15 JUN/2022

高まる「キャリアシフト」の必要性。「リスキリング」を仕事につなげるための三つのステップ【国家資格キャリアコンサルタントが解説】

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今、新たなスキルを学ぶ社会人の「学び直し(=リスキリング)」がとても注目を集めていることをご存知でしょうか?

6月7日、3年間で4000億円規模を投じて100万人の就労者を対象に「学び直し」を支援することが盛り込まれた、岸田政権下で初となる「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)及び「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」が閣議決定。国を挙げて学び直しを後押ししようという動きが見て取れます。

背景には、少子高齢化による労働人口の減少が急速に進み、産業構造が大きく変化するなか、一人一人が時代に即した新たなスキルを獲得する必要性が高まっていることがあるでしょう。

今回お話を伺った松下晴佳さんも、学び直しによって今までのキャリアとは異なる業界・職種にシフトした一人です。

学び直しで、未経験業界へのキャリアシフトに成功
「理想の働き方が実現できた」

レディースアパレルのカタログ通信販売会社の商品部で、約12年間にわたりファッション雑貨やライフスタイル雑貨の仕入れや販売に携わってた松下さん。彼女は現在、システムインテグレーション事業などを展開するIT企業で働いています。

松下さんが受講したのは、顧客管理のクラウドサービスとして知られる「セールスフォース(Salesforce)」について学べる『パスファインダー(Pathfinder)』というプログラム。

セールスフォースは中堅・中小企業から大企業まで、世界中で15万社以上が導入している顧客管理ツールなので、読者のみなさんの会社でも導入しているところは多いのではないでしょうか?

パスファインダーとは、セールスフォースの導入や運用スキルについて21週間のオンライントレーニングと試験対策、実務型総合演習を通じて学び、認定資格が取得できるというもの。

希望すればプログラムに賛同するパートナー企業への就業サポートまでを一気通貫で支援する、IT未経験者向けのDX人材育成プログラムです。

「業界未経験の私がIT企業で就労のチャンスを得られたのは、パスファインダープログラムで学んだおかげです。

今の会社はコアタイムのないフルフレックス制が導入されていて、働き方は基本的にリモートワーク。小学生の娘たちには『いってらっしゃい』『おかえりなさい』と声をかけてあげられますし、保育園に通う息子とも会話をしながらゆとりをもって送迎ができるのがうれしいですね」(松下さん)

「学び」を「仕事」につなげる三つのステップ

みなさんの中にも、「新たなスキルを学んでキャリアをシフトしたい」ーーそんな思いを持っていらっしゃる人がいるのではないでしょうか。

ここでは「学び直し」を仕事につなげていくうえで大切にしたい三つのステップをお伝えします。

ステップ1:今後のキャリアビジョンにそって学ぶ内容を考えよう

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今回お話を伺った松下さんがセールスフォースについて学びたいと考えたのは、前職時代の経験がきっかけのひとつでした。

前職で社内の働き方を改革するチームに入っていたこともあり、ITツールが働き方に与えるインパクトの大きさを実感していたという松下さん。しかし、自己学習では限界があったそうです。

「もともとIT業界に興味はあったものの、プログラミングやWEBデザインのような専門的スキルを短期間で身につけて転職をかなえるには、未経験者の私にとっては少し難しいと感じていました。

しかし、セールスフォースは、働く現場をより良くするためのツールなので、前職での経験と結び付けやすくて。その経験があると実務に入った後の現場で、DX導入の際に顧客が抱える課題を理解しやすいのではと思ったんです。

自己学習だけでなく、パスファインダープログラムを受講したこともあって、学習しやすかったですね」(松下さん)

学びを仕事に活かすのであれば、これまでやってきたことを振り返りつつ、今後やっていきたいことと重ね合わせて学びの内容を選んでいきましょう。

ステップ2:ライフスタイルにあった学び方を選ぼう

実は、双子の小学生と保育園児の3人のママでもある松下さん。

育児をしつつフルタイムで働く彼女にとって学び直しのハードルは高く、なかなか一歩を踏み出せなかったと言います。

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そんな中、今回のプログラムは完全オンライン開催。就業後の時間帯でもオンラインで本格的な講習を受けられ、そのうえ資格取得、就労支援までついている点に惹かれて応募したそうです。

対面かオンラインか、開催時間はいつなのか……。学ぶ時間や場所が自分自身のライフスタイルに合っているかどうかも、しっかり見極めたうえで学び方を決めていきたいですね。

ステップ3:市場ニーズのある学びにチャレンジ!

ひとことで「学び」と言っても幅が広いですが、「仕事につながる学び」という意味では、その学びが市場ニーズが高い内容であるかどうかが非常に重要です。

例えば、今回事例としてご紹介しているセールスフォースは、デジタル化が進む今、導入する企業が増えている一方で専門スキルを持つ人材は不足しています。だからこそ、これらのスキルを身に着けた人材の市場価値は非常に高まっているのです。

よって、学んで身につけたことが転職や新たな仕事獲得につながっていくのですね。

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人生100年だからこそ高まる「キャリアシフト」の重要性

人生100年時代、私たちはかつてない長寿の時代を生きていきます。

自身のスキルをアップデートし、時代の変化、そして自身の価値観やライフスタイルの変化にあわせて柔軟に軽やかにキャリアを「シフト」していくことは、これからの私たちにますます求められていくのではないでしょうか?

みなさんはどんな「キャリアシフト」をしてみたいですか? ぜひ一度考えてみてはいかがでしょうか。

田中美和

【この記事を書いた人】
Waris共同代表・国家資格キャリアコンサルタント
田中美和

大学卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現日経BP社)入社。編集記者として働く女性向け情報誌『日経ウーマン』を担当。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェントWarisを共同創業。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」理事