察してほしい妻に指示待ち夫…パートナーとのすれ違い、どう解消する?【犬山紙子×三瓶真理子】
職場の人間関係や仕事のトラブル、パートナーとの共働き生活や子育てのこと……。働く女性の悩みや不安をイラストエッセイストの犬山紙子さんと、臨床心理士・三瓶真理子さんがカウンセリング! モヤモヤ解消のヒントをお届けします。
今回のカウンセリングテーマは、共働き夫婦の間で生じる問題です。
「パートナーと価値観が合わない」「最近すれ違っている気がする……」そんなモヤモヤを感じている女性たちのお悩みが二人の元に届きました。
【今回のモヤ女さんたち】
育った家庭環境のせいか、『家事育児は男の仕事ではない』という考えが染みついている様子が夫から伝わってきてイヤ!
料理や掃除・洗濯などは便利な家電や代行サービスを利用したいけど、夫にとってそれは『無駄遣い』に感じるみたい。価値観の違いがしんどいです。
年齢的にそろそろ子どもを持ちたいと思っているけど、夫は『まだいらない』の一点張り。お互いの主張が平行線で話し合いが思うように進みません。
パートナーにモヤついたら、まずは「察し待ち」をやめてみる
モヤ女さんたちの声を見ると、家事や育児に関するお悩みが目立ちますね。「家事分担に偏りがある」という声は、私もコラムや書籍の取材を通じてよく聞きます。
私も、同様の相談を受けることが多いですね。
また、家事分担の不公平感などで悩みを抱えている夫婦からよくお聞きするのが「察してほしいと思っている女性」と「言われたことしかやらない男性」という構図です。
そのパターン、あるあるですよね!
思うに、「察してほしい」の背景には「見ていてしてほしい」っていう思いがある気がするんです。
会社の仕事みたいに数字で評価が出ないから、せめてパートナーにはきちんと認めてもらいたいし、一緒にやっていきたいんじゃないかなって。
家事や育児は「家庭のタスク」ですから、パートナーに頑張りを認めてほしいと思うのはごく自然なことだと思います。
でも、やってほしいことがあるなら相手にきちんと伝える必要がありますよね。伝えること自体にハードルを感じる方も多いと思いますが。
そうですね。普段、相手の気持ちを察することを大事にしている人は、「相手もこちらの気持ちを察してくれるはずだ」と無意識に思い込んでいるかもしれません。
しかも、「不満を伝えると相手を不愉快にさせてしまうのでは?」という思いから、つい我慢してしまう人も多いようです。
でも多くの場合、我慢はそう長くはもたず、どこかでひずみが出てきます。

あー、取材でもそのケースがよくありました。気を使って我慢した結果、突然爆発しちゃうんですよね。
ですが、察することが苦手な人もたくさんいますよね。
それは悪意があるわけでも愛情不足なわけでもない。ただ単に「視野に入っていないだけ」というケースが、実はとても多いんです。
確かに! 我慢の限界に達して爆発した相手を見て、初めて「え、怒ってたの?」みたいな反応を示すケースも取材の中で実際ありました。
こちらとしては「分かるでしょ?」って思っちゃうけど、本当に分かっていないだけなんですね。
そう。だからこそ、パートナーときちんと話し合いの場を持つことが大切ですね。
話し合いを進める前に「自分の悩みや願望」と向き合って
パートナーと「話し合いがうまく進まない」というお悩みもたくさん届いています。
そもそもの価値観が違う状態からのスタートなので、スムーズにいく方が少ないかもしれませんね。
まずすべきなのは、「何を今話し合いたいのか」を自分の中で明確にすること。相手に何をしてほしいのか、どうしてこのタイミングなのか、その先にどんな将来をイメージしているのか……といった観点から、自分の悩みや願望を具体化していきましょう。
でも、いざ話し合い! となると、なんだかうまく伝えられない……という人も多そうですよね。自分の気持ちを伝えるのってパワーを使うし、話し合いが苦手な人の気持ちも分かるなって。
これは具体的なテクニックなのですが、次の5つのステップで対話を試みるといいですよ。
STEP1.伝えたいことを整理し、シミュレーションする
STEP2.自分の気持ちを整え、心に余裕を持つ
STEP3.落ち着いて話せる環境を用意する
STEP4.急に告げるのではなく、「今日の夜に話しましょう」など予定を伝えておく
STEP5.一回の話し合いで完結させようとせず、シンプルな言葉で繰り返し伝える場を持つ
実はこれ、お医者さんが患者さんに対して診断結果を伝えるときにも使われる方法なんです。この流れに沿って進めていくと、相手は話の内容を受け止めやすくなるんですよ。
一回の話し合いで答えを出そうとしない、というのは重要ですよね。
