世界的自動車メーカーとNPO法人と働く夫婦の支援団体とーー「やりたいこと」をあきらめなければ必ず幸せなキャリアに繋がる

これからの働き方を考えよう!
パラレルキャリアが創るオンナの未来

「ずっと会社員でいいのかな」「このままの仕事で、私の人生楽しいの?」。多くの女性が抱える、“仕事”と“未来”への不安。“自分らしいキャリア”を実現できていると胸を張れる人は、決して多くない。 そこで注目されているのが、何かの仕事をしながらそれ以外の仕事を持つことや、非営利活動に参加することを指す、「パラレルキャリア」という新しい生き方。報酬目的ではない仕事によって、叶えられる“キャリア”とはどのようなものだろう。 実際にパラレルキャリアによって自分の“未来”を変えてきた先輩ウーマンたちの言葉から、ヒントを見つけてみよう

世界的自動車メーカーとNPO法人と働く夫婦の支援団体とーー「やりたいこと」をあきらめなければ必ず幸せなキャリアに繋がる

NPO法人TABLE FOR TWO International
大宮 千絵さん

大学卒業後、日産自動車株式会社入社。市場調査室にて、7年間グローバルマーケットリサーチ業務に携わる。3年目ごろから、プライベートでNPO法人TABLE FOR TWO International(TFT)にボランティアとして参加。2013年11月より、産休・育休を取得し日産自動車を退社。15年4月より、TFTに正社員として勤務。また、2014年10月に働く夫婦を応援する団体CAREER PALETTEを設立し、代表理事を務める

「自分の使命は何なのか」と問い続けた中で出会ったNPO活動

私が本格的にパラレルキャリアをスタートしたのは、社会人になって3年目の頃。当時は日産自動車でマーケットリサーチ業務に携わっていたのですが、プライベートで参加した若手社会人が集まる勉強会の中で、NPO法人TABLE FOR TWO International(TFT)とのコラボ企画にボランティアで加わることになったのです。TFTは「開発途上国の子どもたちが飢餓や栄養失調で苦しむ一方、先進国では食べ過ぎによる肥満が深刻化している」という食の不均衡を解消するために設立された団体で、この時の企画は「お弁当で健康的な食生活を送ってもらうために、TFTオリジナルのお弁当箱を製造販売し、同時に、代金の一部を開発途上国の子どもたちに寄付する」というものでした。だったら私が本業で担当しているマーケットリサーチのスキルが活かせるはずだと考え、ぜひ参加したいと手を挙げました。

もともと私には、つらい思いをしている人たちの力になりたいという気持ちがありました。自分が高校時代に病気を経験し、外出もままならない生活を送ったことがあるからです。幸い健康を取り戻すことができましたが、あの時は「つい昨日まで元気に過ごしていたのに、なぜこんなことになってしまったのだろう」とショックだった。そして、「この世界には自分の力ではどうにもならないことがある」という現実を知ったのです。

この時から、私の中には「自分と同じような思いをしている人を助けたい」という思いが芽生えました。就職してからも、「自分の使命は何なのか」「自分は誰のために働きたいのか」を問い続け、その答えを探るためにさまざまな勉強会や町おこしの活動などに参加してきました。そんな中でTFTの活動を知った時、「子どもたちのために何かしなくては」と強い使命感を抱いている自分に気付いたのです。

世界的自動車メーカーとNPO法人と働く夫婦の支援団体とーー「やりたいこと」をあきらめなければ必ず幸せなキャリアに繋がる

実際に世の中に出たお弁当箱がこちら。フタには世界地図が描かれている

私が最も共感したのは、TFTが社会課題をビジネスによって解決しようとする点でした。もちろんこのコラボ企画も単なる慈善事業ではなく、お弁当箱を売って収益を上げるというビジネスが成立しなければ意味がありません。ですから参加する私たちも、ボランティアとはいえ、「この企画を絶対に実現させよう!」という高いモチベーションで取り組みました。メンバーは本業の仕事も忙しい人ばかりでしたが、出社前の時間などを使ってミーティングを重ね、企画書を作成し、お弁当箱を作ってくれそうな会社を50社以上リストアップし、みんなでテレアポをして……と、誰もが本当に熱意を持って動き回りました。

ところが電話やメールでアプローチしても、なかなか製造を引き受けてくれる会社が見つからない。そこで私は、ある会社に飛び込みで営業をかけました。いきなり訪ねて行って、「アフリカに給食を届けるために、一緒にお弁当箱を作ってください!」と頭を下げたのです。さすがにその場では不審な人間だと思われたらしく(笑)、相手にしてもらえませんでしたが、帰りの車の中でその会社の方から電話がかかってきて。企画書を読んでくださったとのことで、「私たちもこういう仕事がしたかった、ぜひ一緒にやりましょう!」と言ってくださったのです。こうしてTFTオリジナルのお弁当箱が完成し、店頭で販売された時は感慨もひとしおでした。

同じ志を持つ仲間と出会えたから自分も情熱を絶やさずにいられた

世界的自動車メーカーとNPO法人と働く夫婦の支援団体とーー「やりたいこと」をあきらめなければ必ず幸せなキャリアに繋がる

これを機に、その後2年間ほどボランティアとしてTFTの活動に関わりました。このパラレルキャリアを通じて得たものや学んだことはたくさんあります。まずは、「どうすれば人を巻き込んで成果を上げられるか」を意識するようになったこと。会社の中では、何か指示されればたいていの人は動いてくれますが、ボランティア活動ではそうはいきません。ですから常に「相手がどこにモチベーションを感じるか」を意識し、みんなで同じ方向に向かうために目指すゴールを共有するよう心掛けました。その後、入社7年目に会社でアシスタントマネジャーになりましたが、早い時期から人を巻き込んで成果を上げるという意識を持てたことは、本業でリーダー的な役割を果たす際にも非常に役立ちました。

そして何より大きかったのは、同じ志を持つ人たちとの出会い。「社会をより良くしたい」という思いで頑張っている人たちとつながれたことで、私も情熱を絶やさずにいられたと感じています。

実は今年、大きなキャリアチェンジをしました。日産自動車を退職し、TFTで社員として働き始めたのです。きっかけは、産休・育休を取得し、約1年間仕事から離れたこと。この間に改めて「自分は誰のために働きたいのか」を考えた時、「世界の子どもたちを笑顔にしたい」という自分の軸がはっきり見えてきたのです。さらには、これから育児をしていく中で、我が子に「やりたいことを思い切りやって生きなさい」と伝えていきたいとも思うようになりました。そのためには、私自身が「やりたいことを思い切りやっている」と自信を持って言える生き方をしなくてはいけない。だったら、そのために行動すべきではないか。そう考えたのです。

日産自動車での仕事も大好きだったのでかなり悩みましたが、この時もパラレルキャリアを通じて知り合った仲間たちが背中を押してくれました。現在は前職の経験を生かして、SNSやWebを使ってTFTの活動を広めたり、マーケティング施策の企画立案を手掛けたりしています。社会にとって価値あるサービスを提供できているという手応えをダイレクトに感じられる毎日。このキャリアを選択して本当によかったと実感しています。

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