【前田敦子】菊池風磨と怒濤の大げんかシーンに挑戦! 20代のこじらせ期を振り返る「ジタバタするのは仕方ない」
働く女性にとって恋愛ってどういうもの? そう尋ねると、前田敦子さんは少し悩んだ後、まるで今までの失敗も悩みも笑い飛ばすように、こう言った。
まあ、恋愛って大変ですよね。恋愛をしていると幸せな気持ちにもなれるし、恋愛でしか埋まらないものも確かにある。
でも基本的には、ちょっと面倒くさいものだと思っちゃいます(笑)
なんて正直で、なんて気持ちいい人なんだろう。でも、前田さんがこんなにはっきりと自分の本音を言えるようになったのは、散々もがいた日々があったから。
仕事に、恋に、女性の20代は忙しい。「たくさん失敗をしてきた」という前田さんは、20代女子の“こじらせ期”をどう乗り越えてきたのか。悩み多き20代の突破術を教えてもらった。
「ブチギレ修羅場は、演じていて爽快でした」
女子は絶対にみんなそれぞれヤバいところを持っていて、特に恋愛みたいなプライベートゾーンは絶対にそう。
それがないって人はうそつきだと思います(笑)
根本(宗子)さんはそこを隠さず思い切り前面に出しているから、観ている人も共感を得られるんでしょうね。
そう前田さんが語ったのは、2022年10月14日(金)公開の主演映画『もっと超越した所へ。』について。人気劇作家・根本宗子による同名舞台の映画化だ。
なぜか毎回クズ男を引き寄せてしまう女子たちによる、イタくて、面倒くさくて、でも最高にテンションがぶち上がる暴走ハッピーストーリー。
前田さんはヒモ男・怜人(菊池風磨)に沼る、衣装デザイナー・真知子を演じている。
怜人は今時のヒモ男。私の身近にはなかなかいないタイプというか。新世代のダメ男かなと思いました。
束縛強めの怜人は、ブラジャーを着けずに外出しようとする真知子をいさめるなど、ちょっとしたところで真知子の行動に制限をかけてくる。
あの束縛の仕方は嫌ですよね。
母性本能がある人の場合、束縛はうれしいところもあると思うんですよ。
でも、怜人のあの疑いにかかるみたいな言い方は嫌。
そこ気にするんだっていうイライラもありましたね。どうでもいいじゃん、みたいな。
束縛は強いくせに、生活費は出さず、いつの間にか真知子の家に転がり込み、なし崩しで同棲を始めようとする怜人。
胸に積もった違和感はやがて膨らみ、怒りとなって爆発する。「恋愛体質の女たち VS クズ男たち」のブチギレ修羅場は、本作の大きな見どころだ。
クズ男たちが素直に「ごめんなさい」を言えないせいで、どんどんわけの分からない方向にひねくれていく。
真知子はそこを力技で追い込んでいくので、演じている方としては爽快でした。
そこで改めて感じたのが、女性たちのリアルな本音を切り取る根本宗子のせりふの力。
「こんなこと言わないでしょ」というせりふが一つもないんですよ。だから演じていてすごく楽しかったです。
まあ、風磨くんは「嫌だな、このシチュエーション」ってボヤいてましたけど(笑)
怜人を演じた菊池風磨さんとの怒濤の掛け合いが、観客をくぎ付けにする。
風磨くんはずっと明るいんですよ。
人生で落ち込んだことが一回もないって言ってて。そのメンタルがすばらしいなと思いました。
その人間性で、周りをハッピーにしていく人なんだろうなと。
撮影中もすごく楽しそうで、かわいい弟を見ている感覚になりました。
恋愛は自分の状態を表すバロメーターなのかも
どう見たって幸せになれそうにもない恋愛にハマり、メンタルが削られるのは、20代の“通過儀礼”とも言える。
周りに恋愛している子がたくさんいるんですけど、みんな絶対もめてます(笑)
そう話す前田さん。「働く女性にとって恋はエネルギー」なんて甘い言葉が雑誌にはよく並んでいるけれど、前田さんは「そこに関しては、私はもうすっかり現実的です」と笑う。
私はもう人の恋愛話を聞いているだけでおなかいっぱい。
そう考えると、恋愛できるのって元気な証拠かも。
恋愛に気持ちが向いているかどうかは、自分のコンディションを表す一つのバロメーターと言えるかもしれないですね。
恋愛に限らず、仕事とプライベートのバランスを取るのは難しい。前田さんもまた、20代はスイッチの切り替えに苦労する日々を過ごした。
私がいわゆるプライベートというものを手に入れたのは(AKB48を卒業した)21歳の時。
遅咲きだった分、そこからは苦労しました。仕事とプライベートをうまく切り替えられず、ちぐはぐな感じで。
でも、そういう経験を20代でやっておいてよかったなと思います。
「もう全部ダメだ!」と思うこともあったけど、それを越えたら、もう楽しいだけになったので。
前田さんのからっとした笑顔がまぶしい。どうすればこんな風に笑える境地にたどり着けるのだろうか。
正直、これといったきっかけがあったわけじゃないんです。
ある日突然、「あれ? 大丈夫だ」という時がやってくる。
そういう「あれ?」をたくさん積んでいくことで、分かったんだと思います。
結局、時間が解決してくれるんだなってことに。
