14 OCT/2022

約8割の女性が実は「学び直し」経験あり? 時間がない・学びたいことが分からない女性のためのリスキリングの始め方【田中美和】

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皆さんは、「リスキリング」という言葉を聞いたことはありますか?

2022年10月に招集された臨時国会の所信表明演説で、岸田首相が個人のリスキリング(学び直し)の支援に5年で1兆円を投じると表明し、話題になっています。

しかし、政府やメディアの盛り上がりとは裏腹に、「リスキリング」という言葉自体はまだまだ一般には浸透していないのが実情なのではないでしょうか?

私が共同代表を務めるWaris(ワリス)が先日発表した「女性のリスキリング白書2022 ~就業形態別のリスキリングに関する調査レポート~」(以下、「女性のリスキリング白書」)では、「リスキリング」という言葉の認知率は38%という結果になりました。

リスキリング白書

今回は、「女性のリスキリング白書」の調査結果とともに、女性たちから寄せられたリスキリングに関する悩みを解消する方法を三つのポイントでご紹介します。

リスキリングの必要性は高まっている

経済産業省の審議会資料では、「リスキリング」とは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」だと説明されています。

また、「デジタル化と同時に生まれる新しい職業や、仕事の進め方が大幅に変わるであろう職業につくためのスキル習得を目指すことが増えている」との言及も。

Warisでまとめた「女性のリスキリング白書」では、「リスキリング」という言葉の認知度は38%だという結果が出ましたが、学び直しや自己啓発の実施について聞いてみると、全体(調査対象:443人)の78%が「リスキリングを実施している」という結果が出ています(下図)。

リスキリング白書

この結果を見ると、「リスキリングという言葉は知らなかったけれど、学び直しは実践していた」という女性が多いことが分かります。

ちなみに、リスキリングにかけている時間や費用を見てみると、全体の56%が月間10時間未満、55%が月間1万円未満となっています(下図)。特に正社員として働く人は、リスキリングにかけている時間は短いという結果になりました。

リスキリング白書
リスキリング白書

では、なぜ女性たちはリスキリングを行っているのでしょうか?

「リスキリングを実施している」と回答した人にその理由を聞くと、7割近くが「仕事の領域を広げたいから」と回答。その他、「必要とされるスキルの変化に対応していきたいから」「より高度な仕事をしたいから」と回答した人もそれぞれ半数以上という結果になりました(下図)。

リスキリング白書

リスキリングを行えない理由は? 解決する方法を三つご紹介

一方で、リスキリングを行っていない人たちにその理由を聞くと、「時間が足りないから」(51%)、「何を勉強したら良いのか分からないから」(45%)、「どのように勉強したら良いのか分からないから」(35%)といった回答が上位を占めていました。

リスキリング白書

新しいスキルを身に付けたり、今のスキルを磨いたりしたいという意思はあるものの、さまざまな理由でリスキリングを行えていない人も多くいるようです。

また、今回の調査を行った際、下記のような悩みが女性たちから数多く寄せられました。

●「フルタイムで仕事をし、かつ育児もしながらのリスキリングは業務に関係あるかないかに関わらず、時間を確保するのがとても難しいと感じる。職場で業務の一環としてリスキリングを求めるのであれば、そこに充てる時間を業務時間として認めてほしい」(30代、正社員)

●「選択肢は無限にあるので、勉強するものを探したり、選択したりするのが難しいと感じる」(40代、非正規雇用)

では、こうしたリスキリングに関する悩みをどのように解決していったらいいのでしょうか?

私がお薦めする方法を三つご紹介します。

リスキリング白書

方法1)社内プログラムを活用する

「時間が足りない」というのは、リスキリングに関する悩みで最も多いものです。

たしかに、仕事や家事、育児の合間を縫って新しいスキルを学ぶのはなかなか大変ですよね。大学や大学院で学び直しするのも、さまざまな事情で難しい方も多いでしょう。

しかし最近では、会社が従業員に対してリスキリングのプログラムを提供するケースが増えてきています。もし勤務先にそのような制度があれば、就業時間中に学ぶことができるので、帰宅後に学びの時間を確保できない人はぜひ活用してみてください。

方法2)オンライン講座やYouTubeなどを活用する

さらに、最近ではオンラインで学習できるサービスも増えています。

例えば、『Udemy』(ユーデミー)や、『Schoo』(スクー)など、オンラインでプログラミングやマーケティング、データサイエンスなどについて学べるサービスも出てきているので、こうしたサービスを活用してみるのもいいでしょう。

リスキリング白書

また、皆さんご存じの動画配信サービスYouTubeでも、動画編集やデジタルマーケティングの基礎などさまざまな講座がアップされていますよね。

「どこで、どのように学ぶのか」も皆さんが気にされる点ですが、必ずしも対面で学ばなければいけない理由はありません。オンライン講座や動画サービスなどもうまく活用していきましょう。

方法3)「何を学ぶか」は将来のキャリアビジョンから逆算する

また、「何を学んだら良いのか分からない」という悩みを持つ人の中には、「会社指示のリスキリングプログラムで学んだが、自分にはまったく関心のない分野でつらかった」という人もいました。

一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事の後藤宗明さんは、著書『自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング』(日本能率協会マネジメントセンター)で、リスキリングとは「新しいことを学び、新しいスキルを身に付け実践し、そして新しい業務や職業に就くこと」だと述べています。

ポイントは「新しい業務や職業に就くこと」。ただ学ぶだけで終わってしまうなら、「リスキリング」とは言いません

ですから、自分自身が今後どんなキャリアを歩みたいのか、どんな職業(業務)につきたいか、ある程度明確にイメージしたうえで、そこに足りないスキルを学ぶ(リスキリング)するようにしてみましょう。

リスキリング白書

人生100年時代、いきいきと働き続けるためには自分のスキルをアップデートし続けることが求められています。

前述の後藤さんの著書では「リスキリングは永遠に終わらない旅」という言葉が紹介されていましたが、まさにその通りであると思い胸に響きました。

皆さんはどんなリスキリングに挑戦したいですか? 学び直しに一歩踏み出せずにいる人に、今回紹介した三つのポイントを参考にしていただけたらうれしいです。

田中美和

【この記事を書いた人】
Waris共同代表・国家資格キャリアコンサルタント
田中美和

大学卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現日経BP社)入社。編集記者として働く女性向け情報誌『日経ウーマン』を担当。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェントWarisを共同創業。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」理事