「すごい人」目指さなきゃダメ? IT業界で働く女性のキャリアのもやもや座談会

メディアに取材されたり、イベントに登壇したり……活躍している女性エンジニアは、何だか「すごい人」 ばかり。頑張り過ぎたり、無理し過ぎたりすることなく、地に足をつけて自分らしく働き続ける道はないのだろうかーー。
2021年11月17日(水)、女性エンジニアの学びと活躍を応援するカンファレンス「Woman Developers Summit」で行われたトークセッション「ごくフツーの私たちの考えるIT女子的アレコレ」では、“IT業界で働く女性ならではのキャリアのもやもや”をテーマに議論が交わされた。
トークセッションに参加したのは、アトラシアン株式会社の朝岡絵里子さん(モデレーター)と鈴木朝子さん、株式会社ナビタイムジャパンの笹谷和美さん、株式会社 LIXILの西脇彩さんの4名。
彼女たちはこれまで、どのような不安を感じ、乗り越えてきたのか。セッション内容の一部をお届けしよう。

アトラシアン株式会社
シニアマーケティングマネージャー
朝岡 絵里子さん
外資系BIツールベンダーや複数の外資ソフトウェア企業でのSE、プロダクトマネージャー、プロダクトマーケティング、ビジネス開発担当を経て2014年にアトラシアン入社。国内パートナービジネスの立ち上げ後マーケティング担当に。2人の男児の母

株式会社ナビタイムジャパン
ASP PJ・プロジェクトマネージャー
笹谷和美さん
2017年にナビタイムジャパンに中途入社し、バスデータの整備やBtoCサービスのマーケティング施策担当に。2019年よりナビタイムジャパンの全サービスで利用するAPI基盤開発に従事し、現在はマネージャーを担当

株式会社 LIXIL
デジタル部門 セールス&マーケティング デジタル推進部
西脇 彩さん
2018年に15年勤務した楽天グループ株式会社を退社し、LIXILへ入社。プロダクトオーナーとしてマーケティング部門のデジタル化を担当している。小学生になる息子がいる

アトラシアン株式会社
カスタマーサクセスマネージャー
鈴木朝子さん
インターネットサービス企業でエンジニアとして開発業務に携わり、2018年にアトラシアン入社。現在はカスタマーサクセスマネージャーとしてアトラシアン製品の導入・運用支援を担当
「やっぱり不安」ライフステージの変化に感じること

以前、全国のエンジニアに「今後のキャリアで不安なこと」をテーマにアンケートを実施したところ、女性は3位に「ライフステージの変化が、キャリアや仕事のパフォーマンスに悪影響を与えないか」が挙がりました。
パネリストの皆さんは、これまでキャリアに不安を感じたことはありますか?
幸いなことに、挫折を感じるほどの大きな悩みは抱えたことはありません。
ただ、プロダクトマネージャーとして、「ユーザーの課題解決につながるプロダクトを作り続けることができるか」という点は常に考えていますね。
今担当しているプロダクトは、ユーザー層と自分の距離がそれほど離れているわけではないので困ってはいないのですが、ライフステージが上がるにつれてユーザーの価値観が理解しづらくなってしまうのは確か。
プロダクト開発の感覚が段々にぶってしまうのではという不安を感じることはありますね。
鈴木さん、笹谷さんはいかがですか?
サーバーサイドエンジニアだった頃は、不定期で深夜対応やアラート対応が必要になることがあり、「ずっと続けられる仕事ではないのかな」と悩むこともありました。
当時の職場にすごく優秀な女性エンジニアの方がいたのですが、その人も出産を機に他の職種に転身されていて。私もいつかそうしなきゃいけないのかな、と不安になりました。
私の周りでも、開発系のマネジメント業務をされている人の中で、出産後に復帰して活躍している女性はまだいなくて。
将来的に自分のライフステージが変化したとき、このまま働けるのかと不安になることはありますね。
「技術トレンド」のキャッチアップは、勉強会やウェビナーを活用
ITの世界は技術トレンドがめまぐるしく変わるので、そのキャッチアップや習得に苦労されて悩む方も多いと思うのですが、皆さんはどうですか?
確かに大変ですよね。個人的に一番役立つインプットの方法は、エンジニアが開催している勉強会に参加すること。
あとは、テック系のポッドキャストを聞いたり、情報発信をしているエンジニアのTwitterをフォローしたりして、隙間時間に学ぶこともあります。
私の会社(ナビタイム)では社内の勉強会が盛んなので、よく参加しています。
社内の勉強会だと業務時間内に実施することが多いので参加しやすいのですが、外部の勉強会だと時間を確保するのが大変で……。
なかなか参加できないのが今の悩みです。
私は社内外のプロダクトマネージャー同士で情報交換をするようにしています。
あと、勉強会に関していうと、オンラインで参加できるものはなるべく参加するようにしていて。夜でも自宅から参加ができるので、子どもがいても参加しやすく助かっています。
分わかります。私も最近はオンラインの勉強会にイヤホンをつけて参加しながら、フライパンを振っています(笑)
完璧なロールモデルはいない。複数の人から“いいとこどり”
IT業界のように、女性が少ない業界って、タフでパワフルな女性だけが生き残っていったり、メディアに出たりイベント登壇したりしているような気がしていて……。
そういう女性たちを見て「私には無理そう」「ロールモデルになる人がいないな」と思ってしまう自分もいるのですが、皆さんはいかがですか?
分かります。私もこれまでに「ロールモデルにしたい」と思う女性とは出会えていません。
「格好いい」と思える先輩はたくさんいらっしゃるのですが、自分とはかけ離れ過ぎていて、ちょっと「あぁはなれないかな」って思ってしまう。
私はそもそも「ロールモデル」という言葉が好きじゃなくて……。一言に女性エンジニアといっても、それぞれ置かれている状況が違うし、働いている環境も違う。
理想のロールモデルを探すよりも、「この人のここを真似してみよう」「この人はこれが上手だから参考にしよう」という感じで、いろんな人の良いとこどりをしていく方が自分には合っているのかな、って思います。
皆さんは、働く環境選びでどんなことを重視しますか?

企業文化は気になりますね。仕事内容が自分と合っていても、合わない人と、合わない環境で仕事を続けていくのは難しいと思うので。
私も会社を選ぶときは「人と合うか、合わないか」を一番大事にしています。ナビタイムに入社した決め手も、人の部分が大きかったと思います。
また、長期的な人生計画を立てたいと思っていたので「転勤がない」という点も重視しました。
すごく共感します。あと、経営者や会社のビジョンが何なのかも大事ですね。そこに共感ができないと、長く働き続けるのは難しいのかなと感じています。
今後も長く仕事を続けていくために、大切にしたいことは?
誰がどうしてきたかにとらわれず、自分らしい選択をすることですね。
また、そうした選択も、その時々の状況に合わせて自分がベストだと思いことを選んでいくことが大事。柔軟な頭で考え続けていかないとな、と思います。
私は今までがむしゃらに働いてきたタイプなのですが、ライフステージの変化を考えれば、「手を抜けるところは抜く」ということも時には大切にしていきたいですね。
女性の人生には、いろいろ大変なことも多いですけど、それだけたくさんのことを経験できるということで……前向きに考えて働いていけるといいのかなと思いました。
皆さん、今日はありがとうございました。
文/赤池沙希 編集/栗原千明(編集部)