どんなに今がつらくても、やがて時が過ぎれば、全部忘れられる。そう気付いたことで、不毛な悩みを手放せるようになった。乗り越える強さを手に入れた。
20代ってどうしたってメンタルの浮き沈みが激しい時期。
焦ったところでそう簡単に乗り越えられるわけでもないし、ジタバタするのは仕方ないと思います。
ただ、その真っただ中にいる人にもし言えることがあるとすれば、緊急避難先を持つことって大事です。
私の場合は、プライベートの友人たち。仕事でうまくいかなかったときも、失恋したときも、友人を家に呼んで、愚痴って、とことん甘えまくっていました。
そういう避難先があったから、あのギリギリの毎日をなんとか踏みとどまれたところはある気がします。
「仕事は、続けたもん勝ち」
気付けば、この世界に飛び込んで17年が過ぎた。2020年には独立を果たし、現在はフリーランスとして活動している。長く仕事を続けていく上で大事にしていることは何だろうか。
仕事って、やってる間はつらいときもあると思うんですよ。でもつらいまま終わってしまうとよくない。
そういう経験がどんどん積み重なっていくと、どこかで自分を保てなくなってしまいますよね。
大事なのは、仕事の中でいかに自分が楽しいと思える場所をつくれるか。のめり込みすぎてもよくない。
仕事との良い距離感を見つけることが、フラットに長く働く方法なんじゃないかな。
自らのことを「全然器用ではない」と明かす前田さん。何をするにしても、特に最初はつまずいてばかり。スロースターターだと自己分析している。
だから、ある程度辛抱をする期間はしょうがないって割り切ってました。
いっぱい失敗して、たくさん経験して、その中でやっと自分なりに納得できる答えを見つけられるのが私の生き方。
その分、途中で諦めることだけはしないようにとも思ってました。
何事も終わりよければ全てよし。仕事は続けたもん勝ちだって、今も思っています。
そう言える明るさに、数々の試練を乗り越えてきた人の強さがにじみ出る。
今年でデビュー18年目ですけど、その間の15年くらいはずっともがいてましたね。
楽になったのは、ここ2~3年です。
「大きかったのは、やっぱり子どもを産んだこと」と前田さんは続ける。
それまでは仕事とプライベートの比重が偏って、どちらかしか手がつかないこともあったんですけど、子どもを育てるという絶対的な使命ができたことで、どっちもやらざるを得なくなった。
おかげで時間の使い方がうまくなったし、どんなに忙しくても最終的には自分の責任だからと腹を決められましたね。
私の場合は出産だったけど、何が転機になるかは人それぞれ。
でもいつかトンネルを抜ける日が来るのだけは確かだって思います。
そう言って、31歳の“あっちゃん”はまた笑った。前田敦子は、年齢を重ねるたびに、どんどん笑顔が似合う女性になっている。
こじらせ20代のときに支えになったのが、「30代は楽しいよ」という先輩たちの言葉でした。
だから、今苦しいのはしょうがないと思って20代の頃はやっていたし、実際、30代になったら本当に人生が楽しくなった。
もしあの頃の私に何か伝えられるとしたら、「30代は本当に楽しいよ。だから信じて、今は思い切りこじらせて」と言ってあげたいですね。
先が見えない不安も、手に負えない恋の痛みも、今を生きている証拠。その全てを跳躍台にして、私たちはいつか突破する、もっと超越した所へ。
だから、今は思い切りジタバタしよう。こじらせた分だけ、私たちは笑顔が似合う女性になるのだ。
取材・文/横川良明 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER) 編集/天野夏海
作品情報
映画『もっと超越した所へ。』(配給:ハピネットファントム・スタジオ)10月14日(金)全国公開
<あらすじ>
家に転がり込んできたストリーマーの怜人(菊池風磨)をつい養ってしまう衣装デザイナー・真知子(前田敦子)。意味不明なノリで生きるフリーター・泰造(オカモトレイジ)と暮らすショップ店員・美和(伊藤万理華)は泰造に絶大な信頼を置いている。プライドばかりが高く、承認欲求の塊である俳優の慎太郎(三浦貴大)のお気に入りである風俗嬢の七瀬(黒川芽以)は今日も淡々と仕事をこなす。父親の会社で働くボンボンで自己中心的な富(千葉雄大)と共同生活を送る子役上がりのタレント・鈴(趣里)は世話をするのも楽しそう。それなりに幸せな日々を送っていた4組のカップルに訪れた、別れの危機……。
ただ幸せになりたいだけなのに、今度の恋愛も失敗なのか? それぞれの”本音”と“過去の秘密”が明らかになる時、物語は予想外の方向へと疾走していく! 彼女たちは、自分なりの幸せをつかみとれるのか? 驚きの仕掛けが待ち受ける、ブチ切れ&ブチ上がりの恋愛バトルが爆誕!
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■配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2022『もっと超越した所へ。』製作委員会