「手に職付けて長く働きたい」女性にこそ、日本交通の女性ドライバーが“今ねらい目”なワケ

フレキシブルな働き方や、手に職が付くこと、収入やキャリアアップ……。転職で全てをかなえたいけれど、それは難しいだろうと諦めてしまう女性は少なくない。そんな人に今、転職市場で注目を集めている「タクシードライバー」という選択肢を紹介したい。
一昔前まで「男性の仕事」という印象も強かったドライバー。しかし近年では、先に挙げた希望がかなう好条件の求人として、女性転職者からの人気が高まっている。
そこで今回は、タクシー・ハイヤー業界トップの売上を誇り、女性社員の活躍を促進する「さくら小町プロジェクト」を立ち上げた日本交通を訪れた。
話を伺ったのは、「タクシードライバーを女性の憧れの仕事にすること」を目指す同社代表取締役社長 若林泰治さんと、実際に乗務員として働く二人の女性ドライバー。
同社ではどのように「ドライバーを女性の憧れの仕事に」しようと工夫を凝らしているのか。実際に働くドライバーたちはどう感じているのか。プロジェクトの取り組みから、日本交通の“知られざる女性タクシードライバーの仕事”の魅力に迫る。
タクシー業界全体のイメージを一新する「日本交通さくら小町プロジェクト」
そもそもなぜ、女性タクシードライバーが注目されているのか。その背景には、業界全体の女性比率の低さを改善しようとする企業の動きがある。
長年にわたって業界売上トップを誇る日本交通でも、女性社員の活躍を促進する「さくら小町プロジェクト」が2023年8月に立ち上げられた。
近年ドライバー不足は業界全体の課題であり、国の政策課題の一つにもなっています。そこで当社では、まずは女性ドライバーを増やし活躍の幅を広げていくことで、業界全体のイメージを変え、より注目していただける魅力ある職業へと成長していこうと考えました。
お客さまの反応やアンケートによると、細やかな気配りや柔らかい雰囲気の接客などを高く評価される女性ドライバーはとても多いです。女性ドライバーが増えることで企業全体のサービスの質にも良い変化が生まれると確信しました。

日本交通株式会社
代表取締役社長 若林泰治さん
1989年に日本交通に入社し、営業部門、人事・労務部門等を経て、常務執行役員管理部長として本社部門全般を管掌。2020年、代表取締役社長に就任。次世代のモビリティーサービスの提供と業界全体の発展を目指し、女性社員の活躍を促進する「さくら小町プロジェクト」に積極的に取り組んでいる
プロジェクト発足後、女性社員がより働きやすく活躍できる環境づくりや、女性ドライバー活躍の認知向上などへの取り組みがスタートした。
社内の女性ドライバーへのアンケートやインタビュー、各営業所内でのミーティングなどを行い、その声をもとに、さまざまな制度・環境の整備を進めました。
例えば、勤務シフトのパターンを選べるようにしたり、妊娠出産時の勤務について制度を整えたり。女性専用休憩室、大きな鏡やドライヤーなどの設備も整えたほか、安全・安心に乗務できるように、運送約款へのカスタマーハラスメント行為の明記、新型ドライブレコーダーと24時間対応無線センターを活用したSOS通報体制の整備なども行いました。運転席をセパレーターで囲む車両の試作も進めています。
目の前の制度や設備を整えるだけではなく、女性ドライバーとして「長くキャリアを築いていく」という視点でも改革を進めていると、若林さんは続ける。
女性が自分の意志で、リーダーとして活躍の場を広げたり、前職や子育て・介護などの経験を活かせる業務を拡大したり、資格・専門知識が身に付く制度を整えたりもしています。今後は女性初の営業所長も誕生していくことでしょう。ますます女性活躍の場は広がっていくと考えています。
社内で「長く活躍を続ける女性のロールモデルをどんどん増やしていきたい」と話す若林さん。業界トップとして見据えるのは、業界全体の良い変化だ。
業界全体が変革の時期を迎えた今、当社の取り組みが浸透していけば、今後はさらに女性ドライバーが活躍できる環境が増え『ドライバーが女性の憧れの仕事』という理想にも近付いていくはずです。
「またあなたの車に乗りたい」の言葉が何よりもうれしい
ここからは、実際に日本交通でドライバーとして働く2名の女性乗務員にもインタビューに参加してもらった。話を聞かせてくれたのは、社内の認定資格『スリースター乗務員』※を持つ中村優美さんと、介護福祉士から転職したという若林 希さん。
彼女たちはなぜドライバーの道を選び、どんなところにやりがいを感じて働いているのだろうか? 若林社長と共に話を聞いた。

