09
JUL/2015

「異物を排除したいのは当たり前」“男性エステティシャン”が女性顧客から支持される理由

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「異物を排除したいのは当たり前」“男性エステティシャン”が女性顧客から支持される理由
さまざまな仕事で女性の積極活用が行われるようになり、女性の働き方は変わりつつある。とはいえ、まだまだ男性比率が高い職場が多かったり、職種によっては「男性の仕事」という世間のイメージが根強く残っていたりと、少数派であることに息苦しさを感じている人は多いもの。そんな人は逆に、女社会でマイノリティーとして働く男性の仕事観を覗いてみては? 紅一点ならぬ「白一点男子」の姿から、今の職場で前向きに働いていくためのヒントが見つかるかも!

「異物を排除したいのは当たり前」“男性エステティシャン”が女性顧客から支持される理由
エステティックサロンCradle
オーナー・セラピスト
土岐 忠さん(32歳)
体を癒す仕事に興味を持ち、整体院、リラクゼーションサロンなどで修業。その後、女性向けエステティックサロン2社の勤務経験を経て、2010年に独立。女性専用サロンとして、オイルマッサージから痩身まで多様な施術メニューを展開する。プライベートでは昨年、結婚。HP:http://cradle.cx/index.html

「技術を学びたい!」その一心で
女性向けエステティックサロンの世界へ

さわやかな笑顔と穏やかな佇まい。土岐忠さんは女性専用のエステティクサロン、Cradle(クレードル)のオーナーだ。エステティシャンとして、自らフェイシャルやボディーのオイルマッサージ施術を行っている。

もともとは体を癒す技術に興味を持ち、指圧・マッサージ業界に足を踏み入れたという土岐さん。リラクゼーションサロンで働く中でオイルマッサージに出会い、そのリラクゼーション効果の高さに関心を抱いた。

「技術の学校に通いましたが、もっと勉強したくて、ダメもとでエステティックサロンの求人に応募したんです。もちろんお客さまも女性、施術を行うエステティシャンも女性のサロンでしたから、男性が応募してきたことにかなり驚いていました。まさかの採用となり、僕自身もびっくりしましたが、『あまり男性っぽくない雰囲気だからOK』と(笑)」

「男性である自分を、女性のお客さまが受け入れてくれるのか」、「自分にそのつもりはなくても、不審な目で見られるのではないか」。そんな迷いや不安もあったが、技術を学びたい気持ちが勝ち、入社を決意した。

「当初は、先輩エステティシャンたちの『男が施術して大丈夫なの?』という視線を痛いほど感じました。また、お客さまも施術中に体を見られたくないという方が多く、半数以上が『女性に代わってほしい』という反応でしたね」

「男だから」が理由のトラブルはゼロ
真剣さは施術で伝わる

「異物を排除したいのは当たり前」“男性エステティシャン”が女性顧客から支持される理由

そんな中でも土岐さんは「つらいと感じたことはなかった」と話す。その背景にはこの世界に飛び込む上での“覚悟”があった。

「そもそも男性がマイノリティーな業界に入ったわけですから、拒否反応があるのは当たり前。『とにかく一生懸命やるだけだ』と思っていました」

サロンで働き始めた土岐さんは、誰よりも早く出勤し、掃除や雑用を率先して行った。施術について先輩から指摘されたことは全てメモを取り、次までにできるように努力を続けていく。

「次第に先輩たちにもかわいがってもらえるようになりましたし、お客さまの中には男性であることを珍しがってくださる方もいました。会話が弾んでリピートにつながることも増え、うれしいことに半年後には予約が埋まるようになりました」

「現在まで、『男だから』という理由でトラブルになったことは一切ありません。お客さまの中には、『過去に男性エステティシャンの施術で手つきが怪しいと思ったことがあった』という方もいます。ですが本来、技術に集中していればそんなことを考える余裕はありません。実際のところ、真面目に施術をしていない場合、手技やトリートメントの内容で伝わるもの。これは、独立後にスタッフを募集した時、自ら実感したことでもあります。男性の応募者の技術チェックをする際に実験台になりましたが、過去にどういう施術をしてきたのかすぐに分かりましたから」

男性エステティシャンが異物である以上、
努力をするのは当たり前

土岐さんはさらにもう1社のサロンで技術を磨き、その後独立。当初は予約がゼロの日もあったが、口コミでその技術が評判となり、やがて女性誌やWEBサイトからの取材申し込みも増えていった。

こうして半年後には黒字化。現在は常に予約でいっぱいの人気店になった。最近2人の女性スタッフが新しく加わったが、現在も土岐さんは毎日4~5人へ施術を行う。

「マスコミ取材のおかげもあり、男性であることを理解した上で予約してくださることがほとんどです。物珍しがって来てくださる方も多いので、それが最大のメリットだと思っています。女性と男性、それぞれが思う“スタイルがいい”は違いますから、両方の視点からアドバイスができるところも強みですね。世の中には太っていると思い込んでいる女性が多いので、必要のない施術については説得し、お茶とお話だけでお帰りいただくこともあります」

居心地の良さを最優先に考え、次回予約を無理に勧めないのはもちろん、住所などの個人情報の登録も一切求めないという土岐さん。高い評価を得てきたのは、そうした細やかな配慮もあってのことだ。

「男性だからと色眼鏡で見られたり、不当な評価をされることも時にはあります。だからこそ女性エステティシャン以上に一生懸命やらねばならないところはありますが、それを苦労だと感じたことはありません。異物が入れば、排除したい気持ちになるのは当然のことですし、それなら自分で排除されないよう努力し、気遣いをするのも当然のこと。腐らず、それを受け止めて前向きに努力を続ければ、必ず見ていてくれる人がいるものですし、一度評価されたら、むしろ異物だからこそ注目してもらえるようになります」

今後はスタッフ教育にも注力し、「お客さまに喜んでいただけるエステティシャンを1人でも多く増やしていきたい」と語る土岐さん。マイノリティーであることを正面から受け止め、壁を超える努力をいとわなければ、その“性差”は大きな武器に変わると言えそうだ。

取材・文/上野真理子 撮影/柴田ひろあき

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