことはなかったので、実際に行動に移すとなると不安です。これからどうすべきか、アドバイスをいただきたいです。

ご自身の今後を考え始めたというBさんは、これまで、とても良い職場で働かれてきたのではないかと思います。昨今、収入や人間関係などに苦しんでいる人が多くいる中、不満を感じずに長く働けることはとても恵まれていますね。
ある程度の期間同じ会社に在籍してきちんと成果を出していれば、いわゆる「信用財産」(※)が蓄積されます。ですから、あまり悩まず、日々の仕事ができるようになりますよね。
(※)信用財産……仕事でのコミュニケーションや結果を通じて生まれる、目には見えないその人に信頼のある状態を指し、心理的安全性のベースにもなるもの
おそらくBさんは、これまで、きちんと「信用財産」を築かれてきたのでしょう。
一方で、先にあげたような社会の変化を感じることや、ご自身が年齢を重ねていく中で、このままで良いのか、という気持ちになること、とてもよく分かります。
私自身、大手企業から、転職を考えたきっかけは、「人生100年時代と言われてるけど、このまま、同じ会社で働き続けて、60代、70代を迎えても大丈夫だろうか」と考えたことでした。
結局、私は、ベンチャーに転職する、という選択をしたのですが、そこに至るまで、何度も「大好きで働きがいもあるこの会社を辞める必要が本当にあるのか」と考えました。
今回は、そのころを振り返って、こういうことを考えておけばよかった、ということや、今改めてキャリアを考える上で大事だなと思うことを、お伝えしたいと思います。
転職の検討は、これまでの自分を振り返る絶好の機会

2019年5月、トヨタ自動車の豊田章男社長の「終身雇用を守っていくことが難しい」という発言は、大きな波紋を呼びました。新卒一括採用、年功序列、終身雇用、というこれまでの日本の雇用の形がもう保たない、と、皆が意識し始めた時かもしれません。
また、コロナ禍によって、ワークスタイルの変更が余儀なくされ、企業も、働く人の意識も大きく変わろうとしています。
副業が注目され、「会社に依存しない働き方」、「独立した個人」といったキーワードがメディアでもよく見られるようになりました。
日本ではこれまで、新卒で入社した企業で、さまざまな経験を重ねて、ポジションと収入を上げていくことで、生活を安定させていくことができました。
しかし、グローバル化や労働人口の減少などの社会の変化、さらにコロナの影響も重なって、自分の勤めている会社がずっと今のままあり続けるかも分からない、毎朝通勤して1日を会社で過ごすことが当たり前ではなくなるかもしれない、そんな漠然とした不安を感じる人が増えています。
現状に不満がないとおっしゃるBさんですが、転職を意識し始めるのはいいことだと思います。1回立ち止まって、自分のことを考えるきっかけになると思うからです。
ですが、いきなり転職活動を始める前に、まずは、これまでの自分を振り返ってみましょう。その上で今後のキャリア、仕事を考えることをお勧めします。
少し遠回りに思えるかもしれませんが、「自分を知ること」が第一歩です。
自分を知るための3つのステップ

ここから、自分を知るための「3つのステップ」について詳しく紹介します。
(1)自分のスキル、経験の棚卸し
まず、「自分のスキル、経験の棚卸し」から始めます。
これまでのお仕事で、どういう業務を担当し、どういう成果を出したか、困難な業務にどう取り組んで解決したか。自分自身を振り返りながら、それを文字に落とし込んでみましょう。
これは、実際に転職活動をする際に、職務経歴書という形で生かされますし、面接などにも役に立ちます。
一つ例を出しますと、アマゾン社では、「リーダーシップ」を非常に重視していて、面接の際には必ず、これまでの職歴の中でリーダーシップをどれだけ発揮したかを、行動を元に語ってもらうそうです。
具体的に「何をしたのか」を明確にすることは、自分を知る意味で、非常に有効です。また、これは、自分の強みを発見するためのヒントにもなります。
「自分はこういう仕事をしている時に、モチベーションが上がる」とか、「こういう状況において、自分はこういう役割をすることが多い」といった普段は意識していない自分を客観的に見ることを意識してみると良いでしょう。
(2)自分がこの先「やってみたいこと」があるのかを考える
次に、これが最も大事なことだと思いますが、自分がこの先、やってみたいことがあるのか、を考えることです。
今の仕事がマンネリ気味だとおっしゃってますが、漠然とした不満・不安を理由にした転職はあまりお勧めしません。
チャレンジしたいことや、やってみたいことの軸のない中での転職は、結果として同じことを繰り返すことにもなりかねません。
今後、主体的に自分でキャリアをつくっていくことが、一層求められていくと思います。せっかく一歩踏み出すのですから、フラットにやりたいことを考えてみましょう。
いきなり、やりたいことと言われても……と思うのでしたら、オンラインで色々なセミナーやイベントが開催されていますので、興味のあるジャンルのものを探して参加してみるのもアリです。
また、最近では、転職エージェント経由ではなく、知人友人のつながりや、副業やボランティアから参画してみて、そこから転職するようなケースが増えています。
ボランティアから始めてみるなど、あまり畏まらず、情報収集しながら、やってみたいことを明確にしていけるといいですね。
これまでの自分を振り返り、自分のやりたいことを探っていく。このステップを経て、もう一度、考えて欲しいことがあります。
・今の自分が所属している部署や担当している業務で、やってみたいことはないか?
・現在の会社の、他の部署や他の職種で、興味のあることはないか?
です。
大手企業は、同じ会社の中でも、さまざまなサービスや仕事が存在しています。部署を異動したり、職種を変えたりすることが、転職したのと同じような変化となったりします。
今いる会社に改めて目を向けてみると、実はいろいろな可能性があるかもしれません。
「会社に雇ってもらっている」ではなく、「自分がこの会社を選んでいる」と考えると、「もっとこの会社を利用して、できることを増やそう」という視点で見ると、これまでとは違うものが見えてきます。
(3)自分の価値観、軸を明確にして、これからのキャリアをつくる
それでも、別の会社や新しい仕事にチャレンジしてみたい気持ちがあるのであれば、転職活動を始める時が来た、ということかもしれません。
これまでの経験や、これからやりたいことを考えていくと、ご自身の価値観や大切にしたい軸が見えてくると思います。
転職活動においては、仕事内容だけでなく、価値観とのマッチングもしっかりと見極めていくことがとても重要です。
「転職すること」はあくまで手段。目的ではない

