もし今28歳だったらどんな会社に転職する? 起業家4人に聞いた転職先選びの軸

採用&ビジネスのプロが解説
2025年「女性の転職」大予測

2025年の転職市場はどうなる? 女性採用が活発化する業界は? 最新の転職市場動向や、後悔しない転職を実現するために知っておきたい会社選びの新しい視点について、採用・ビジネスのプロが解説します!

SHE代表 福田恵里さん Waris共同代表 田中美和さん ポジウィル代表 金井芽衣さん Cynthialy代表 國本知里さん

28歳は、女性の働き方・生き方に人それぞれの違いが出やすい時期。30代を目前に控え、働き方を見直したり、新しい業界・職種の仕事にチャレンジしたり、転職を検討する人も多いはず。

でも、そこで迷うのは、この貴重な時期をどんな環境で過ごすのか、ということ。ワークライフバランスが充実する会社、スキルアップできる会社、収入が良い会社……転職先選びの優先順位がつけられなくなってしまうこともあるでしょう。

そこで今回は、女性のキャリア・採用事情に詳しい4人の経営者に「もしも28歳の会社員だったら、どんな企業に転職したいか」をテーマに仕事選びの軸についてヒアリング。

「自分らしく働く」をかなえた先輩たちは、28歳を実際にどんなふうに過ごし、どんな視点で働く環境を選ぶのでしょうかーー。

Question

【Q.1】28歳の時にどんな仕事をしていた?
【Q.2】もしも28歳で転職するなら、どの会社を選ぶ?
【Q.3】もしも28歳で転職活動をするなら、どんな視点で会社を選ぶ?

SHE代表取締役 福田恵里さん:「当たり前」をぶち壊している会社

リスキリングを通じた女性のキャリアアップ支援事業を行う『SHEllikes』を展開するSHE代表取締役の福田恵里さん。

SHE株式会社 代表取締役 / CEO・CCO 福田恵里さん

SHE株式会社
代表取締役 / CEO・CCO
福田恵里さん

1990年生まれ。大阪大学在学中、サンフランシスコ・韓国に留学。帰国後、ウェブデザイナーとして制作会社でインターンをする傍ら、初心者の女性限定のウェブデザインスクール「Design Girls」を立ち上げる。2015年リクルートホールディングスに新卒入社。ゼクシィやリクナビのアプリのUXデザインを担当。2017年、26歳の時にミレニアル女性向けのキャリア支援を行うSHE株式会社を設立。主要事業である「SHElikes」は累計受講者17万人以上を突破。2020年に同社代表取締役/CEOに就任
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【Q.1】28歳の時にどんな仕事をしていた?

福田さん

私が28歳の時は、SHEを起業して1〜2年ほどたったタイミング。事業の立ち上げがなかなかうまくいかず、試行錯誤して一部サービスのピボット(他の事業に転換)をしていた頃です。

前職でのリーダー・マネジャー経験もなく、事業立ち上げ経験もない

全てが手探りな中でチームをつくり、失敗しながらも少しずつ事業をつくり上げていくプロセスはとても楽しく、「自分で自分の人生の手綱を握る」感覚を初めて得た時期でした。

仕事は与えられるものではなく、創り出すものである」という価値観もこの時に形成され、今もずっと自分の中に根付いています。

【Q.2】もしも28歳で転職するなら、どの会社を選ぶ?

福田さん

一番は「起業」だなと思いつつ、会社員として転職するのであれば、CRAZYヘラルボニーatama plus を選ぶと思います。

社会の格差や不均衡の是正に取り組んでいたり、今までの当たり前や固定観念を覆して新たな価値を創造していたりする会社が好きなので、

・CRAZY:今までの婚礼業界の常識を壊している
・ヘラルボニー:障がいのイメージ変容と新たな文化を創出している
・atamaplus:画一的な日本の教育を変革している


という点がそれぞれ魅力的です。

【Q.3】もしも28歳で転職活動をするなら、どんな視点で会社を選ぶ?

福田さん

「未来にどんな人間になっていたいか」がまず起点になるかと思います。

私の場合、「100年後の当たり前になるような文化をつくりたい」という思いがあるので、それを体現している会社、当たり前をぶち壊している会社というのが一番の軸になります。