スリースター乗務員
中村優美さん(40歳)
二児の育児と仕事を両立できる環境を求めて、2018年12月に日本交通に入社。現在は早番乗務員として勤務。スリースター乗務員の資格を取得し、班長として新人乗務員の研修、育成なども担っている
そもそも、お二人がタクシードライバーに転職しようと思ったのはなぜでしょうか?
私は以前コールセンターでヘルプデスクをしていて、突発的な残業が発生することが多い職場にいました。シングルで2人の子どもを育てている中で、残業して夕飯が21時半を過ぎてしまうこともあって……。
そんなとき、タクシードライバーをしている知人から「定時で帰れるよ」という話を聞いたんです。もともと運転は好きだったので日本交通の面接を受けたところ、思っていた以上に柔軟な働き方ができると知り、入社を決めました。
私は前職が介護福祉士で、給料は上がらない、残業もすごく多い環境でした。転職を考えたときに、介護の送迎業務で運転することが楽しかったので、これが仕事になったらいいなと考えたんです。
日本交通ではご年配の方や体の不自由な方のお出かけをお手伝いするEDS(エキスパート・ドライバー・サービス)の「サポートタクシー」※というサービスを提供していると知り、介護スキルが活かせると感じたことも決め手の一つでした。

若林 希さん(45歳)
介護福祉士として勤務した後、2023年9月に日本交通に入社。現在は遅番乗務員として勤務。今後の目標は「EDS(エキスパート・ドライバー・サービス)」の資格を取得し、「サポートタクシー」のサービスを提供すること
どんな時に、仕事のやりがいを感じますか?
お客さまから感謝される瞬間が、何よりうれしいですね。また私は『スリースター乗務員』を取得して、班長(乗務員のまとめ役的な職務)を務めています。そのため後輩の育成や運行管理のサポートなどを通じて、より一層お客さまの期待に応えられるサービスを提供していきたいと、モチベーション高く働くことができています。
私もお客さまからの言葉がやりがいですね。「またあなたの車に乗りたい」と言ってもらえたり、タクシー配車アプリのレビューで「細やかな気遣いに感動した」と書いてくれる方もいたり。涙が出るほどうれしいです。
あとは、日本交通のサービス品質の高さが広く世の中に認知されているため、“選んでいただける誇り”を感じることもできます。
誇り、ですか?
ええ。日本交通では、言葉使いからドアの開け方、傘の持ち方まで徹底的に研修を受けるので、乗務員は全員、高いサービス・スキルがあるんです。
勤務中はピシッと背筋を伸ばし、ホスピタリティの高いサービスを提供すること自体がやりがいにつながっています。

今、わが社では「さくら小町プロジェクト」を進めていますが、女性ドライバーとしてどう感じていますか?
プロジェクトによって、仮眠が取れる女性専用の休憩室ができて、綺麗で過ごしやすくなりました。「何か足りないものはない?」と定期的にヒアリングしてくれるのもうれしいです。
若林さんは、制度や設備環境などで「あったらいいな」と思うことはありますか?
私が勤務する営業所には、男性向けの大浴場があるので、女性専用の大浴場もあったらいいな、と思います。
それ、いいですね! あったらうれしい。
今後の検討事項の一つになりそうですね。
それと、海外からのお客さまに接する機会がすごく増えたので、英会話も習得したいと考えていて。会社で英語の勉強をサポートしてくれる環境があればいいなと思います。
いいですね! こうして現場から声が挙がると検討もしやすいです。
働き方・収入・キャリアアップ…転職でかなえた理想の仕事

転職して、かなえたかったことは実現しましたか?
まず働く時間が明確に決まっているので、転職してからは残業することがなくなりました。タクシーの仕事は2日分を1日で働く「隔日勤務」という働き方が主流なので、乗務明けやお休みの時間をまとまって取ることができるところも自分に合っていましたね。
丸一日子どもたちと一緒にいられる時間が増えたことは、転職で実現したかったライフスタイルの一つです。
収入も増えたので、趣味のサーフィンやゴルフなども存分に楽しんでいます。平日休みの日は道も空いているし、ゴルフ場の予約も取りやすいので最高です(笑)
私はお給料が倍近くにアップしました。前職の介護の仕事と違って、がんばればがんばるほど稼げる仕事なので、それも一つのやりがいになっています。
お二人とも、前向きに仕事に取り組んでいるからこそ、やりがいや理想の働き方につながっていくのかもしれませんね。
おっしゃる通り、仕事に対する姿勢や取り組み方は大切ですよね。では今後、お二人が挑戦したいことはありますか?
あと10年ほど、子どもが巣立つ時期になったら、個人タクシーとして独立することを目指しています。日本交通では、個人タクシー事業者と業務提携する取り組みもスタートしていて、個人事業主として独立した後も日本交通ブランドで営業を続けることができます。
無線配車、専用乗り場、タクシーチケットなど日本交通グループの営業基盤を利用でき、それまでの乗務経験をそのまま活かせる新しいキャリアパスを提示してくれたので、それを目標にすることができました。
私は英語を学んだり、介護職で身に付けた知識やスキルを活かしたりしながら、「あなたにお願いしたい」と言っていただけるドライバーになることが大きな目標です。
今回お話している中で、お二人に共通しているのは、向上心を持って楽しく仕事に取り組める姿勢だと感じました。お二人のように前向きに働くドライバーを増やすために、今後も女性の働き方改革に期待してもらえたらと思います。

最後に「さくら小町プロジェクト」の運営メンバーと記念写真を撮影
取材・文/上野真理子 撮影/赤松洋太