ダンサー・振付師JESSICAの「プラスサイズな自分めっちゃ好き!」マインドをつくった原体験
生き方も、働き方も、多様な選択肢が広がる時代。何でも自由に選べるってすてきだけど、自分らしい選択はどうすればできるもの? 働く女性たちが「私らしい未来」を見つけるまでのストーリーをお届けします
ダンサー、振付師として活動するJESSICAさん。
プラスサイズの体で踊るダイナミックなダンスと明るいキャラクターで、SNSを中心に人気を集めている。
「自分のことめっちゃ好き!」といつも楽しそうでご機嫌なJESSICAさん。“痩せ信仰”が根強い日本で、なぜありのままの自分らしさを貫けるのだろう?

JESSICAさん
1995年生まれ。大阪府出身。ファレル・ウィリアムスや『DREAMS COME TRUE』などのバックダンサー、振付師を務めるプロダンサー。次世代型クリエーター・ユニット『午前0時のプリンセス』のメンバーであり、モデル、インフルエンサーとしても活躍中 Instagram/TikTok/YouTube
「ダンスで生きていきたい」に迷いはなかった
私は自分のことが好きで、自分がやりたいと思ったことには全て挑戦してきました。その行動をし続けてきたから、今の自分があるのかなって思います。
例えば、ダンス。習い事は他にもしてきたけど、小学2年生から始めたダンスだけは一回も辞めなかったんですよ。ダンスはもう、ずっと大好きで。
だから、みんなが大学や就職に悩んでる時も、私は全く悩まなかったんです。「ダンスで生きていきたい」って決めてたから。
どうやってダンスで生きていくのかは全然分からなかったけど、夜行バスで大阪から東京へ行って、ダンスのレッスンを受けて、お金ないから公園で寝泊まりして。「お金ないし、やめとこう」なんて思うことなく、「行ったらどうにかなるやろ!」って感じ(笑)
今思えば、「何かしらにつながればいいな」と思って行動し続けていたのかなと思います。
そうするうちに20歳の頃、お世話になっていた先生から「ダンスの先生やってみない?」とお誘いいただいて。当然、最初から生徒さんがつくわけはなく、「おはようございます〜!」ってドアを開けたら誰もいない、なんてこともありました。
それでもどうにかアルバイトをしながら続けて、24歳の時にエイベックスのダンス講師のオーディションに受かってからは、ほぼ毎日レッスンを持てるようになりましたね。
ダンスだけで生きていけるかもって思えるようになったのは、その頃からです。
そして、私のことを多くの人に知ってもらえるようになったきっかけの一つが、NHKの『うたコン』。
番組からエイベックスに振り付けの依頼があり、たまたまスケジュールが合った私が担当することになったんですけど、それ以来番組から名指しでオファーをいただけるようになって。

NHK『うたコン』で『IZ*ONE』出演時に『CAT'S EYE』の振り付けを担当した時の一枚。アシスタントダンサーの皆さんと(引用)
同時期にSNSも本格的に始めて、アーティストさんから振り付けやバックダンスの依頼を直接いただくようにもなりました。
『DREAMS COME TRUE』さんやMay J.さんなど、名だたるアーティストの皆さんとご一緒できて……。
そう、頑張ってれば、それを見てくれてる人はいるってことです!「私のこと見えた!? ほんまにありがとう〜!!」って、心底感謝ですね。
20キロ痩せたら、自信もなくなっちゃった
一方で、3年くらい前からプラスサイズモデルとしても活動しています。
「グラマラスサイズのウエディングドレスを日本に浸透させたいから、モデルになってほしい」とすてきなお声がけをいただいたのが最初のきっかけ。
当時はSNSを始めたばかりでフォロワーも少なかったけど、私が自信満々に自分の写真や動画を上げてるのを見てくださったそうです。そこから他のブランドさんからもモデルのお声がけをいただくようになりました。
私がいつからグラマラスサイズか、ですか? もうね、生まれた時から!