その上で、裁量権があることや手を挙げたら何でもやれる自由な風土もポイントです。

28歳って、まだまだリスクが取れる年齢だと思うので、どんどんチャレンジさせてもらえる環境に身を置く方が、将来の選択肢が何倍にも広がります。

会社のネームバリューより、自分で手を挙げて打席に立てるかどうかが、その後の10~20年のキャリアを左右すると思いますね。

【ポジウィル代表取締役 金井芽衣】多少しんどくても「負荷」がかかる会社を選ぶ

続いて紹介するのは、キャリアトレーニング領域のパイオニア企業であるポジウィル株式会社の代表取締役、金井芽衣さん。

ポジウィル株式会社 代表取締役 金井芽衣さん

ポジウィル株式会社
代表取締役
金井芽衣さん

1990年群馬県出身。埼玉純真短期大学で保育士・幼稚園教諭の免許を取得した後、2010年に法政大学キャリアデザイン学部に編入。キャリアカウンセリングを習得する。2013年、リクルートキャリアに新卒入社し、人材会社の法人営業(RA)として勤務。2017年に国家資格キャリアコンサルタントとして登録。同年8月にポジウィル株式会社を設立し、同社代表取締役に就任
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【Q.1】28歳の時にどんな仕事をしていた?

金井さん

28歳は、起業して2年目でした。1年目の時は(会社を登記はしてたものの)フリーランスとしてそれなりに稼げればいいやと思ってたけれど、「仕事がつらくない」ことが逆につらくなってしまい、頑張ることを決意しました。

20代で頑張れない人は、その後の人生も頑張れないような気がして、結婚や出産を早くしたい思いを一旦横に置き、仕事に全振りしたことで、自分が想像し得ないような未来に繋がったように思います。婚活を辞めたのもこのタイミングでした。

【Q.2】もしも28歳で転職するなら、どの会社を選ぶ?

金井さん

delySmartHRを選ぶかもしれません。

理由は、経営チームとして高いレベルで機能しているため、会社を経営する難しさやこだわりをより近くで見られそうだから。

前職のリクルートキャリアも良い会社でしたが、階層があり役員陣とはたまに話せる程度だったので、今思えばもっと経営者の近くで働ける環境で、ハードワークをしておいても良かったかもしれません。

delyはとにかく事業としてニーズがあることを着実に成長させ、さまざまな領域で伸ばしていて、SmartHRは、組織や事業をつくっていく中での戦略性がとにかくすごい。

スピード感を持って着実に事業を伸ばしていくためには何をしたらいいのかが見えるような気がします。

【Q.3】もしも今28歳に戻って転職活動を行うとしたら、どんな視点で会社を選ぶ?

金井さん

30代を迎える前の修行として、「ここでだったら力がつきそうか」「なりたい30代の姿に近づけるか」かなと思います。

今が一番若いということを考えると、着実に未来に繋がる時間にすべきだと思うので、少々しんどくてハードワークだったとしても、あえて負荷をかけた方がいいタイミングだなと思います。そこにベットする価値があるのかというのは軸になると考えています。

【Cynthialy代表取締役 國本知里】「成長産業」に身を置ける会社を選ぶ

次に登場いただくのは、生成AIに特化した事業変革・活用定着コンサルティング・開発支援を行うCynthialy株式会社、代表取締役の國本知里さん。

Cynthialy株式会社 代表取締役 國本知里さん

Cynthialy株式会社
代表取締役
國本知里さん

大学院卒業後、SAPにてHR、SaaS法人営業を経験後、AIスタートアップでの事業開発マネジャーとして、大企業向けAIビジネス新規事業・営業・マーケに従事。その後、DX・AIスタートアップの支援会社を創業、マーケティング・PR立ち上げ・DXハイクラスエージェントを立ち上げ。2022年10月にCynthialyを創業し、生成AI活用人材の育成事業を推進。情報経営イノベーション専門職大学 客員教授
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【Q.1】28歳の時にどんな仕事をしていた?

國本さん

「AIによって未来の働き方が必ず変わる」という直感に従い、外資系IT企業を辞めて、設立されたばかりのAIスタートアップへ転職したのが28歳の時。

転職後、大手企業へのAI導入を推進する中で、生成AIにも注目していました。働いていくうちに、AIによって人々の能力がどれほど拡張できるかに魅了されていき、すっかりAIの虜に。

このスタートアップでの経験が、今成長産業となっている生成AIベンチャーの立ち上げ、生成AIの普及、そして新たな産業や価値創造といった今の活動へと繋がっています。 スタートアップ立ち上げを通して得られた自信は、今も私の力となり、未知の挑戦に立ち向かう勇気を与えてくれています

【Q.2】もしも28歳で転職するなら、どの会社を選ぶ?

國本さん

外資ならMicrosoftOpenAINVIDIA、日系ならベネッセホールディングスなどです。

やはり一番の成長産業である生成AI領域に携わるためには学び続けないといけないので、研究もプロダクトもNo.1である外資AI LLMなどでチャレンジするかなと思います。

ほかにも、ドメイン・独自データに強い日本企業の生成AI推進担当として、生成AIドリブン企業への変革に携わるのも面白いだろうなと。教育等のアナログ領域を変えていくお仕事もかなりチャレンジングですから。

【Q.3】もしも今28歳に戻って転職活動を行うとしたら、どんな視点で会社を選ぶ?

