03 NOV/2022

転職で有利になる資格は? 「スキルなし」女性の悩みにキャリアアドバイザーが回答【働く女の「はじめての転職」お悩み相談室】

キャリアアドバイザーが回答!
働く女の「はじめての転職」お悩み相談室

「どうやったら転職はうまくいく?」「私に向いている仕事って何?」はじめての転職には悩みや迷いがつきもの。長く自分らしく働き続けるための転職のコツを、キャリアアドバイザーが伝授!

「手に職」という言葉が一般的になった今、「自分の手に職ってなんだろう?」と悩んだり「手に職をつけなきゃ」と焦ったりする女性は多いのでは?

今回は、転職したいけどスキルがない……という自分を変えるために資格取得を考えている女性からの相談に、株式会社キャリエーラ代表の藤井佐和子さんが答えます!

株式会社キャリエーラ 代表取締役 藤井佐和子(ふじい・さわこ)さん

<プロフィール> 株式会社キャリエーラ 代表取締役
藤井佐和子(ふじい・さわこ)さん

大学卒業後、カメラメーカー海外営業部にて3年半従事、その後、前職インテリジェンス(現:パーソルキャリア)では、創業期の1994年から8年間派遣事業部と紹介事業部の立ち上げに携わる。2002年株式会社キャリエーラを立ち上げ、キャリアコンサルタントとして1万7000人以上のカウンセリングを行う

今回の相談

相談者
(事務職/27歳)

初めての転職を考えているのですが、手に職がなく、自分の強みと言えるようなスキルがないので不安です。

そこでまずは資格を取ろうと思っているのですが、転職で有利になる資格は何でしょうか?

藤井さんの回答

・お勧め資格は「簿記」「IT関連」「介護士」「ペット関連」
・まずは「実務経験を積む」手も
・アウトプットより先に情報収集を増やすこと

資格を取得すること自体を目標にせず、「理由」と「目的」と明確に

まず前提として、「絶対にこれがオススメ!」という資格はありません。なぜなら、歩みたいキャリアによって、どんな資格が必要かも異なりますから。

では、どういう考え方で資格を選べばいいのか。まずは、「なぜ資格を取得したいのか」を明確にすることが必要です。

求めているのが「今の仕事に生かせる資格」か「キャリアチェンジできる資格」かによって、取るべき資格も変わってきます。

相談者さんは転職のために資格取得を考えているとのことだったので、今と同じ事務職で転職する場合と、別の職種にキャリアチェンジする場合と、それぞれ例を挙げてみましょう。

■事務職で転職する場合

・簿記
・Webやシステム系の資格

現職の経験を生かして事務のスペシャリストを目指すのであれば、簿記を取得するのがスタンダードです。ほかには、社会保険労務士の資格なんかも相性がいいですよ。

※社会保険労務士…主に企業の労働社会保険の業務を代行する。社会保険労務士法に基づいた国家資格を取得する必要がある。
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また、何らかの専門知識を持っていると市場価値がぐっと上がるので、事務業務で使うツールの資格や、IT・Web関連の資格もおすすめです。

例えば、MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト、※1)は事務能力の証明になりますし、ITパスポート(※2)や基本情報技術者といった国家資格を取得するのもいいでしょう。いまや多くの企業が自社ホームページを持っている時代ですから、企業のWebサイトの管理者であるWebマスターを目指すのも選択肢の一つです。

※1 国際資格の一種で、マイクロソフト社製のオフィスソフトであるWordやExcelなどの使用スキルの証明となる資格。

※2 ITに関する基礎的知識を証明する、経済産業省認定の国家資格。情報処理技術者試験のうちの一つであるが、その中では最も易しい。

■未経験の職種にキャリアチェンジする場合

・介護士
・ペット関連の資格

未経験からキャリアチェンジがしやすいのは、人手不足の業界です。例えば、介護業界などですね。実務経験がなくても、介護士の資格を取得していれば選考時に有利になるケースが多いでしょう。

