マイノリティーへの配慮だけでは職場のDE&Iは実現しない? 多様な仲間と働くための心掛け三つ【田中美和】
近年、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の重要性が言われ、性別や年齢、国籍、人種、障がいの有無、性的志向など個の多様性を理解し、認め合う動きが職場で盛んになりつつあります。
最近ではD&Iに、E(Equity=公平性)を加えて、「DE&I」といった言葉も聞かれるようになってきました。皆さんの職場でもこうした動きがあるのではないでしょうか?
そこで今回は、女性たち一人一人が実践できる「多様な仲間と働いていくために大切なこと」を考えてみたいと思います。
男性も職場で生きづらさを感じている
まず、「D&I」や「DE&I」について語るとき、その対象に女性や外国人といった「マイノリティー」が取り上げられることが多く、「マジョリティー」とされる男性が対象となることは少ない実情があります。
とある調査結果では「6割以上の男性が、『男だから』という固定観念やプレッシャーにより職場で生きづらさや不便さを感じている」ことが明らかになりました。
では、男性たちは具体的にどんな場面で生きづらさを感じているのでしょうか?
生きづらさを感じる場面について、年代別に聞いた結果が下図です。
20代~50代までのすべての年代において、「昇進に対して野心的でなければいけない・競争に勝たなければいけないというプレッシャーを感じるとき」と、「長時間労働や休日出勤を許容できなければいけない風潮」がトップ3以内にランクイン。
子育て世代が多い30代、40代ではいずれも「収入が高く安定的な職業を選ばなければいけないという意識」が1位になっています。
調査のフリーコメントでは「生きづらさ」を感じる場面として、「小さな子どもがいても、長期の海外出張に行くのが前提となっている」といった、共働き世帯の男性側の負担に対するコメントもありました。
半数以上の男性が「DE&I推進には男性の配慮がない」と回答
また、男性たちは昨今のDE&I推進の風潮をどう見ているのでしょうか?
調査では「DE&Iの中に男性への配慮もあると感じますか?」という問いに対し、53.3%の人が「いいえ」と回答。
一方で、62%の人が「男性の多様性が尊重されることもDE&Iの推進に含まれるならば、DE&I推進に対するモチベーションが上がる」と回答しています。
男性がDE&Iにより一層取り組むためには、「男性にも配慮」をすることが大事だということですね。
ここまで調査結果を見てきて、職場でDE&Iを推進していくためには、マイノリティーだけでなくマジョリティーとされる人たちへの配慮も大切だということが分かりました。
では、多様な仲間と一緒に働いていくためには、具体的にどのような心掛けが必要なのでしょうか?
今日から意識したい三つのポイントをご紹介します。
【ポイント1】相手の状況や事情に想像力を働かせる
上記で紹介した調査では、「男性だから長期出張はできるはず」「長時間労働や休日出勤も問題ないはず」といった思い込みによって生きづらさを感じてる男性が多くいる実情が明らかになりました。
「女性だから」「男性だから」「ママだから」「結婚しているから」「結婚していないから」――私たちは無意識のうちに、さまざまな思い込みや偏見を抱えながら生きています。
属性によるものだけではなく、「働くとはこういうことだ」「キャリアとはこういうものだ」など、価値観による偏りもあります。
誰しも多かれ少なかれ偏見や偏りがあるものですが、大切なことは、一人一人が多様な考え・価値観を持っていることを知り、それを尊重する姿勢です。
だからこそ、「当然~だろう」「~するのが当たり前」といった思考をしている自分に気づいたら「本当にそうだろうか?」と自問する習慣を持ちたいですね。
【ポイント2】コトに焦点をあて、I(アイ)メッセージで伝える
読者の中には、現在リーダーやマネジャーとしてチームのマネジメントをしている人も多いのではないでしょうか。
多様な思考・価値観を持つメンバーを束ねていくうえでは、起きている事象や客観的なデータに基づいてコミュニケーションを取っていきましょう。
例えば、「四半期のチーム目標に対して現状の結果は○%足りない」や「調査の結果、チームのエンゲージメントスコアが前月に比べて○ポイント下がっている」といった事象(コト)に焦点をあてて、メンバー一人一人と対話を重ねることが重要です。
そのうえでメッセージを発信するときは、「I(アイ)メッセージ」を意識しましょう。
これは「I(私)」を主語にしたコミュニケーション方法で、相手を主語に話す「You(ユー)メッセージ」と比べ、相手に配慮しながら自分の意見を述べるための手法としてよく知られています。
「私は~と思う」「私は~と感じる」など、ぜひ「私」を主語にして多様なチームメンバー一人一人を巻き込んでいってください。
【ポイント3】誰ひとり取り残さない仕組みづくりを意識しよう
そして、一人一人が能力を発揮しやすい仕組みづくりを検討する立場の人もいらっしゃることでしょう。
そこで、とある企業の事例をご紹介したいと思います。その企業ではコロナ禍によりテレワークを導入したところ、管理職に立候補する女性の数が2倍以上に増えたそう。
テレワーク自体は男女問わず利用可能な仕組みだったとのことですが、結果的に女性の活躍を後押しすることにつながったわけです。
多様なメンバーが能力発揮できる環境や仕組みを考えるときに、マイノリティーを対象とするだけではなく、誰もが理由や期間の定めなく利用できる状態が、一人一人の働きやすさ・働きがいにもつながっていきます。
一人一人が生きづらさ・働きづらさを手放して、より自分らしく生き生きと働き続けられる社会づくりを目指して、職場のあり方を考えてみてはいかがでしょうか。
『ニューノーマル時代のLive Your Life』の過去記事一覧はこちら
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