國本さん

3点あります。

①成長産業である
②AI時代に合わせて事業も変化できる会社カルチャーがある
③年齢・性別関係なく、チャレンジが出来、それが評価される環境である


これからのAI時代は働き方が本当に大きく変わっていきます。AIと共存する事業も増えていくでしょう。 その時に変化できるか、そして自分もその変革のためにチャレンジ出来るかは重要なポイントです。

國本さん

私は10年以上、変わらず「成長産業」というポイントを一番重要視しています。

これは新卒で入社したサイバーエージェントの藤田社長が「成長産業に身を置くべきである」と言っていた影響が大きいです。

AIのような成長産業はさまざまな事業が立ち上がり、最先端で場数が踏めます。

つまり、ビジネスパーソンとしての生涯価値を高められる経験が積めるということ。成長産業で経験したソフトスキルは、AIが発展したとしてもずっと求められるポータブルスキルになると確信しています。

【Waris共同代表 田中美和】裁量があり、マネジメント経験を積める会社を選ぶ

最後に紹介するのは、Woman typeでの連載も大好評だったWaris共同代表の田中美和さん。

田中美和

Waris共同代表・国家資格キャリアコンサルタント
田中美和

大学卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現日経BP社)入社。編集記者として働く女性向け情報誌『日経ウーマン』を担当。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェントWarisを共同創業。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」理事
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【Q.1】28歳の時にどんな仕事をしていた?

田中さん

新卒で入った出版社で編集記者として働く中で、女性を中心とするたくさんの方々に仕事やキャリアについてインタビューをしていました。

そういった仕事を通じて女性たちがたくさんの悩みや葛藤、不安を抱えながら働いている現実を知り、そのことが今の仕事(女性たちの多様な生き方・働き方をつくる仕事)につながっています。

【Q.2】もしも28歳で転職するなら、どの会社を選ぶ?

田中さん

もともと出版社に就職したのは「誰かがアクションを起こすきっかけづくりがしたい」という思いからでした。

何かをしたい、どこかに行きたい……そんなふうに思う起点となる情報を提供する仕事がしてみたいという思いを持っていました。

20代のころに編集記者としてさまざまな場所を訪問し、多様な方々のお話を聞けたのは今でも大きな財産となっているので、今自分が20代だったとして転職するとしても、最先端の人々やテクノロジーに出会えるメディアやIT系の会社を選ぶように思います。

【Q.3】もしも今28歳に戻って転職活動を行うとしたら、どんな視点で会社を選ぶ?

田中さん

28歳は新卒から数年が経過し、ある程度社会人としての経験とスキルを身につけている段階。

そしてここから本格的に経験とスキルを深めていく時期にあたるので、以下の二つの視点を大切にすると思います。

一つ目は、挑戦できる環境かどうか

裁量権を与えてくれる環境かどうか、より難度の高い業務にチャレンジさせてもらえるか、任せてもらって成長できるかどうかを重視します。

女性を含む多様なメンバーが活躍しているか重視したいです。

田中さん

二つ目は、マネジメント経験が積めるかどうか

一つ目の内容とも重なるのですが、女性としてリーダーやマネジャー、ピープルマネジメントの経験が積めることも大切にしたいです。

これまで事業を通じて2000名以上の女性たちの転職や独立をご支援する中で、女性のキャリアにとって年齢と経験のバランスは非常に重要だと感じています。

30代後半から40代になると実務としての経験の深さはもちろん、マネジメント経験の有無も求められるので、それらを意識して28歳ごろからキャリアをとらえていくのが大切。

田中さん

一方で、30~40代はさまざまなライフイベントがあり、転職はもちろんフリーランスのような組織にとらわれない働き方を選ぶ女性もいます。

その時も、重要になるのは、売りになるコアスキル(核となる力)

営業やマーケティング、人事、経理など自分の「好き」や「得意」が活かせる仕事の分野を発見し、そこで企画から実行まで一通りの業務を自律的に進行できるように経験を積んでおくことが人生の選択肢を広げると感じます。

働いている女性

今回話を聞いた4人に共通しているのは、多少の負荷がかかっても、将来を見据えて「チャレンジができる」「力を付けられる」環境を選びたいということ。

28歳はまだ冒険ができる年齢。これからライフステージが変わっても、社会がめまぐるしく変化しても、自分らしい働き方を選択できる自分であるためには、何を軸に転職先を選べばいいのか。

ぜひ4人の女性たちの視点を参考にしてみてください。

編集/光谷麻里(編集部)