「プログラミングはまるでなぞ解きゲームのよう」独学で切り開いたエンジニアへの道
未経験からエンジニアになる女性が急増中! 実際にキャリアチェンジをした先にはどのような未来が待っているのだろう。先輩たちのリアルをのぞいてみよう
今の仕事は楽しいけれど、一生続けられるだろうか。
現在、SHE株式会社でエンジニアとして働く矢貝春奈さんは、前職でカメラマンとして充実したキャリアを築いていたものの、20代半ばを過ぎたころから、体力を使う仕事内容に不安を抱き始めた。
そんな時、とあるきっかけから「私はエンジニアに向いているのかも」と思った矢貝さん。
8カ月間独学でプログラミングを勉強し、実務未経験ながらもエンジニアとして転職した。
キャリアチェンジから3年が経過した今でも「仕事は文化祭前のように楽しい」と、笑顔で語る。
もともと文系だったという彼女が、エンジニアという仕事に夢中になった理由とは――。
自分だけが「プログラミング楽しい!」と思っていた
私がキャリアチェンジを考え始めたのは、20代半ばごろ。当時はスタートアップ企業カメラマン兼カメラマンの組織開発に従事していました。
仕事は楽しかったですし、評価もされてやりがいを感じていたのですが、カメラマンは体力勝負の仕事。
20代のうちは体力もあるけれど、将来、結婚や出産をへても続けられるだろうかと思い、別の選択肢を考え始めたんです。
そんな時に出合ったのがプログラミングです。
スタートアップは、携わる仕事が多岐にわたります。その一つに、データ抽出の作業がありました。簡単に言うと、コードを書いてデータベースから分析・企画に必要なデータを抽出する作業です。
急ぎで対応することもあったので、社内のエンジニアに頼らず自分でできた方がいいと思い、教えてもらいながらコードを書き始めました。
それまでは、「プログラミングなんて文系の私にはできない」と自分とはかけ離れた世界だと思っていたのですが、いざやってみたら意外に面白くて。
私は脱出ゲームやなぞ解きゲームが好きなのですが、コードを書く作業がなぞ解きの感覚と似ているんです。欲しいデータを取得するためにどんなコードを書くべきか考えたり、発生したエラーを解決するために、あやしそうな部分に目星をつけて正解を導きだしていく作業に夢中になりました。
当時、データ抽出の作業を教えてもらっていた同僚は他にもいたのですが、みんな「つまらない」「わけが分からない」と離脱していくんですよ。
「プログラミングって楽しい!」と思っているのは私だけ。
その時に教えてくれていた方が、「エンジニアに向いてると思うよ」と言ってくれたことがきっかけで、迷っていたキャリアチェンジとエンジニアの仕事が重なりました。
独学でプログラミングを学び、つかんだ「パッション採用」
といっても、すぐにエンジニアになろうと決心したわけではありません。
少しかじった程度の私が楽しいと思っているプログラミングと、現場のエンジニアが担う業務とでは、雲泥の差があるのは分かっていましたから。
業務イメージを膨らませるためにも、まずはもっと深くプログラミングについて学ぶ必要があると思いました。
しかし、しっかり学ぶためにプログラミングスクールに入会するのが良さそうと思いつつも、まだ本当に自分にエンジニアが向いているのか自信がなかったため、スクールにお金をかける勇気はありません。
そこでwebサービスを利用して、独学でプログラミングを学び始めました。
夜10時に仕事から帰宅して、ご飯とお風呂を済ませたあとの11時頃から、長い時には早朝4時まで、ぶっ続けでコードを書いていました。
自分でも驚くぐらい楽しくて、何時間でも続けられたんです。変なスイッチが入っていたんでしょうね(笑)
勉強を始めて、転職活動に必要なポートフォリオを完成させるまでには8カ月ほどかかりました。良いものにしたい一心で、職場の元同僚のエンジニアに相談し、メンターとしてフィードバックをお願いしたりもしましたね。
そのおかげか、コロナ禍な上に未経験というハードルを乗り越え、今の会社にまずは業務委託で採用してもらえました。
あとから聞いた話ですが、採用の決め手は「自分の思いに沿ったポートフォリオを作っていたこと」と、「自分でメンターを見つけ出してレビューをもらえる環境を作り出したこと」だったそうです。まさに、パッション採用ですね。
矢貝さんが思う、エンジニアの3つの魅力
魅力1.自由な働き方で、毎日の幸福度が上がる
働く時間、場所がとにかく自由なのが魅力だと思います。私はもともと出社が得意ではなく……。今はフルリモートなので、ほぼ毎日家で働いています。
