11 JUN/2021

仕事ができる人の言葉の選び方とは? 精神科医と心理研究家が提案する“人に好かれる”言いかえ術

仕事で関わっている人に対して、「あんな言い方しなければよかった」、「もっとうまく伝えられたらよかったのに」と言葉選びについて後悔したことはありませんか?

仕事ができる人の言葉の選び方とは? 精神科医と心理研究家が提案する“人に好かれる”言いかえ術

言葉選びに失敗してしまったことで、思わぬトラブルを招いたり、損をしたりと、仕事がうまく進まなくなったことがある人も、少なくないかもしれません。

逆に、言葉選びが上手な人は、周囲の人に好かれて信頼され、仕事がスムーズに進んでいきますよね。

『会話の9割は「言いかえ力」でうまくいく』(アスコム)著者の心理研究家・津田秀樹さんと、精神科医・西村鋭介さんは、人から好かれる言葉選びには特徴があり、意識すれば誰にでもできるようになると言います。

そこで大事なのが、言葉の言いかえ。3つのケースで「悪い伝え方」と、「良い伝え方」をそれぞれ比べながら、人に好かれる言葉選びのポイントを学んでいきましょう。

【ポイント1】「極端語」を使わない

あなたの後輩がよく遅刻をしてきます。どんな風に注意しますか?

会話

<悪い伝え方>

あなた:どうしていつも遅刻するの?

後輩:すみません、反省してます。

あなた:ちっとも反省が活かされないね。会議の資料はちゃんと持ってきた?

後輩:あ、うっかり忘れました……。

あなた:ありえないよ、あなただけだよこんなに注意されるの。

後輩:すぐとってきます。

あなた:時間の無駄ばっかりだね。みんなから信頼されなくなるよ。

 

<良い伝え方>

あなた:どうして遅刻するの?

後輩:すみません、反省してます。

あなた:反省を活かしていこうね。会議の資料は持ってきた?

後輩:あ、うっかり忘れました……。

あなた:誰でも忘れることはあるけど、もう少し自覚を持とう。

後輩:すぐとってきます。

あなた:時間は有効活用しよう。あなたに期待してるよ。


 

相手に「もっと言葉が刺さるようにしなきゃ」という気持ちから、人に注意をするときには「いつも」や「ちっとも」などの極端語が増えがちになります。しかし、それでは逆効果。

極端語で叱られることによって相手の心には反論や反発心が芽生えてしまい、結果的に言葉が届かなくなってしまうと津田さん、西村さんは言います。

相手の心に届く伝え方がしたいなら、極端語を抜いてみましょう。

【ポイント2】断るときは理由と代案を入れる

先輩社員から、残業して仕事を手伝ってもらうように言われたとします。どうしても断らないといけない場合、あなたならどうしますか?

会話

<悪い伝え方>

先輩:昨日伝えたけど、今日は残業で仕事の手伝いをお願いできるよね?

あなた:はい……。

先輩:じゃあ、まずこの資料を……。

あなた:あの、すみません。今日はやっぱり無理です。

先輩:え、昨日なぜ言わなかったの?

あなた:すみません、私が悪いんです。

先輩:そうか、もう他に頼める人がいないし困ったな……。

 

<良い伝え方>

先輩:昨日伝えたけど、今日は残業で仕事の手伝いをお願いできるよね?

あなた:申し訳ありません、今日は手伝いができなくなってしまいました。

先輩:え、昨日なぜ言わなかったの?

あなた:実は今日、●●さんと進めていた仕事でミスが見つかり、明日までに対応しなければいけなくなってしまいました。●●さんだけでは処理できないので、私が対応することになったんです。

先輩:そうか、もう他に頼める人がいないし困ったな……。

あなた:▲▲さんがまだいらっしゃるようだったので、代わりに手伝ってもらえるか聞いてみたいと思いますが、いかがですか?

先輩:ぜひお願い。▲▲さんが手伝ってくれそうなら、大丈夫だよ。


 

誰かのお願いや誘いを断らないといけないときには、「はっきり断る」+「理由」+「謝罪」+「代案」を盛り込むようにして伝えてみましょう。

もしもその場で代案が出せなければ、後で埋め合わせをする提案を。

困っている人に対して、親身になっている姿勢を示すことで、相手の気持ちがほぐれます。

【ポイント3】反映技法を使う

お客さまから購入した商品に関してクレームが来てしまったとき。あなたが店員やカスタマーサポートの立場なら、どのように対応しますか?

