収入よりやりがいが減る方が深刻? 子どもができても「長く働く」をかなえるために知っておきたい三つの選択肢【田中美和】

「育休明け時短勤務に現金給付」--2022年11月、複数のメディアでこうした報道が見られました。
これは、育児休業明けで子育てのために勤務時間を短縮して働く人(時短勤務者)に対して、新たな現金給付制度を創設する方向で政府が検討しているというものです。

政府の発表によれば、時短勤務による収入減少で離職してしまう人を減らす狙いがあるとのこと。
しかし、時短勤務の女性たちが離職してしまう原因は、本当に「お金」なのでしょうか?
時短女性のモチベーションを下げるのは、収入減よりやりがい減
私が共同代表をしているWaris(ワリス)で過去に実施した調査では、「時短勤務であるがゆえになかなか仕事を任せてもらえない」、「評価が得られない」ことが原因で仕事のモチベーションが下がってしまう女性たちの姿が浮き彫りになりました。

※出典:株式会社Waris「提言~さらなる女性の継続就労・活躍が可能となる社会へ~」
200名以上の女性に「あなたが仕事を選択する上で重視するもの」を尋ねたところ、「ワークライフバランスが実現できるかどうか」(73%)と答える人が圧倒的に多い結果に。
ですが、2位、3位には、「スキル・経験が生かせる仕事内容か」(58%)、「やりがいを感じられる仕事内容か」(51%)といった項目が上位を占めていました。
この結果から、多くの女性たちが「時間が限られているからこそ、自分のスキルや経験を生かせる仕事がしたい」と考えていることが分かります。
子どもができても「長く働く」をかなえるために知っておきたい三つの選択肢
では、もしもこれからライフステージが変化して子育てと仕事を両立していくことになったら、「限られた時間でも自分のスキル・経験を生かして働く」ことをどのように実現すればいいのでしょうか?
ぜひ今のうちに知っておいてほしいなと思うのは、「リモートワーク」「フリーランス」「産後パパ育休制度」という選択肢です。
1:リモートワーク
コロナ禍で、勤務先がリモートワークOKになった人も多いことでしょう。
特に首都圏はリモートワークの実施率が高く、東京都内では半数以上の企業が「テレワーク実施中」といった調査結果もありますし、私が共同代表を務める会社では、紹介するお仕事のうち「フルリモートワークOKの仕事」の割合がコロナ禍でおよそ2倍にも増えています。

リモートワークに関しては、私自身も重要性を痛感した思い出があります。
数年前に私たちの会社に入社した女性社員がいました。お子さんを2人育てつつ入社してくれたその社員は、子育てとの両立を考えて時短勤務を希望していたのですが、リモートワークとフレックスタイム制を使えば「フルタイムでも働けそう」ということで、時短勤務からフルタイム勤務へ変更。
働く時間と場所の自由度の高さが、フルタイム勤務を可能にしたのです。
また、別の会社の事例ですが、とある大企業でコロナ禍でリモートワークを導入したところ、管理職にチャレンジする女性が増えたそうです。
2:フリーランス
また、最近ではフリーランスになる選択肢も一般的になりつつあります。内閣官房による調査では、日本のフリーランス人口は462万人と推計されますが、この数はますます増加傾向に。
私たちが作成した『フリーランス白書2020』では、およそ7割のフリーランスがコロナ禍でテレワークを活用して仕事をしているとのデータ(下図)もあります。

※出典:一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会『フリーランス白書2020』
専門スキルを生かしつつ自由に働きたい人にとっては、フリーランスもキャリアの選択肢の一つになり得ます。
さらに最近の傾向として目立つのは、会社員からフリーランスになった人が、数年後に再び会社員になる「逆流型キャリア」が珍しくなくなってきたことです。
子育てのためにワークライフバランスを保って働きたい人は、例えば子どもが小さいうちの数年間だけフリーランスとして過ごすのも良いと思います。
3:産後パパ育休制度
また、今年のニュースで「産後パパ育休」制度の新設が話題になりました。
育児・介護休業法が改正され、従来の育児休業とは別に、出生後8週間以内に最大4週間の「産後パパ育休」が取得できるようになったのです。

「産後パパ育休」も女性の育休も、どちらも2回に分けて取得することが可能になったため、夫婦で互いの産休・育休の時期を調整しつつ柔軟に対応できるようになりました。
今まで育児は女性に偏りがちであることが問題視されていましたが、この育休制度の施行によって、今後はさらに家事・育児負担の男女格差が是正されるのではないかと期待しています。
読者の皆さんの中には、時短勤務を取得することへの不安や悩みを持っている人もいらっしゃることでしょう。
しかしながら、働き方の多様化が進み、選択肢は幅広くなっています。
ライフステージに合わせて多様な働き方を実現しながら、人生100年時代のキャリアを切り開いていきたいですね。

【この記事を書いた人】
Waris共同代表・国家資格キャリアコンサルタント
田中美和
大学卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現日経BP社)入社。編集記者として働く女性向け情報誌『日経ウーマン』を担当。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェントWarisを共同創業。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」理事
『ニューノーマル時代のLive Your Life』の過去記事一覧はこちら
>> http://woman-type.jp/wt/feature/category/work/liveyourlife/をクリック