産育休後の復帰率は常時90%以上! 販売員の働きやすさを重視したら好循環が生まれた/株式会社ユナイテッドアローズ

産育休後の復帰率は常時90%以上! 販売員の働きやすさを重視したら好循環が生まれた/株式会社ユナイテッドアローズ

アパレル業界の中でも定着率が高く、産後の復帰率も常に90%以上を誇る株式会社ユナイテッドアローズ。育児支援を積極的に推進している企業として、厚生労働省から認定されている同社では、2015年1月末の時点で産休・育休を活用している社員が約130名、短時間勤務制度を活用している社員は約170名にも上る。

小学校6年生まで時短勤務OK!
販売員の働きやすさを第一に考えた

産育休後の復帰率は常時90%以上! 販売員の働きやすさを重視したら好循環が生まれた/株式会社ユナイテッドアローズ

株式会社ユナイテッドアローズ
経営戦略本部 人事部 採用チーム リーダー
方波見 有岐さん

「当社ではアルバイトで入社した販売員も、一定の条件をクリアすれば3カ月後には全員正社員登用されます。これにより、7年前から女性社員の割合が過半数を超えるようになりました。当時から子育てとの両立を支援する窓口を用意し、産育休の取得経験者からの相談に応じていましたが、人数が増えれば個別での対応はし切れなくなる。そこで4年前に、女性社員のライフステージが変化しても働き続けられる環境を整えるために制度の見直しを行いました」

こう話すのは、人事担当の方波見有岐さん。産育休などの基本的な制度はもちろんだが、注目すべきは短時間勤務制度。法律上で定められている時短制度は子どもが3歳になるまで利用できるというものだが、同社の場合はオフィス勤務なら小学校3年生まで、販売スタッフであれば小学校6年生まで適用される。

「通勤時間や保育園に預けられる時間によって働ける時間が変わることを考慮し、より各自の状況に応じた働き方ができるよう、勤務時間も6時間から7.5時間まで、30分刻みで選ぶことができます。また、妊娠時の体調によってはずっと立ち仕事をするのは体に負担が大きいこともあるため、こうした時短制度を妊娠期間中から利用できるようにもしています(妊娠時は6.5時間から7.5時間まで選択可能)。社員の大多数が店舗のスタッフですから、彼女たちの働きやすさを第一に考えて体制を整えています」

子育て中でも特別扱いはしない
誰に対しても等しく成果を求める

こうした短時間勤務の制度を活用するイメージを抱かせるための取り組みも行っている。その一つが仕事と育児を両立中の先輩達をロールモデルとして紹介する社内報『くるみん通信』や、復職への流れや手続きから保育園の手配時期まで、必要な心構えをまとめた資料の作成だ。これらを社内ネットワークに掲載し、休職中の社員には郵送をしている。

「復帰時の不安を軽減することを目的としていますが、勤務時間などへの配慮はしながらも、子育て中だからといって特別扱いするわけではないことも伝えるように心掛けています。例えば、時短勤務者のキャリアパスや評価について。成果を上げれば昇格のチャンスがある一方、パフォーマンスが悪ければ当然降格もあるということを資料の中で説明しています。『同じグレードであれば、例え時短勤務であっても求められる成果は同じ』ということを理解してもらい、時短であっても成果を上げるという意識を持ってもらえるように取り組んでいます」

実際に時短勤務であっても店長や副店長として活躍している社員もおり、中には全社約3000名の販売員から若干名が選ばれる『セールスマスター』に輝くなど、トップクラスの実績を上げている社員もいるという。下記の社員インタビューに登場する販売スタッフもその1人だ。

「最近は新卒採用を積極的に行っていますが、未経験者を受け入れられるようになったのは、後輩指導ができるベテランスタッフが増えたからこそ。時短勤務のママたちがいることで、若手社員も長くこの仕事を続けていくイメージが持てる。店舗スタッフが長く活躍してくれることで、多くのノウハウや知恵が蓄積される。女性が長く働いてくれることが、とても良い循環を生み出していると実感しています」

~Staff’s Voice!~
目指すは“生涯、一販売員”!
積み重ねた自分のスキルを伝えていきたい

ユナイテッドアローズ

グリーンレーベル リラクシング ルミネ北千住店
細谷香奈江さん(38歳)

2002年、同社に入社。『ユナイテッドアローズ』の販売員としてさまざまな店舗で現場経験を積む。『キャス・キッドソン(現在、株式会社ユナイテッドアローズでの運営は終了)』日本上陸時に、初出店の店長として活躍した後、課長に昇進。07年に結婚、08年10月より産休・育休期間に入り、10年に復職。現在は時短制度を活用し、ルミネ北千住店の販売員として勤務、2015年よりセールスマスターに就任

一児の母となってから5年間、時短で働いています。9時半から16時半までの6時間勤務が基本です。妊娠当初は退職することも考えていましたが、「辞めることはいつでもできるから、まずは制度を活用してみたら?」という人事部からのアドバイスもあり、時短制度を利用することを決めました。

もちろん当初は職場で受け入れてもらえるか、不安もありました。ただ、時短勤務者を特別扱いしないという考えが浸透しはじめていたこともあり、疎外感のようなものを感じたことはありませんでした。復帰後は、これまで独身男性から既婚の女性まで、5人の上司の下で仕事に取り組んできましたが、皆さん状況を理解してくれました。スタッフも快く受け入れてくれていて、本当に感謝しています。

育児と仕事を両立するようになって一番変化を感じているのは、他のスタッフへのアドバイスの仕方。フルタイムで働いていたころは、自分がやった方が早いからと、時には自分ですべてを抱え込んでしまうこともありましたが、今は「この人に必要なことは何か」を深く考えるようになりました。

時短勤務の場合、どうしても自分一人でできることには限界がありますし、できない分を他の人に助けてもらわなければ、お客さまに迷惑を掛けてしまう。だからこそ、周りのスタッフに対して、知恵袋みたいに自分のスキルを伝えていこうと考えるようになりました。スタッフが成長すれば、より多くのお客さまにご満足いただけるはず。時短勤務する側はどうしても「やってもらっている」という受身の立場になりがちなので、出来ることは自ら積極的に働きかけるようにしています。

オフィスで勤務している時期もありましたが、私は目の前のお客さまのお役に立ちたい気持ちが強いんだな、と改めて接客をする中で実感しています。 今後も店頭に立ち続けて、“生涯、一販売員”を目指して頑張っていきたいです。

取材/文 上野真理子 撮影/竹井俊晴

販売職