そうなんです。例えば「あなたにこう変わってほしい」という話の場合、それは相手にとっては大きな負担を伴う提案ですよね。なので、一回の話し合いだけで目的を達成するのは難しいと思います。

もう一つ意識するといいのは、「これはしないでほしい」というネガティブなアプローチよりも「こうしてくれたらうれしい」とポジティブに伝えることです。
私もパートナーと話していると、「あなたがこうしてくれないから困ってるんだけど!」というような言い方をしてしまう時もあります……気を付けないと……。
であればもう一つ、自分の気持ちを伝えるときに役立つコミュニケーション方法もご紹介します。事実、感情、提案、結果・選択肢を順番に伝える「DESC法」と呼ばれるテクニックです。
1.【事実】を述べる ⇒ 今、こういうことが起こってるよね
2.【感情】を伝える ⇒ それに対して、私はこう感じている
3.【提案】をする ⇒ だから、あなたにこうしてもらいたい
4.【結果・選択肢】どうなるか明確にする、または選択肢を示す ⇒ 実現したら、二人の関係がもっと良くなると思う。難しければ◯◯してくれると嬉しいな。
この順番で話してみると、言いたいことが伝わりやすくなりますよ。
確かにこの手法にあてはめてみると、言いたいことが「全然伝わらなかった」という事態にはなりにくそうですね。私もやってみようと思います。
関係性を深めるために、ときには「リスクを取る」ことも必要
最後に、話し合いを進める上で意識していただきたいのが、あなたと同じぐらい、パートナーにも「背景」があるということ。
何か心配事があったり、前向きになれない理由があるから、話し合いが進まないんですよね。
相手には相手なりの考えがあって当然ですもんね。
相手が一番不安に思っていることは何なのか。根本の部分で避けたいと思っていることをお互い明確にできると、「それを避けるためには何ができるだろう?」と建設的な話し合いができるようになりますよ。
なるほど。「避けるべきことを明確にする」というのは分かりやすくていいですね!
表面的な感情や言葉のやり合いだけでは、対立したり、同じ話が繰り返されたりしてしまいがちですからね。
心の奥にある感情を大事にして話し合いを重ねていけば、お互いの奥にある価値観に気付けるはずです。そうすると、より深いところで理解しあえて、いい方に進んでいくことも多いですよ。
日々カウンセリングをしていて感じるのは、相手との関係性を深めるためには、時には「リスクを取る」姿勢が大切だということ。
言いたいことを伝えると相手は傷つくかもしれないし、不快に思うこともあるかもしれません。ですが、話さなければ関係性が深まることもありません。
リスクをとって切り出した気持ちに相手が向き合ってくれない場合、そもそも長く一緒に生活するのは難しいかもしれない。
逆に、真剣に考えてくれる人だったら、長く付き合ってもうまくいくイメージが持てそうです。
とても参考になりました! ありがとうございました。
次回もよろしくお願いします!
>>次回は、将来のキャリアについてカウンセリングしてもらいます!
1981年、大阪府生まれのイラストエッセイスト。『私、子ども欲しいかもしれない。』(平凡社)、『アドバイスかとおもったら呪いだった』(ポプラ社)などの著書多数。近年はTVコメンテーターとしても活躍。最新著は『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』(扶桑社) Twitter:@inuningen Instagram:inuyamakamiko note:https://note.com/inuningen
公認心理師・臨床心理士
三瓶真理子さん
1981年、福島県生まれ。東京学芸大学教育学部人間福祉課程カウンセリング専攻卒業。東京学芸大学大学院教育学研究科臨床心理専攻修了(教育学修士)。2007年、吉祥寺クローバークリニックに勤務し、リワークショートケア運営、心理カウンセリング、心理検査などを担当。09年、株式会社アドバンテッジ・リスク・マネジメントにてカウンセリング、人事・管理職へのコンサルテーション、各種研修を担当した後、12年より株式会社ディー・エヌ・エー人事グループ健康管理室へ。16年5月、EASE Mental Management(イーズメンタルマネジメント)開設
Twitter:@ease_mm
取材・文/一本麻衣 撮影/赤松洋太 編集/栗原千明(編集部)、秋元祐香里(編集部)
『エッセイスト・犬山紙子×臨床心理士・三瓶真理子のモヤ女カウンセリング』の過去記事一覧はこちら
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