私は、40代でいわゆる「大企業」から「ベンチャー」へと転職しましたが、転職当初は、いかにこれまで自分が恵まれた環境にいたかを痛感しましたし、うまくいかなくて落ち込んだこともありました。
しかし、裁量が大きく、事業や組織を自分で作っていけることや、それまでやったことのない業務にゼロから関われるなど、大企業では得られない経験をすることができました。
悩んだ末に、転職を決めた時、「これからも働き続けていくために、大企業の看板に依存しない、自立したキャリアを築こう、そのためのチャレンジだ」という目的を明確にしました。
まだまだ道半ばですが、この目的は今も変わらず、自分の指針になっています。
つまり、「転職すること」はあくまで手段であり、目的ではありません。
ではその「目的」とは何でしょうか。それは、自分の望むキャリアの方向性やライフスタイルなどを実現することだと思います。自分の望む未来に近づく手段の一つとして、転職を捉えてみてください。
「何となく不安」というだけであれば、不安の理由をクリアにして今のところで頑張るという選択肢もありますし、もしかしたら、他にも手段はあるのかもしれません。
自ら選び、主体的に人生を築く必要がある時代

少し前に、ベストセラーになりました『ワーク・シフト』(プレジデント社)という本では、これからの働き方の変化、シフトとして三つのポイントが挙げられています。
一つ目は「知的資本(専門技能)」、二つ目は「人的資本(人間関係)」、三つ目は「情緒的資本(満足感)」。独立した個が、専門技能を持って、チームプレイで、金銭だけでない目的=情熱を持って仕事をしていくようなイメージです。
主体的に人生を築く、そのために自分で選択をする意志を持つ、そういうことが今後求められていくと思います。
私はいわゆる「就職氷河期世代」です。周囲の同世代を見ていると、「変化に対して、恐れず、主体的に動ける人」は、多少の失敗をしながらも、それでも充実した生活をしているように見えます。
もちろん、それぞれいろいろな問題はあると思いますが、それらも飲み込んで進んでいくエネルギーを感じるのです。
新しいことに取り組むのは結構しんどいです。安定していればなおさら、やらない理由をあげる方が簡単だったりします。それでも、もし何かのきっかけで、Bさんが変化を感じているのであれば、ちょっとでもいいから行動してみましょう。
「脱皮しないヘビは死ぬ」、これは哲学者ニーチェの言葉です。人にも組織にも、古いものを捨て、新しいものを得るべきタイミングが必ずやって来るのではないでしょうか。
そのタイミングは、偶然くるかもしれませんし、成功するか失敗するかは分かりません。ただ、Bさんの行動の先にある世界は、きっと今とは違ったものになると思います。

【この記事を書いた人】 宮本 桃子さん
「Mentor For」公式メンター。ヤフー株式会社で15年勤務ののち、40代でベンチャーへ転職。その後、株式会社カオナビに参画し、カスタマーサクセス部門の立ち上げ、マネジメント、マザーズ上場経験を経て、2020年独立。現在は、複数のスタートアップへの支援をしながら、キャリア女性へのメンターとしても活動中。夫と二人暮らし
『後輩たちへ』の過去記事一覧はこちら
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