また、最近は動物介護士やドッグセラピストといったペット関連の資格を取る方も増えています。「子どもよりペットの数の方が多い」とさえ言われている現在、業界全体の採用ニーズが高まっているのです。

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いくつか例を挙げましたが、個人の適性にあわせて資格を選ぶことも大切です。

勉強を進めていく中で適性に気付くこともあるので、気になる資格がある場合は、まずはテキストなどを手に取ってみてはいかがでしょうか。

転職では「経験」が重要。資格にこだわり過ぎない方がベター

ただ、注意したいのは、「資格があれば必ず転職できる」わけではないということ。中途採用において、多くの企業が求めているのは「即戦力」。資格はあくまでもプラスアルファの評価という位置づけです。

実際に、「資格を持つ未経験者」よりも「資格はないけど実務経験がある人」が選ばれるケースも多いのです。

例えば、いま人気の資格の一つにキャリアコンサルタントがありますが、転職エージェントに勤めている方全員がこの資格を持っているわけではありません。

なので、最初から資格取得を目指すのではなく、アシスタントとして実務に携わりながら、並行して資格を取るための勉強を進めるのも良いと思いますよ。

私のところに相談に来る方を見ていると、転職のために「まず資格を取ろう」と考える方は、失敗を恐れる傾向があると感じています。

自分のスキルに自信がないため、武器を持つために資格を取ろうとする。もちろん、それも悪いことではありませんが、まず考えるべきなのは、「自分はその資格を使う仕事に向いているのか」「資格を取れば希望する仕事に就けるのか」ということ。

その点を調べた上で資格を取らないと転職もうまくいかず、「やっぱり私はダメなんだ」とさらに自信を失う結果になりがちです。

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もしくは、「あんなに頑張って取った資格なんだから生かさなきゃ!」と、無理に狭き門をくぐろうとして、結局失敗してしまう人も少なくありません。

せっかくお金と時間をかけて資格を取ったのに、転職もうまくいかず自信も失ってしまうのは、すごくもったいないですよね。

まずは情報収集を優先で職場以外の環境にも踏み出して

また、転職前に資格取得を考える人の中には「そもそも何をしていいか分からない」という状況であるケースも少なくありません。相談者さんも、そうなのではないでしょうか?

特に事務職の場合、関わるのが社内の人に限定されることも多い。すると、視野が広がりにくいんです。

なので、ぜひ職場以外からも情報を取り入れてほしいと思っています。おすすめするのは、ビジネススクール。ビジネススクールとは、人材マネジメントやマーケティング、ファイナンスなどビジネスに関する知識を学ぶ場所です。

最近ではオンライン受講できるものも増えてきましたが、対面での受講がより効果的ですね。

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ビジネススクールにはいろいろな会社や職業に就いている意識の高い方が通っているので、そのような人たちとの交流することで、良い刺激を受けられるのです。

いろいろな人の話を聞くことで、「私も新しいチャレンジができそう」と思えるかもしれませんし、「私には今の会社が合っている」「今の会社でできることがまだある」という結論に至るかもしれません。

交流会も盛んに開催されていますが、参加してもあまり成果を得られなかったという人は実は少なくないんです。

なぜなら、そこに参加している人は「何か新しい情報を得たい」と思っている方がほとんどだから。自分もその人たちに与えられる情報を持っていないと、なかなか交流が難しいんです。

それを踏まえると、交流会は自分が「これだ」と思えるものを身に付けるか、せめて見つけてから行くことが望ましい。交流会というのは、情報のギブ&テイクで成り立つものですからね。

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相談者さんの場合は、アウトプットの前にインプットを増やすことが重要です。

資格取得を目指すのも素晴らしいことですが、いま行き詰まっているというなら、ぜひ外に出てみてください。

そうすれば絶対に仕事の見方は変わりますし、自分の求めているものが見つかるかもしれませんよ。

文/松田小牧