……っていうのは冗談ですけど、幼稚園の時から「お前、ぼちゃぼちゃやんか!」って感じで。愛情いっぱいやな〜!みたいな子どもでした(笑)
私は父子家庭だったので、お父さんとおばあちゃん、おじいちゃんにた〜くさん愛情を注いでもらって、唐揚げもた〜くさん食べて大きくなりました。
それをマイナスにしたくない思いもあって、「太っていようと、私はめっちゃ幸せだよ?」って気持ちはめっちゃ強かったんだと思います。
だから自分のことは昔からずっと好きだったけど、小中学生の頃は「デブ」って言われたし、「黒豚」ってひどいあだ名を付けられたこともあって。
@jessica_0825_jessica @💖ㅅ ㄹ ㄴ🎀に返信 みんなの学生時代のあだ名も教えて??🤣#ぜろぷり #JESSICA #ジェシカ #すっぴん ♬ オリジナル楽曲 – JESSICA(ジェシカ)
自分も未熟やったんで、「太ってるのは悪いことなんかな?」って思っちゃったんですよね。
同時に「いや、そんなことないよな」って気持ちもあったから病むことはなかったけど、自分の中では葛藤があったというか。
だから、高校に入る前に一度だけダイエットしたんですよ。「このままでもかわいいねんけどな〜」って思いながらも、「太ってる」とか「デブ」とか言われるの嫌やしと思って。
で、20キロ以上痩せたんです。そうしたら、全く自信がなくなっちゃって。
「え、前の方がかわいかったかも……」って思ったし、痩せたことによってダンサーとしての魅力も減ったように感じてました。
そこで考え直したんですよ。やっぱり、太ってても良くない?って。
だって周りの意見に従って痩せてみた結果、「前の自分の方がかわいかったな」って自分が思ったんですもん。「めっちゃかわいくなった」「痩せてる方がいい」って言ってくれた人もいましたけど、「こっちは自信なくしてんやわ!」っていう(笑)
太っても痩せてもあれこれ言われるし、「そんならもうええわ!」ってなりましたね。そこからはありのまま、自分が好きな自分でいようってマインドです。
今のままの体でも、マインド次第で毎日が楽しくなる
そういう経験があるから、プラスサイズを日本でも浸透させたいなって思います。
私はずっとプラスサイズで、体重は増えに増えたし、何段腹?って感じやし、セルライトもいっぱいある。
そういう自分の体は昔から変わってないんです。変わったのはマインドだけ。
「太ってるのは悪いことではない。かっこいいし、かわいいじゃん!」って心から思えるようになっただけで、「こんなに楽しく生きられるんだ!」って思います。
コンプレックスだと思わされていた体形を武器に変えようと思って、自分の体がより魅力的に映るようなファッションを意識したら、褒めていただくことも増えました。
私は自分の体形にガッツリ魅力を感じていて、ダンサーとして目立つことでさらなる自信にもつながっています。ファッションと一緒で、自分の好きな姿で踊ってる方が楽しいし、自信もつくんですよ。
それに、ダンスの世界でプラスサイズの人って見たことがなくて。ダンスは実力が全てだから体形は関係ないけど、唯一無二でいられてラッキーって感じです。
だから膝が悪くなろうが腰にこようが、自分はこのプラスサイズのままで、細身のゴリゴリ踊れる人に負けずにやっていきたいですね。痩せてようと太ってようと、膝はいつか痛くなるもんやし!(笑)
そうやって自分の体形を誇りに思えるようになれば、毎日がほんまに楽しくなる。で、それは全員ができることなんですよ!
周りからギチギチに「これが美しい」って価値観を押し付けられて、「痩せられない自分はだめなんだ……」ってなっちゃってる人、よく見て! そのままでかわいいやん!!
そのことを体形に自信が持てない人たちに、一人でも多く気づいてほしいなと思ってます。
嫌なことが起きたら「めっちゃ良いこと起きるやん!」
今の私は自分らしく生きられているけど、昔からそうだったかと聞かれると……どうやろ? こういう性格なんで、昔の悪い記憶って全部なくしちゃうんですよ(笑)
でも、昔は今ほどは毎日を楽しめていなかったと思います。幼少期に周りからあれこれ言われた時は、負けそうになる時期の方が長かったから。
そこから高校生の時に「そんなん関係ないやろ」って気づいてから、めちゃくちゃ楽しい人生を送ってるなって毎日思います。
そう思えてるのは、自分の価値観とか性格を尊重してあげられてるからかな。
大学へ行ったり就職したりする道を選ばなかった時は怖かったし、ダンサーになっても食べていけない可能性なんか当たり前にあったけど、それでもワクワクした方を選んだことで今の自分がある。
もちろん、生きてればいろいろあるじゃないですか。私も自由そうに見えてそうじゃない時はあるし、嫌なことだって起きる。
でも、マイナスな出来事ってないんですよ。私、あらゆることがその後の何かに絶対つながる人生なんです。
めちゃくちゃ悪いことが起きたとしても、その分めっちゃ良いことが起きたり、「あの時のやばかったことのおかげやな」って後々思えたり。
成長するには我慢が必要で、困難だってあるし、嫌なことなんて起きるに決まってるけど、これまでいろんな苦労を乗り越えてきた自分がいて、頑張ってる姿を見てくれてる人がいることも分かった。
だから「めっちゃ大変やけど、絶対将来の自分の何かにつながるはず」って信じられるなって思います。
みんな自分の選んだ道で正解!
ただね、ワクワクする方を選べてないから間違いなんてことは絶対なくて。そうじゃない道を選ぶのにも勇気が必要だっただろうし、怖さもあったと思うんですよ。
だから、みんな自分の選んだ道で正解なんだと思うんです。何が良いとかだめとかじゃない。
「自分が選んだ道は絶対に間違いじゃない、これが正解だ!」って、私は意地でも思うようにしていて。
たとえ私が大学に行って就職する道を選んでいたとしても、そっちの世界の自分もその人生の楽しさを見つけて、「これが正解!」って思って生きています。それはもう、絶対にそう!
結局、何をするにも全部怖いじゃないですか。人と違う選択をするのも怖いし、環境を変えるのも怖い。新しく何か始めようと思ったら「せっかくここまで頑張ったのに」って気持ちもあるだろうし。
大事なのは、今の人生を歩んでる自分をどれだけ好きでいられるか、じゃないかな。
「こんなところにいたくない」「本当に好きなことをやってみたい」と思って別のことにチャレンジするのもめっちゃかっこいいし、「でも、私はここで頑張る」って決めて頑張るのもめっちゃすてき。
「今の自分、好きやな」って思えるなら、なんだって正解だと思います。
だから私は自分の心に一番重きを置いて、これからもワクワクする選択をしていきたい。そうやって自分が成長できるようにたくさんトライしていきたい。
そして、SNSを通してありのままの自分を発信して、もっとたくさんの人に自分を知ってもらいたいです。
私、めちゃくちゃ素直で、正直に生きてるなって思います。その気持ちを忘れずに、この先も人生を楽しみながら、一人でも多くの人をハッピーにできたら最高です!
取材・文・編集/天野夏海
『「私の未来」の見つけ方』の過去記事一覧はこちら
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