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DEC/2020

フリーランスから会社員に戻った編集者が思う、働き方の向き不向き「“どう働くか”は流動的でいい」

天野

初めまして、天野夏海と申します。

初めましてと言っても、実は『Woman type』との関係は深く、かつてはWoman type編集部におりました。退職してフリーランスになってからもお付き合いは続き、かれこれ7年くらい記事の企画や制作に携わっています。

編集部に在籍する以前からWoman typeのファンで、毎日楽しみに読んでいました。お世辞抜きに、今も大好きなWebマガジンです。せっかくなのでこれまでに手掛けたお気に入りの記事をいくつかご紹介。

さて、このコラムのテーマは「フリーランス、実際どう?」です。

私は現在ハッカズークというスタートアップで“8割正社員”として働きながら、残りの2割でフリーランスとして活動をしています。それ以前は約3年間、フリーランスとして編集やライティングを中心に仕事をしていました。

フリーランスになったきっかけは、完全になりゆき

「フリーで仕事をしている」と言うと、「すごいね」と言われることが多いです。私もフリーランスになる前は同じように「すごい!」と言っていましたし、「一人で仕事をするなんて勇気があるなぁ。私には無理だ」と思っていました。

ところが自分がフリーランスになったきっかけは、完全になりゆき。

私は2015年末に会社を辞めてワーキングホリデーでオーストラリアに1年間滞在したのですが、帰国して銀行口座を確認したら貯金残高が2万円しかなかったんです。当時はまた海外に行きたくなるかもと思ったこともあり、当面は就職せずに食いつなごうと考えていました。そこで「フリーランスやってみます」とFacebookに投稿。

日本に戻ってきました。先々週に帰国して間もなく過ぎ去りし時を求めて冒険に出ていましたが、ようやく世界に平和が訪れたので来週から仕事を求めつつ、お久しぶりの方々に会いに東京近郊をさまよい歩きたいと思います。

ただ、久しぶりにお会いするのが怖…

天野 夏海さんの投稿 2017年9月1日金曜日

正直「古巣のWoman typeや姉妹媒体のお仕事はいただけるだろう」という下心はあったのですが、Woman type編集部にいた頃にお付き合いのあった方を中心に、予想外にお仕事のお声がけをいただきました。

お陰さまで案件獲得に苦戦することなく、スムーズにフリーランス生活を軌道に乗せることができました。当時お声がけくださった皆さん、本当にありがとうございます。

これまでやってきた仕事への通知表が来た

そんな感じでぬるっとフリーランスになったわけですが、「案外いけるんだな」というのが率直な感想でした。フリーランスになる以前のイメージと、良い意味でのギャップが結構あったように思います。

ギャップ1. スキルのハードルが思ったより低かった

もちろんフリーランスとして食べていくには、ある程度のスキルが必要です。私に編集やライティングのスキルがあったのは事実ですが、フリーランスとしていろんな会社と仕事をする中で褒められたのは、びっくりするぐらい普通のことだったりします。

・約20社とのメールのやり取りを抜け漏れなくさばいた
・渡されたリストにガシガシ電話をかけた
・打ち合わせの待ち時間にシーンとしてしまったので場つなぎの雑談をした

これ、そんなに特殊なことじゃないですよね。「このくらいなら私でもできる」と思った人も多いのではないでしょうか?

ところが、社風や仕事相手の職種によっては、「すごい」に変わる。例えば営業がいない会社であれば、電話をガシガシかける人はそもそも社内にいないわけです。

所変われば評価されるポイントも変わる。自分の身を置く場所を選ぶことの重要性を実感しました。

ギャップ2. 人脈は思ったよりあった

フリーランス

私はあまり社交性があるタイプではないので、人脈づくりへの苦手意識や抵抗がものすごくあります。取材でイベントに参加しても、ネットワーキングの時間が始まったらそそくさと帰っていました。

仕事上、広報の方との接点は多かったですが、あくまで仕事のやり取りをするだけ。ランチやお茶などのプラスアルファの交流は全くといっていいほどなく、Facebookでつながってはいるもののコメントをするわけでもない。

なので、Facebook投稿をきっかけに複数の方からお声がけがあったことに驚くと同時に、「これまでやってきた仕事の通知表が来た」ような感覚を持ちました。

たぶん、当時声をかけていただけたのは、編集やライティングのスキルというよりも「人としての信頼」みたいなところが大きかったんじゃないかと、手前味噌ながら思っています。

フリーランス

きちんとメールを返す、原稿のやり取りを誠実にやる、お礼を言う……そんな当たり前のことをきちんとやっていたからこそ、「この人と仕事をしてもおかしなことにはならないだろう」と思ってもらえたんじゃないか、と。