フルフレックスなので、働かなければいけない時間帯もありません。少し疲れたらカフェに行って長めの昼休みを取ったり、遅めに起きて10時ごろから業務をスタートすることもできます。
毎日の幸福度は確実に上がりました。
今後、結婚や出産などでライフステージに変化があったとしても、エンジニアの働き方なら柔軟に対応できます。
社内の女性エンジニアにも、子育てと仕事を両立している方が当たり前にいるので、自分の将来もイメージしやすくなりました。
魅力2.プロダクト開発の「文化祭の準備」のような楽しさ
エンジニアと聞くと、パソコンに向かって黙々とコーディングしているイメージがあるかもしれません。実際には、たくさんの人とコミュニケーションをとりながら、業務を進めています。
特にプロダクトのリリース日に向かって「ユーザーさんにいいものを届けるぞ!」とみんなで一致団結して開発を進めているときは、まるで文化祭の準備をしているような楽しさやワクワク感があって本当に楽しいんです。
魅力3.性別関係なく、頑張り次第で評価も収入も上げられる
エンジニアは、頑張ればいくらでも自分の価値を上げていける職業です。社内にも半数近く女性エンジニアがいて、性別関係なく評価されます。
理系でメカニックなイメージから、男性の方が向いていると思われがちですが、実際はエンジニアにもいろいろなキャリアがあるんです。
知識と技術でスペシャリストを目指す道もあれば、技術をベースにプロダクトマネジメントやピープルマネジメント能力を高めていく道もある。
私自身はプロダクト開発への興味が強いので、エンジニアリングとユーザーインタビューなどを通した顧客理解・UXデザインをかけあわせて、プロダクトエンジニアとしてキャリアアップしていきたいと思っています。
また、市場価値の高い職業でもあるので、自分次第で高収入も狙えます。私自身、前職と比べて年収は大幅にUPしました。
「コードを書くのが面白い」がスタートライン
エンジニアと聞いただけで、「私には無理」と思う方も多いですよね。
私の感覚ですが、コードを書く作業を楽しいと思えるかどうかは、人によってはっきりと分かれます。苦手な人は英数字の羅列を見ただけでギブアップしてしまう。
なので、もしエンジニアという仕事に少しでも興味があって、コードを書くことが面白いと思えているのなら、すでにスタートラインに立っています。
もちろんたくさん学ばなければならないし、簡単な仕事ではありませんが、最初からハードルを上げすぎず、まずはスモールステップで少しずつ進んでいってほしいと思います。
私も学習中はスモールステップを意識していました。
まずは「1+1=2」のような簡単な文法から学び、それができたらチュートリアルを参考に、お手本のまねをしながら簡単なツールを作ることに挑戦して、それができたら、次は今まで習ったことをもとにオリジナルのポートフォリオサイトの作成に挑戦する。
少しずつレベルを上げることで着実にステップアップしていきました。
キャリアチェンジ後も、このスモールステップの意識は大事にしています。
最初は仕事に食らいついていくのに必死でしたが、小さな文言修正やバグ修正からコードに慣れていき、数を重ねるうちに気付いたら新規開発に関われるようになっていました。
正社員採用を見据え、8カ月間の業務委託期間中に仕事のできるエンジニアであることを示したい、という思いがあったので、上司にスパルタ指導をお願いし、常に自分のレベルより少し上のタスクをもらうようにしていたのも効果的だったのかなと。
今ではコードを書くだけではなく、ステークホルダーとのコミュニケーションから要件定義をし、開発に落とし込んでいく仕事にも関わっています。
特にユーザーインタビューによる仮説検証を繰り返しながらプロダクトの方向性を定めて実装していく「デザインスプリント」という開発手法が好きですね。
以前から「やりたい」と言い続けていたら、携わる機会をいただけました。
今は毎日がとても楽しいです。矢貝さん愛用ツール「ノートパソコンスタンド」
ノートパソコンは視線が下がり、前かがみの姿勢になりがち。長時間操作していると、手首が痛くなったり、肩や首が凝ったりしてしまいます。
そこで正しい姿勢を保ち、目や肩・手首の疲れを軽減するために、ノートパソコンスタンドを使っています。
パソコンスタンドを使えば、正しい姿勢でパソコン操作ができるので、肩や腰への負担も改善されます。
私のように長時間パソコンと向き合うことが多い方に、ぜひおすすめしたいですね。
取材・文/宮﨑まきこ 編集/石本真樹(編集部) 写真/ご本人ご提供
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