05 SEP/2022

「売りたい人ほど売れない」残念な真実。 営業のカリスマ和田裕美さんに学ぶファンベースで売る極意

営業職として働く女性の中には、「ノルマを達成しなきゃ」「商品を何とかして売らなくちゃ」という焦りを感じている人も多いのでは?

でも、そんな営業マインドにNOを突きつけるのが、営業のカリスマ・和田裕美さん。最新著『ファンに愛され、売れ続ける秘訣』(かんき出版)では、「売らないことで売れる」令和時代のセールスのあり方を伝えています。

和田さんが実践する、新しい時代の営業スタイルとは? ファンベースを使った営業の考え方や実践方法について、本書から一部内容を抜粋し、全4回にわたってご紹介します。

和田さん

作家/株式会社HIROWA代表取締役/都光華女子大学客員教授
和田裕美さん

事務職を経て、外資系教育会社に入社し営業職に。お客さまの98%から契約をもらう「ファンづくり」のスタイルを構築し、日本でトップ、世界142カ国中第2位の成績を収める。その後、独立し、“愛されて売れ続ける”人材を育成するコンサルタントとして、1300社以上、延べ34万人以上を送り出し、サポートし続ける。著書にベストセラー『成約率98%の秘訣』(小社)、小説『タカラモノ』(双葉社)、『人生を好転させる陽転思考』(ポプラ社)、18年目となる『和田裕美の営業手帳』(クラーケン)などがある

「売れる営業」ではなく「選ばれる営業」を目指そう

これからの営業の変化においては「フォロー」の割合を大きくしていくことが重要になってきます。

大企業であればテクノロジーを使った「カスタマーサクセス」を実施することが「フォロー」という定義になりがちですが、ここでお伝えしたいのは、それらを活用することがあったとしてもあくまでも主役は“人”ということ。心から相手の立場に立って共感しながら未来を想像することです。

当然ながら、ファンづくりにおいては「売れる人」ではなく「選ばれる人」が求められるようになります。そのために従来の価値観を変えることがとても大切になってきます。

余談になりますが、この変化に関しては私自身が「売れる営業」というテーマで本を書きセミナーを実施してきたので、はっきり言い切るまでに少し葛藤がありました。

しかし、売れる営業という言葉を使い続けることにじわじわと違和感が生まれ「売れる営業を育てて欲しい」という企業さまからのコンサルティング案件を「選ばれる営業育成」というテーマに変えてお受けするようになりました。

最近では、ご理解いただける企業さまが多くホッとしています。

さて、価値観を変えるとは、ルールが変わることを意味します。新規獲得が重要であれば、営業のルールは「結果重視」となります。それこそが、評価基準となり給与にも影響します。売れる人が高い評価を得るのです。

翻ってフォローが重要という価値基準であれば、営業のルールは「寄り添い重視」となります。感謝の声などを多くもらえる人が高い評価を得ます。

このようにルールが変化すると、企業として営業を育成する場合は採用時に選ぶ人も大きく変化します。もちろんボーナスなどの評価基準も変えていく必要があります。個人営業は自分の目標設定を変化させていく必要があります。

SNSのフォロワー数を増やすだけでなく、人間関係を構築していくことやすぐに売上にならないことでも、相手が喜んでくれることなら率先して行うなどです。最初はすぐに移行できないかと思いますが、ソフトランディングで価値観を変化させてください。

「売ろう」と思わずプレゼンしてみる

とはいえ、「売ろう」とする意識はなかなか消えないかもしれません。しかし、それがないほうがずっとプレゼンがうまくなってしまうのです! 

私のセミナーではセールス研修のワークで「他人の商品をプレゼンする」ということをやってもらっています。

ペアになってまずは5分くらいに短縮した自分のプレゼンを相手に見せ、その後それを見た人がそのまま聞いたことをマネて即興で同じプレゼンをやってみるというものです。

たとえば、不動産の営業の人と化粧品メーカーの営業の人がペアになったら、日頃は物件を売っている人が「このシリーズのスキンケアがお勧めです」などとプレゼンします。

こわもての人が笑顔で化粧品の話をしているなんてあまり見たこともない光景だし、今まで化粧品に興味のかけらもなかった人に話せるのか? という疑問が湧くかもしれませんが、そこで意外なことが起こるのです。