そういう意味では、これまで真面目に仕事をしていたことが、結果的にその後の仕事につながる人脈づくりになっていたんだな~と、振り返って思います。

目の前のことに真剣に取り組む姿は、絶対に誰かが見てくれている」というのはよく言われることですが、まさにこれを実感しました。

フリーランスをやっていた3年間も仕事で携わった方から次のお仕事をご紹介いただき……と、案件獲得に困ることは一度もなく、人とのつながりや一つ一つの仕事に誠実に取り組むことの大切さをしみじみ感じています。

「面倒な人間関係から解放される」はウソだった

一方で、「思ったより大変だぞ……」と思うこともありました。事務処理の面での苦労はある程度想像していましたが、自分がフリーランスになってみて初めてわかったマイナス面も多々。

1. 寂しい

どこにも所属しないことがこんなに寂しいとは思いませんでした。私は最終的に3~4社と継続的にお付き合いをしていて、各社のチームの一員として温かく迎えていただいていたんですけど、とはいえ私は「社外の人」なんですよね。

家族や趣味のサークルなど、自分が帰属意識を感じられる場所があればまた違ったと思うのですが、私の場合は一人暮らしで、趣味の集まりもない。「どこにも所属していない」孤独感はずっとありました。

2. 相談相手は自分で見つけないといけない

会社にいると、上司や同僚、手厚い会社ならキャリア相談窓口みたいなものがあったりしますよね。日々のちょっとした業務の悩み事や困りごとも気安く相談できます。

一方でフリーランスは、基本的に相談相手がいません。一人で仕事をしているので、「これどうやって使うんだっけ?」みたいな、ちょっとした質問がめちゃくちゃしにくい。

もちろん友人や昔の上司・同僚に話を聞いてもらうことはできるものの、自分の仕事の状況を理解しているのは自分だけ。一から十まで全て説明する必要があるわけです。

フリーランス

そもそも会社員の人に「フリーランスの悩み」を相談する難しさもあります。

自分の単価をどう設定すればいいか、クライアントへのリクエストはどう伝えればいいのか。こういった正解がない相談事は、やはり経験値がものを言います。

そういう意味ではフリーランス同士のつながり、特に同じ職種のフリーランス仲間の存在が大きな支えになっていました(ちなみに適切な価格設定は今でもよく分かりません)。

3. 人間関係は結局めんどくさい

フリーランスになれば面倒な人間関係から解放されるイメージがあったのですが、これは結構ウソでした。

むしろいろんな会社とやり取りをするので、それぞれの会社で人間関係を築かなければいけない。仕事のやり方も社風も異なる各社に合わせたコミュニケーションを模索する必要があります。

相談相手がいない話にも通じるのですが、人間関係で不満や困りごとがあったとしても、自分でどうにか解決しなければいけない面倒さもあります。会社だったら上司や同僚が間を取り持ってくれることもありますが、フリーランスの場合はそんな気の利いたことをしてくれる人がいません。

フリーランス

もちろん合わない会社とのお取引を辞める選択肢があるのは事実です。ただ、これって結構勇気がいります。

特にフリーランスを始めたばかりの頃は、いただいたお仕事を断る逡巡がものすごくありました。「断る=収入がなくなる」わけで、そう簡単に「仕事相手が面倒だからやーめた!」とはいかない。

ある程度我慢しながら付き合う必要があるのは、会社員でもフリーランスでも残念ながら一緒でした(ありがたいことに私のお取引先の方々は本当にいい人ばかりでしたが、一度だけモンスタークライアントに遭遇し、相当消耗しました……)。

やる前から向き・不向きなんてわからない

このコラムでは「フリーランスはこんな人に向いてる・向いてないを書いてほしい」と言われていました。

ただ、私は向き不向きを語れるほどの者ではないですし、何よりも「やる前から向き・不向きなんてわからないのでは?」がフリーランスを経験した今の考えだったりします。

一人で仕事をするので真面目さや自立心・自律心、責任感みたいなものは必要だと思いますが、働き方が変わって意識が変わることはザラにある。一人ゆえにやらざるを得ない状態になることで、実は今まで組織に甘えていたことに気付いてシャキッとすることだってある気がします。

私自身もフリーランスをやってみた一番の収穫は「自分にとっての向き・不向き、得意・不得意、好き・嫌い、そしてやりたいことが明確になったこと」でした。

フリーランス

「フリーランスは寂しい」と書きましたけど、振り返って考えてみたら私は学校や会社がなんだかんだ好きだったんです。

最低につまらない学校生活を過ごしていた中学生の頃も、死ぬほど仕事がつらかった新卒の時期も、学校や会社に行きたくないと思うことはなく、学校をズル休みしようとするちびまる子ちゃんの気持ちが全くわからない(今日だるいな~はもちろんある)。

