“一家全員無職”から外資系スタートアップの社外取締役へ。人生の大逆転を生んだ「ミーニング・ノート」メソッドとは?

コロナ禍で不安が広がる今、将来のキャリアについてモヤモヤする気持ちを抱えている人は多いかもしれない。

そこで紹介したいのが、「ミーニング・ノート」という「起こったチャンスを毎日3つ書き残す」メソッド。どんなささやかなことでもいいので、日々の出来事に可能性を見出していく練習をする。

「ミーニング・ノート」の発案者である山田智恵さんは、「一家全員無職」という状態から、外資系スタートアップ企業の社外取締役にまでなった女性だ。

彼女は一体どのようにして人生を好転させたのか。山田さんに、「ミーニング・ノート」のメソッドと誕生の経緯を伺った。

山田智恵

リーマンショックで家族全員が失業
絶望の中で始めた“うれしいこと日記”

大学卒業後すぐに、自身の父が経営していた会社に入社した山田さん。ところが、2009年に起きたリーマンショックの影響で、会社は10年に民事再生を申請することに。創業者だった父をはじめ、山田さん一家は職を失い、「全員無職」となった。

「どう生きていけばいいのか分からない」そんな状況から第2の人生がスタート。仕事もなければ、得意なこともこれといってない……。そんな状況の中、山田さんはネットカフェに引きこもることに。

「『なんとか状況を打破しなければ』と始めたのが、以前読んだ自己啓発本に書いてあった、その日に起きた『うれしいこと』を3つ書く日記です。最初は、うれしいことを3つ探すこと自体が大変な状況。それでも続けているうちに、毎日うれしいことを見つけることができるようになっていきました」(山田さん)

ミーニング・ノート

「うれしいこと日記」により、山田さんは少しずつ前向きになっていき、再就職も果たしたという。

ところが、親の会社でしか働いた経験がない山田さんは、就職後にスキル不足を痛感。「大きな遅れを取り戻すためには、みんなと同じ努力をしていてもダメ。チャンスをつかまなくては」と腹を決めた。

そこで、「うれしいことを3つ書く日記」を「チャンスを3つ書く日記」、すなわち「ミーニング・ノート」に切り替えた。

少しでも心が動いたものをチャンスとみなしそのチャンスにどんな価値や可能性があるのかを考え文字にすることを繰り返す。すると、人生が少しずつよい方向へ向かっていくのを実感できたそう。

この、ミーニング・ノートを続けていると「意味付け力が高まっていきます」と山田さんは話す。

意味付け力とは、自分に起こった出来事に価値や可能性を見つけ出す力のこと。意味付け力が高い人は、どんなことが起きても可能性を見つけ、道を切り開きやすくなるというのだ。

ミーニング・ノート実践法

では、人生を好転させるミーニング・ノートを実践するには、具体的にどうしたらいいのだろうか。

山田さんによれば、用意するのは1冊のノートだけでOK。毎日のチャンスを書くウィークリーページと、毎月のチャンスを書くマンスリーページを作り、右側のページにチャンスを書いていく。

毎日のチャンスを書いていくウィークリーページ

毎日のチャンスを書いていくウィークリーページ

ポイントは、毎日のチャンスを「出来事+意味付け」で書いていくこと。このときに、人や場所の名前など、固有名詞を入れていくと、「〇〇さんからたくさんのチャンスをもらっているな」などといった気付きが得られる。

また、「どこに心が動いたのか」を後で思い出せるように具体的に書くこと。本であれば「どこに感動したのか」、褒められたことであれば、「誰に褒められたのか」。具体的に書いていく。

チャンスを書き出したら、気付いたことや学び、決意など意味付けを書き出す。出来事の意味付けをしていくことで、価値や可能性を見出す力が高まっていくのだという。

1週間が終わったら、ウィークリーページには21個のチャンスが並んでいるはずだ。週末にはこの21個のチャンスを見直し、大切なものを3つ選んで印をつける。

また、チャンスの「つながり」を見つけたらラインを引いてみると、それぞれのチャンスがどのようにつながったのかが見えてくるだろう。左ページには、発見した気づきと戦略を書いていくのがおすすめだ。

さらに、月末には、1カ月分のチャンスから大切なものを3つ選び、マンスリーページに書き出してみよう。他の月に書いたチャンスとつながりを見つけたら、また線を引く。

1カ月分のチャンスから大切なものを3つ選んで記録する、マンスリーページ

1カ月分のチャンスから大切なものを3つ選んで記録する、マンスリーページ

山田さんは、「うれしいことを3つ書く日記」を「チャンスを3つ書く日記」に切り替えてから、「チャンスかもしれないのだからやってみよう」という気持ちを引き出せるようになったという。

