月収13万の事務からインスタフォロワー25万人超えの料理家へ。たった2年で人生を変えた、りなてぃのSNSマーケ戦略
いつの時代も、数多くの専門家・タレントたちが人気を争っている料理業界。そんな中、「一週間3500円献立」というコンセプトが広い世代に刺さり、バズっている料理家がいる。RINATY(りなてぃ)さん(25歳)だ。

料理家・料理インスタグラマー
RINATY(りなてぃ)
1995年生まれ、北九州市在住。彼との生活で日々つくっている「一週間3500円節約献立」や「男子が喜ぶがっつり愛され献立」など実用的で斬新な献立が同世代を中心に多くの女性に支持される。Webやテレビでの活動をはじめ、食品メーカーや農産地などのレシピ開発・コンサルティングなどでも活躍中
インスタグラム(@rinaty_cooking)のフォロワーは25万人を超え、昨年7月に宝島社から出版した『りなてぃの一週間3500円献立』は発行部数23万部以上を突破し、ヒットを記録している。
料理家・インフルエンサーとして頭角を現すりなてぃさんだが、実はもともと、努力することや継続することが大の苦手だという。進学も就職も決め手は、何となく。料理についても、当初は好きで始めた訳ではなかったそう。
そんなりなてぃさんに転機が訪れたのは、約2年前のこと。「家から近くて就職を決めた」という建築事務所の事務として働いていた頃、当時の上司から渡された1冊のマーケティング本がきっかけで、彼女の人生観は180度変わった。
彼女はどのように人気料理家への道を歩んできたのだろうか。自称「超ずぼら」だというりなてぃさんに、バズるSNSマーケティングの秘訣と合わせて話を聞いた。
やりたいことも夢もない。“何となく”で短大へ

地元・北九州市にある高校を卒業したのは、今から7年前のこと。市内で一、二を争う進学校に通っていましたが、私は特にやりたいことがなく、進学したいとも思っていませんでした。
むしろ、早く自分の手でお金を稼いで、自立したかった。4年間大学に通っても、遊ぶだけだし意味がないと考えていたんです。
結局、親や学校の説得もあって、栄養士の資格を取得できる短期大学に進学しました。特待生制度を利用できて学費がかからなかったというのと、2年間で卒業できるので、まあいいかな、と。
特に料理が好きなわけでもなかったのですが、料理は今後の生活に必ず役に立つだろうから、勉強しても無駄にはならないかな、くらいの気持ちでした。強い意思みたいなものは、全くなかったんです。
短大を無事卒業して栄養士の資格を取得しましたが、就職したのは歯科医院。2年間、歯科助手として働きました。歯科衛生は料理とは全く別の世界だろうと思っていましたが、そこでは意外にも“食の大切さ”を強く実感することになりました。

歯科医師の先生が、歯の健康と食の関わりについて、とてもこだわりのある方だったんです。
「美味しくご飯を食べられないのはすごくストレスだし、患者さんが可哀想。老後、たとえ入れ歯になったとしても、絶対に食事を楽しんでもらえるように治療をするんだ」といつも仰っていました。
確かに、老後の楽しみって食事だよなぁ、と思って。いま思い返すと、ここでも食や料理についての知識を習得していたような気がします。短大といい、歯科医院といい、人生のつながりって本当に面白いですよね。
彼氏との同棲をきっかけに始めた自炊生活
今では料理本を出版するほどになりましたが、私が本格的に料理を始めたのは約2年前のこと。今もお付き合いをしている彼氏と同棲を始めたことがきっかけで、自炊をするようになりました。
当時は歯科医院から転職して、建築事務所の事務員として働いていましたが、事務員ですから、やっぱり給料は安くて……手取りは13万円くらい。その中で1カ月やりくりをしなくてはいけないので、自炊は必須だったんです。
とはいえ、とにかくずぼらで面倒臭がりな私。スーパーに行って毎日料理をして……なんて、続けられる自信がない。
どうにかしてモチベーションを保たなければ、と思い、始めたのがインスタグラムでした。自分を奮起させるためだけに、毎日作ったものをただただ記録するアカウントだったんです。