フリーランスをやった3年間で、そんな発見がたくさんありました。そうやって自分にとっての良い働き方、今やりたいことを考えた結果、私の場合は今年の10月から再び会社員として働くことを選びました。

(会社員に戻った理由はnoteにまとめたので、ご興味のある方はご一読いただけるとうれしいです)

まだ今の会社で働いて3カ月弱ですけど、すでに超楽しいです。

組織を横断してチームで業務を進めたり、会社だからこそできる大きな仕事に携わったりというのは、まさにフリーランスだった私が切望していたこと。

チャットの返信が来なくて寂しいといった社内コミュニケーションへの不満や面倒さすら「会社で働いてる!」 って感じがして、文句を言いながらもどこか浮かれている自分がいます(笑)

フリーランス

今の私にとってのベストな働き方は「一つの組織にガッツリ入り込んで仕事をする」であり、そのために会社員を選びました。性格的にもそれが向いていると思っていますが、5年後の自分は会社員にうんざりしているかもしれないし、新しい趣味に没頭して仕事どころじゃなくなっているかもしれない。

結局はその時々の自分の価値観や希望する働き方、仕事への温度感、ライフスタイルによって、良し悪しは変わるもの。フリーランスも会社員も他の働き方も、良い悪いで語れるものではないのだという当たり前の結論にたどり着きました。

Web記事としては「フリーランス最高!」みたいな方が分かりやすいよな~と思いつつ、これが正直な実感です。

フリーランス、とりあえず経験してみたら?

ただ、「どう働きたいか」は流動的なものであるからこそ、「どうにでも生きていける」自信は大きな武器になると感じています。

今いる会社は創業4年、社員数6名、しかも「アルムナイ(※)」という聞き慣れないワードを事業テーマにしているスタートアップ。もちろん可能性を感じて入社したわけですが、とてもじゃないけど「安定している」なんて言えないフェーズです。

※アルムナイは「企業の卒業生」を意味する言葉。詳しいことは私が編集長を務める『アルムナビ』やWoman typeの関連記事をぜひ!

そんな会社に入ろうと思った時に「いざとなったらフリーランスに戻る」という選択肢が持てている安心感は強くありましたし、選択の幅も大きく変わると感じています。

フリーランス

ということで、自分のことを知る意味でも、働き方の選択肢を正しく把握する意味でも、みんな一度フリーランスを経験してみたらいいのでは?というのが私なりの大雑把なまとめです。

会社を辞めずとも、土日だけ副業で体験する、転職を考えているのなら次の会社に入るまでの期間だけフリーランスとして活動してみるなど、短い期間でも試してみると新たな発見があるはず。

(「越境体験」の重要性はフリーランス女性と企業のマッチングを手掛けるWaris共同代表の田中美和さんもおっしゃっていましたので、詳しくはぜひこちらの記事を!)

これまた当たり前の話ですが、フリーランスに対する考え方は人それぞれ。フリーランスに関心のある方は、ぜひいろんな人の体験談やプロのノウハウを調べてみてください。Woman typeにも素敵なフリーランス女性のお話がたくさんあります。

そうやっていろんな考え方を知った上で、最後はやっぱり自分で体験してみるしかない。これはWoman typeを読みあさり、自分の悩みを企画にしながらモンモンとしていた20代の頃の私に伝えたいことでもあります(笑)

フリーランス

専門家でもなんでもない、いちフリーランスの体験談を最後まで読んでいるあなたは、たぶん思慮深い人だと思います。考えなしに動くようなタイプではない気がしますし、きっと大丈夫。

あと数週間で新しい年が始まる今は、何かを始める良いチャンス。これを読んでくれた方が、思い切って最初の一歩を踏み出せますように!

株式会社ハッカズーク アルムナビ編集長 天野 夏海

【この記事を書いた人】
株式会社ハッカズーク アルムナビ編集長
天野 夏海

2009年株式会社キャリアデザインセンターへ入社。 求人広告営業、IT派遣コーディネーター、Webマガジンの編集を経て退職。17年にフリーランスとなり、 19年より業務委託で『アルムナビ』編集長を務める。20年、株式会社ハッカズークにジョイン。現在もキャリアデザインセンターの各種媒体の企画・編集・執筆にアルムナイとして携わる
Twitter:@natsumiamano96
note:https://note.com/natsumiamano

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