たったの5分聞いただけなのに、みなさんびっくりするくらいうまい。へたをするとマネをされた人よりも説得力があるのです。

しかし、なぜ他人の商品だと上手にプレゼンテーションができるのか? それは“他の人の商品で売れなくても困らない商品”だからです。

売ろうとしていないのでプレッシャーがなくただ楽しく説明できる。ノルマがないので無邪気に商品のいいところだけを純粋に伝えることができるからです。

つまり「売らなきゃ」「契約を取らなきゃ」という心理がなくなるだけで、プレゼンテーションがうまくなるということです。

このワークをやってみて、みなさん「ただ純粋に勧める」ことを忘れてしまっている自分に気づきます。心理状態が違うだけでこうも伝える言葉が変わってくる。

「売りたい」という感情がいかに邪魔しているかということになります。もちろん、営業が「売りたい」気持ちをゼロにすることなんてできません。だから、私はここでも価値観を変えて伝えていこうと思うようになりました。

今、目の前にいるお客さまが未来もずっと買ってくださるために、やることを考えてみる。100%言えることは「未来において目の前の人が幸せになっていること」となります。

そう考えてみると「売りたい」という感情は「幸せになって欲しい」という感情にチェンジしていくのです。

お客さまが幸せになることをゴールに設定する

また、「売りたい」という感情を「幸せになって欲しい」という感情にシフトするためには想像力を使う必要があります。

なぜなら、「売りたい」は自分ごとであり、目先のことに意識を向けた感情ですが、「幸せになって欲しい」は相手ごとであり、1年後、2年後……と続く未来に意識を向けた感情だからです。

● この人(会社)は今、どういう状態で、今後どうなりたいのか? と想像する
● どうなっていくことがこの人(会社)の幸せな状態なのか? と想像する
● 私(弊社)はどうしたらお役に立てるだろうか? と想像する

これらを言葉で伝えていく。今までのセールスにあった「商品ではなくベネフィットを売る」というスタイルと似ている気がします。

ただ、根底にどのような価値基準があるかによって、意味合いが変わってきます。「ベネフィットを売る」などのマーケティング手法では、あくまでも「契約をとる」ことにゴール設定をした“誘導”になります。

しかし、ファンづくりでは「お客さまが幸せになる」ことをゴール設定とした“寄り添い”なのです。

もちろん、もともとコミュニケーション能力が高い人であれば、どちらのゴール設定でも問題ないのかもしれません。

ただ、少しでも焦ってしまうとお客さまに「売りたい」という心が透けて見えるので「この人を選びたい」という気持ちになってもらえないのです。

だからこそ、想像力を使って「売りたい」感情を「幸せになって欲しい」に変えるのです。

お客さまの幸せのために、自分の本心を伝える

ある時、「(和田さんの)どのセミナーに参加したらいいのかわからない」という方からの問い合わせのお電話が事務所にありました。

たまたま、私も事務所にいたのでお話ししてみたくなりスタッフに電話をかわってもらったのですが、私との電話を切った後、その人はすぐにネットから申し込みをしてくれたのです。

「そりゃあ、本人と話したら断り切れないよね」と思うかもしれませんが、私はまったく売りたいと思っていませんでしたし、それよりも悩む理由を聞いてあげたいなと思ったのです。

私は相手の方から普段の仕事状況などを聞いた後にはっきりと言いました。

和田「今の○○さんのお仕事でしたら、このセミナーはあまり必要ないかもしれないです。もったいないし、今はやめておきましょう」

これは本心でした。私が彼の立場だったらと考えての答えだったのですが「必要ない」「無理はしないで」と言えば言うほどに、「……でも僕には将来的に必要かなと思ったんで」と言われるのです。

それならと、私は自分の本音を伝えました。

和田 「本音を言うと、私は○○さんが受講してくださると嬉しいです。そして、私は払ってもらった時間とお金の何倍も返していきます。

絶対に幸せになって欲しいと思っているからです。ただ状況から考えて、今は無理しないで、できるタイミングでいいんじゃないですか? いつでも〇〇さんをお待ちしています」

この言葉のなかにクロージングはないように思います。

私の内面では「売りたい」という感情よりも「幸せになって欲しい」という感情が上にきているんです。

ただ、このお客さまは数年間、私の無料のメルマガを読んでくださっている方。そう、すでちょっとファンになってくれていたのです。

メルマガ上ではありますし、対面したこともないけれど、ずっと温めてきた関係があったからこその結果となりました。


次回の記事では、ファンベースで売る営業職にとって大切な「言葉の選び方」について紹介。お楽しみに!

書籍紹介

イメージ

『ファンに愛され、売れ続ける秘訣』(かんき出版)
営業のカリスマ和田裕美が新しい時代の営業の極意を、佐藤尚之氏が提唱するファンベース®を元に紹介!

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