デキる女の先輩に腹が立つのはなぜ? 脳の使い方が違う人にイラつく理由を脳科学者が解説【黒川伊保子】
相手に非はないけれど、一緒にいると自分がなんだか惨めに思えてきたり、劣等感を抱いてしまったり……職場にいる“デキる女性”にイラついてしまう。そんな経験はありませんか?
この記事では、『女女問題のトリセツ~イラつく女への7つの対処法』(SB新書)を上梓した、脳科学者・AI研究者の黒川伊保子さんがWoman type読者から寄せられた女性同士の人間関係の悩みに回答。
脳科学の観点から、問題の原因とイライラやモヤモヤの解消に役立つ考え方のヒントを紹介します。
女性の先輩が同じチームにいてよく仕事を教えてもらうのですが、「自分はこうはなれない」と感じるたびに相手に対してイライラしたり、傷つけたくなったりしてつれない態度をとってしまいます。
相手が良くしてくれることに素直に感謝できない自分が本当は嫌なのですが、気持ちの折り合いがつきません。
脳の使い方のタイプが違う人になろうとするのは“地獄”?
おそらく、あなたとその先輩とでは脳の使い方のタイプが違うのでしょう。より分かりやすくするために、体の使い方の違いを例に解説してみますね。
人間の手足の制御方式は、大きく分けて2種類あります。一つは、指先に力が集中し、重心が前にあって、スピードがあり、スマートに動くタイプ。もう一つは、手の平に力が集中し、重心が体の中心にあって、パワーがあり、エレガントに動くタイプ。誰もが生まれつき、どちらかに決まっていてこのタイプは一生変わりません。
例えば、前者の「指先タイプ」の人がダンサーになった場合、軽やかな動きが得意で、足を高く上げたり、パッと飛び上がったりするのは朝飯前。後者の「手の平タイプ」のダンサーは、しなやかな動きが得意で、背中をのけ反らせたり、反動を使ったパワフルな動きで人を魅了します。前者はキュートで、後者はセクシーです。
お互いに生まれ持った個性が違うので、違うタイプの動きはある程度まねできても、決して同じようにはなれません。だから、違うタイプのダンサーに憧れて、そうなりたいと思ったら地獄。劣等感で苦しみ、その相手を憎んだり、つらく当たったりすることになります。
同様のことが、脳にも言えます。脳には「課題へのアプローチの仕方」が2種類あり、人によってとっさの優先側が分かれます。違うタイプの二人は、話がすれ違い、優秀な相手には劣等感を抱きがちです。
「その人になる」のではなく、「その人の相棒になる」ことを考えてみて
では、「相手につれなくしてしまう、傷つけたいと思ってしまう」というBさんはどうすればいいのか。
まずは、「その先輩のようになりたい」と思うこと自体が間違いなのでやめましょう。「自分とは違う個性の人がチームにいてくれて助かった、私は私のやり方を極めよう」と考えることで楽になれると思います。
憧れの先輩が、軽やかにやってのけることが自分にできないのならば、自分にできてその先輩にできないことが必ずあります。脳はそういうふうにできているのです。
例えば、段取り上手なスマートな人は、予想外の事態に弱く、とっさの工夫で乗り越えるということが不得意です。段取りが下手でもたもたしがちな人は、意外と機転が利きます。「先輩のようになること」を目指さず、「先輩の不得意なことを支えられる相棒」になればいい。
違う能力、タイプの人がチームを組むから強くなるんです。「誰かのようになりたいけれどなれない」なんてことを考えて悩んでいるとしたら、すごくもったいないことですよ。
書籍紹介
『女女問題のトリセツ~イラつく女への7つの対処法』(SB新書)
女が女にイラつく原因とその対処法を教えます。女子の人間関係を脳科学で解明! 動物界最長の子育て期間を余儀なくされる人類の女性たちには、「わかる、わかる」でつながって互いを守り合おうとする本能がある。そんな中、一人勝ちする美人も、価値観の違う相手も危険なので、脳に赤信号がともる。それが「イラつく」の正体だ。いわば女性脳が健全な証拠。女の友情は、ちくりと痛いのが当たり前。その「イラつく」をうまく飼いならして、女の友情を全うするためのトリセツを紹介する一冊