そんなこんなで始めたインスタも、やっていくうちに楽しくなっていきました。次第に「よし、インスタグラマーになろう」と目標を持つようになったんです。
やっぱり、少しくらい裕福な暮らしをしたいじゃないですか。手取り13万円じゃ、いくら節約しても生活するだけでいっぱいいっぱいで、いつまでたっても裕福な暮らしはできません。
だから、インスタグラマーになれば、副収入が得られるんじゃないかと思ったわけです。要はお金のため。夢のない話に聞こえるかもしれませんけどね(笑)
きっかけは1冊のマーケティング本。“生活者視点”がバズのきっかけに
インスタグラムに本気で取り組もうと思ったのは、建築事務所で働いていた時の上司が貸してくれた1冊の本がきっかけでした。
その名も、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(ダイヤモンド社)。ビジネスの専門的な知識がない私でもさらっと読めて、とても面白かったんです。
特に刺さったのは、お金は需要と供給のあるところに生まれるんだ、ということ。世の中の人は何を求めていて、何をすれば喜んでくれるのだろうか。この視点を、自分のインスタグラムの運用に生かしてみよう、と思ったんです。
そこで生まれたのが、今回出版したレシピ本のタイトルにもある“一週間3500円献立”というコンセプトでした。

まず、毎日ご飯を作る主婦の人たちが悩んでいることって何だろう、と考えた時に、「日々の献立を考えること」だと思ったんです。料理のレシピは探せばいくらでもあるけれど、一週間分の献立はなかなか載っていません。そこに需要があるな、と思ったんです。
それから、「節約」というのも重要なキーワードでした。私自身手取り13万円で1カ月生活していましたから、カツカツの生活費の中で自炊をしなければならない大変さを知っていました。
同じような収入で頑張る同世代を応援したいという気持ちもあり、食費は抑えられるけど決して寂しくはならない、彩り豊かで豪華な献立を提供したいと思ったんです。
その他にも、1週間分の食材を買いだめしたレシートの画像も掲載するなど、とにかく工夫を凝らして投稿してみました。すると、たった数日でフォロワーが1万人も増えたんです。やっぱり需要はそこにあったんだ、と、たしかな手応えを感じた瞬間でした。
そこからは、さらにアカウントの質を上げるべく、投稿内容をブラッシュアップ。
インスタグラムのキャプション(文章)は読まれにくいからレシピの文章も画像の中に書き加えるようにしたり、若い世代の方にも見やすいように可愛いフォーマットを作ったり……。

そのおかげで、どんどんとフォロワーは増えていき、レシピサイト『Nadia』でレシピを投稿するNadia Artistにもなることができました。今では、料理家として幅広いお仕事をさせていただいています。
今思うのは、とにかく継続することが大事なんだ、ということ。地道でもコツコツと続けていくことが、何があっても崩れない土台みたいなものにつながるんだと実感しています。
面倒くさがりだった自分が今、料理家として歩めているのは、日々の地道な継続のおかげなんです。
今でこそこんなこと言っていますけど、本当にインスタを始めるまでは「継続が大事」って大人が言う度に「私には関係ないや」って思っていたんですよ。でも、そんなことなかったですね(笑)、努力も継続もすごく大事です!
みんながやりたくないこと、私がやります!

仕事に対する意識も、歯科助手、事務をしていた頃とはまるで変りました。今は「みんながやりたくないことを、私が代わりにやるんだ!」という思いでやっています。
献立を考えるのが面倒くさい、スーパーで何を買えばいいのか分からない、節約したいけど寂しいご飯は食べたくない……そういう要望や困りごとに、とことん答えていきたい。誰かの役に立つことこそが、仕事をするということだと思うんです。
以前は、インスタグラマーになって副収入を得られたらラッキー、くらいに考えていましたが、今となっては「美味しかった」「家族に喜んでもらえた」というコメントが、私のやりがい。働くことの楽しさに気付けたのは、フォロワーの皆さんのおかげなんです。
レシピ本第二弾を待ち望んでくださる声もたくさん届きますし、今後もたくさんのレシピ・献立を生み出していきたい。私自身、これから結婚したり、子どもが生まれたり、たくさんのライフステージの変化を経験すると思います。
先の長い人生、そのときそのときの同世代の皆さんの役に立てるよう、私のできることをたくさん発信していきたいですね。
書籍紹介:『りなてぃの一週間3500円献立』(宝島社)

簡単! おしゃれ! 満足度が高くて彼も喜ぶ愛情ごはん、なのに一週間3500円の節約レシピ。5週間の献立になっているからマネするだけ。ガッツリ満足の肉おかずから、野菜たっぷりの副菜、具だくさんおにぎり、汁物大百科まで、この一冊でもう献立に困らない! あっという間にちゃんとした一汁三菜ごはんが完成します。25万人以上のフォロワーを持つ人気料理インスタグラマー・RINATY(りなてぃ)、待望の初のレシピ本
取材・文/太田冴 人物写真/りなてぃさん提供