自分の意見を言わない女にイラッ…! 職場で同調してばかりの同僚をあなたの脳が危険視する理由【黒川伊保子】

黒川伊保子さん

職場で会議をしてもみんなに合わせて同調するだけ、うなずいてはいるけど自分の意見を言わない、人の意見を丸パクリ……。そんな女性にイラっとしたことはありませんか?

この記事では、『女女問題のトリセツ』を上梓した、脳科学者・AI研究者の黒川伊保子さんがWoman type読者から寄せられた女性同士の人間関係の悩みに回答。

脳科学の観点から、問題の原因とイライラやモヤモヤを解消するのに役立つ考え方のヒントを紹介します。

Cさん
営業/28歳

同僚の女性に「分かる~」「そうですよね~」など、人と同じ意見しか言わない人がいて、何だかすごくイライラします。

「で、あなたはどう思うの?」「どうすべきだと思う?」と意見を聞いてもはぐらかすだけなので、仕事にも支障があります。

同調はしてくれるけれど自分の意見を言わない人にこんなに腹が立つのはなんでなのかな? と自分でも不思議です。

 

職場のような“狩猟の場”において、脳は「同調しかしない人」を警戒する

なぜCさんはこの同僚の女性にイライラするのか。はっきり言いましょう、相手が役立たずに思えるからです。

自分に同調しかしない人と一緒にいても、一人でいるのと同じ能力しか使えません。すると、狩猟やサバイバルの現場で彼女は足手まといになるばかり。

Cさんの脳がそれを察知し、彼女を警戒しているのです。つまり、Cさんのイライラは正しい怒りだと言えます。

黒川伊保子さん

ただ、「周囲に同調する」ことを何気なくやってしまう女性は少なくありません。

子育てを行う群れではみんなと協調して同じことをしていく方が生存可能性が上がるので、女性脳は同調することを好む傾向があるのです

例えば、子育てを経験した女性の中には、「育児って大変だよね。あなたのつらさ、よく分かるよ」「私も以前はそうだったよ」と言って同調してくれる友人・知人の存在に救われたことがある人も多いはず。

陣痛や赤ちゃんの夜泣きのように生物として避けられない苦痛は、仲間同士で共感・同調しあって癒やすしかないし、子育てというのはそういうことの繰り返しなのです。

一方、職場は狩猟の現場です。ビジネスで成果を出すためには、子育ての世界で通用したような「同調した方がうまくいく」というセオリーはまったく当てはまりません。

むしろ、同じ方向にしか進めない、同じ行動しかとれない仲間と一緒に行動しても、共倒れするだけ。

狩りは絶対に成功しません。それが分かっているから、Cさんの脳に危険信号がともるのです。

期待を寄せるだけ無駄? 自分で意思決定を重ねて「いいとこどり」してOK

黒川伊保子さん

では、Cさんは意見を言ってくれない人へのイライラにどう対処すればいいのか。

残念ながら、同調ばかりして自分の意見を言わない人をすぐに変えることは難しいと思います。

彼女は長年そうやって生きてきたのでしょうから、いきなり脳の使い方を変えることはできません。

なので、対処法としては「彼女に過度な期待を寄せない」ことが一番です。

「自分の意見を言うべきなのに言ってくれない」と考えるほど、Cさんだけが苦しくなってしまいます。

ですから、「そもそも意見を言ってくれなくて当然」くらいに考えて、社内で議論がちゃんとできる他の人を自分の味方にしながら、一緒に意思決定ができればいいと思います。

無理して彼女に付き合ってあげる必要もないと思いますよ。

黒川伊保子さん

ただ、そのときに彼女をのけ者にしてしまうのはやめましょう。何か意思決定をする時は、「こうしますけど、いいですよね? 私たちの総意ということで進めますよ」というふうにその都度声を掛けて、はっきり「イエス」と言ってもらうようにします。

そうすれば、彼女にも責任の一端を担ってもらえるし、何かあったときに「周りが勝手に決めた」「私は関係ない」とは言えなくなりますから。

もしも、彼女が本当はデキる人で、単にコミュケーションの癖で周囲に同調ばかりしていたのだとしたら、こういう扱いをされているうちに「このままじゃいけない」と目覚めて自分から意見を言うようになると思いますよ。

デキない人が身近にいると、相対化されてちゃんと仕事をしているCさんの評価が上がることもあります。

「彼女の主張がないおかげで、いつもいいとこどり」ができるくらいに考えて、自分でどんどん意思決定をしてしまいましょう!

黒川 伊保子さん

<プロフィール>
黒川 伊保子(くろかわ・いほこ)さん

1959年長野県生まれ。奈良女子大学理学部物理学科卒業。富士通にて人工知能(AI)の研究開発に従事した後、コンサルタント会社、民間の研究所を経て、2003年(株)感性リサーチ設立、代表取締役に就任。脳機能論とAIの集大成による語感分析法を開発、マーケティング分野に新境地を開いた、感性分析の第一人者。また、その過程で性、年代によって異なる脳の性質を研究対象とし、日常に寄り添った男女脳論を展開している。人工知能研究を礎に、脳科学コメンテーター、感性アナリスト、随筆家としても活躍。著書に『恋愛脳』『成熟脳』(新潮文庫)、『人間のトリセツ ~人工知能への手紙』(ちくま新書)、『妻のトリセツ』(講談社+α新書)、『定年夫婦のトリセツ』(SB新書)、『息子のトリセツ』(扶桑社新書)、『思春期のトリセツ』(小学館新書)、『恋のトリセツ』(河出新書)など多数。毎週金曜日、らじるラボ(NHKラジオ第一、8:30〜11:50)にパーソナリティとして出演中(聴き逃し配信あり)

書籍紹介

黒川さん

『女女問題のトリセツ~イラつく女への7つの対処法』(SB新書)

女が女にイラつく原因とその対処法を教えます。女子の人間関係を脳科学で解明! 動物界最長の子育て期間を余儀なくされる人類の女性たちには、「わかる、わかる」でつながって互いを守り合おうとする本能がある。そんな中、一人勝ちする美人も、価値観の違う相手も危険なので、脳に赤信号がともる。それが「イラつく」の正体だ。いわば女性脳が健全な証拠。女の友情は、ちくりと痛いのが当たり前。その「イラつく」をうまく飼いならして、女の友情を全うするためのトリセツを紹介する一冊

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