会話

<悪い伝え方>

客:先月ここで買ったサーキュレーター、音が少しうるさいんだけど。

あなた:はぁ、そうなんですか

客:ジーって音がずっとしていて、耳障りなんだよね。

あなた:この製品の動作音は20デジベルでして、これは木の葉の触れ合う音と同じ程度の大きさです。不良品でもない限り、うるさいはずはないんですが。

客:でも、実際うるさいの。

あなた:ご返品されたいということですか? ご購入から2週間以上過ぎているので、できるかどうか……。

客:誰もそんなこと言ってないでしょ? あなたじゃ話にならないから上司を出して。

 

<良い伝え方>

客:先月ここで買ったサーキュレーター、音が少しうるさいんだけど。

あなた:それは申し訳ございませんでした。当店でお買い上げいただいたサーキュレーターの動作音が大きすぎるんですね?

客:大きすぎるってほどじゃないけど、ジーって音が少し耳障りで。

あなた:ジーという音がお耳障りなんですね。それはこの製品のモーター特有の動作音ですね。この製品の動作音は20デシベルでして、これは木の葉の触れ合う音と同じくらいの大きさにはなるのですが、特殊な音というのは気になりますし、ごもっともですよね。

客:そうなのね。壊れているわけじゃないなら、もう少し使ってみます。


 

相手がイライラしている、クレームを言っている場合などは、まずは「ちゃんと話を聞いている」ことを伝えることが大事です。

そのために有効なのが、相手の言ったことをそのまま繰り返す反映技法。心理カウンセリングの現場などでもよく使われる、相手に安心感を抱かせる話し方です。

会議などの場でも、反対意見を言う前に「●●さんが仰っているのはこういうことですね? 私の意見は……」というように、一度相手の言ったことを繰り返すと攻撃的なニュアンスが緩和され、相手に受け入れてもらいやすくなります。

いかがでしたでしょうか?

ここで紹介したのは一部の事例ですが、うまい伝え方が身に付いてくると、人間関係がうまくいき、仕事がスムーズに進むようになるのを実感できるはず。

また、相手にとって心地よい伝え方、言葉の選び方ができるようになると、あなたに対しても気持ちのいい言葉が返ってくるようになります。

人を傷つける言葉、不快にする言葉を使ってしまうと、相手もあなたにそうした言葉を使おうとしてきます。

自分から負の連鎖を断ち切るきっかけをつくってみると、周囲の人の態度も変わっていく可能性があります。ぜひ、トライしてみてくださいね。

書籍紹介

会話の9割は「言いかえ力」でうまくいく

『会話の9割は「言いかえ力」でうまくいく』(アスコム)
津田秀樹/西村鋭介

本書では、精神科医&心理研究家の著者が、心理学に基づいた「損する言葉を好かれる言葉に変える方法」をご紹介します。「言いかえ力」を身につけ、人間関係や人生をより良い方向に変えてきましょう。
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【プロフィール】
津田秀樹さん
心理研究家。筑波大学卒。『anan』や『non₋no』などの雑誌の心理テスト作成、携帯公式心理サイトの主宰、心理学的映画紹介、心理マンガ(原作)、就職適性検査の対策本の執筆、ニンテンドーDSのソフトのディレクションなど多方面で活躍。著書に『迷いがなくなる心理学 人生のサンタク』(PHP研究所)、『ジーパンをはく中年は幸せになれない』(アスキー新書)など

西村鋭介さん
精神科医。精神保健指定医、精神科専門医。東京大学中退、国立大学医学部卒業。現在は理論的心理学と、科学としての精神医学を統合させ、悩みに潜む心理学的背景を解析するとともに、それを病院での臨床の場に実際に応用。「心理学」と「精神医学」の二方向からのアプローチで、人の悩みの真の解決を目指し、日々活動中。携帯公式心理サイトで、「ココロコラム」と「お悩み相談」のコーナーを長年担当