例えば、部署全体宛ての一斉送信メール。チャンスを探す前までは「自分宛ではないから関係ない」と思って読み流していたものも、チャンスを探す癖が毎日ついてからは「これは私のチャンスかも」と自分ごと化して考えられるようになった。

学びや経験は、誰にも奪えない財産。
留学先やニュースからの気づきが道を切り開く

ノートに1000個を超えるチャンスが並んだ頃、「私のような経験が少ない人でも、下克上ができるような新しい業界はないのか」という考えが山田さんの中に芽生えた。

それから実際に転職を果たした山田さん。チャンスになったのは、自身がノートに書きためていたニュースやブログ記事の情報、そして、友人の存在だった。

「ノートの中に、気になったニュースやブログ記事からの学びも書き貯めていたのですが、そうしているうちに、今でいうSNSインフルエンサーのような人が増え始めていることに気付きました。

ちょうどそのころ、広告代理店で働く友人から、SNSに関わる仕事ができる事業部で働かないかと誘われていて。『これからの時代は、発信力のある個人がさらに増えていくのでは?』と肌で実感していたので、ぜひやりたいと思いました。伸びしろのある業界への転職に一歩踏み出せたのです」

転職先では、1年で部長に就任。「チャンスを探して何事にも積極的に取り組んでいた姿勢が評価されたのではないか」と山田さんは振り返る。

ミーニング・ノート

また、入社2年目でマネジメント業務に携わることになった山田さんは、Facebookで目に留まった記事をきっかけに、アメリカ・ボストンに留学。現地の学校ではリーダーシッププログラムを受講し、自分の強みを生かすマネジメントのトレーニングを積んだ。

「プログラムで学んだ自己分析の結果、私はメンバー全員を一気に盛り上げるよりも、1on1で悩みを聞いて、一緒に考えていく方が得意だということが分かりました」

自分に合ったリーダーシップを学んだ結果、写真が得意なメンバーと話し合って、ソーシャルメディアでどのような写真を撮影したらよいか本にまとめたり、ソーシャルメディアで使う写真を代理で撮影するサービスを立ち上げたり、新しいチャレンジを重ねた。

また、ソーシャルメディア業界のニュースを独特の切り口で捉えられるメンバーと一緒に専門メディアを立ち上げ、記事を発信。記事をきっかけに問い合わせが増えて、メンバーがテレビに出演したこともあった。

部署の目的にメンバーを当てはめるやり方ではなく、彼らの特性に合わせてマネジメントする方針に切り替えてから、山田さんの躍進は続いた。

ミーニング・ノート

現在は、ミーニング・ノートを教える仕事をメインで行なっている山田さん。

「人生においてお金や家、社会的信頼や名誉、希望など、すべてを失った瞬間がありました。ですが、学びや経験は誰にも奪えない財産であると身に染みて感じています」と振り返る。

日々のニュースからの学びや、留学先でのリーダーシップについての学びなど、日々「学習とチャンス」を積み上げてきた彼女。葛藤を乗り越えた分だけ、その表情は輝いている。

■山田さんの講義をもっと見てみたい方は、こちら(グロービス学び放題)
■参考:山田智恵『ミーニング・ノート』(金風舎)

取材・文/吉田瞳


<プロフィール>

山田智恵さん
ミーニング・ノート発案者/株式会社ダイジョーブCEO/オシロ株式会社COO リーマンショックの影響で、勤めていた父親の会社が民事再生を申請し、一家全員無職となる。32歳で初の就職活動を行うなど、ゼロから人生を切り開かなくてはならず、 チャンスをつかむために、毎日3つのチャンスを書く「ミーニング・ノート」のメソッドを編み出す。そこから人生が好転し、転職した一部上場企業ではたった1年で部長に昇格し、 リーダーシップ・プログラムでボストンに留学、外資系スタートアップ企業にも社外取締役として参画する。日本で初めてインスタグラム・マーケティングの本(『インスタグラム・マーケティング入門』(金風舎)『できる100の新法則 Instagramマーケティング』(インプレス))の執筆も行う。2016年に株式会社ダイジョーブを設立し、ミーニング・ノートを学ぶワークショップや研修を行っている。慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)卒業
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