
柏木由紀、野呂佳代、和田彩花、びっくえんじぇる/「アイドルらしからぬ」女性たちの“私”を貫く働き方
「女なんだから、もっと愛嬌よくしなよ」
「常識的に考えたら、こうあるべき」
職場や社会に存在する“らしさ”や“するべき”の圧力。自分の気持ちとは裏腹に、周りが求める「理想の姿」を演じてしまったり、本当の意見を言うことをためらったり……。そんな日々は、少しずつ心をすり減らしていくものです。
そこでご紹介するのは、世間の「アイドルらしさ」という大きな固定観念に、力強く立ち向かってきたアイドルたちのストーリー。
柏木由紀さん、野呂佳代さん、和田彩花さん、そして「びっくえんじぇる」の3人。
彼女たちが過去Woman typeで語ったインタビューから、自分らしく働くためのヒントをもらってみましょう!
柏木由紀:「みんなが辞めるから」は選ばない。組織の中で“自分だけの役割”を創り出す仕事術

AKB48歴代最長の17年間、第一線で活躍し続けた柏木由紀さん。
20代後半、同期が次々と卒業していく中で「自分も辞めないといけないのでは」という焦りを感じたと言います。
しかし、彼女が選んだのは「グループに残る」という選択。
「アイドルは20代まで」──そんな固定概念を覆し、30代というキャリアと年齢を武器に「後輩育成」や「コンサートのプロデュース」など、自分にしかできない新たな役割を自ら創出してきました。
30歳を迎えるまでにいろいろ考えたんですけど、やっぱり、「みんなが辞めるから辞める」っていうのは嫌だなって思ったんですよ。
本当は「楽しい」って思ってるのに、みんなが辞めるから辞めるっていう選択をしてしまったら、すごく後悔するかもしれない。
もし後悔することになったら、人のせいにしてしまいそうなのも嫌だった。
最後まで「自分が決めたことだから」と思えた方が絶対にいいので、グループの中で最高齢だろうと、歴代最長の在籍期間だろうと、納得するまでここで頑張ろうと決めました。
野呂佳代:「やり切った」経験が次への力に。意図せぬ回り道で“本当の自分”に出会う方法

AKB48時代、「もっとかわいく振る舞え」「アイドルらしく」という言葉に苦しみ、「ありのままの私」を受け入れてもらえない葛藤を抱えていた野呂佳代さん。
そんな彼女が自分に問い続けたのは、「自分がここでできることは、全部やり切ったっけ?」という言葉でした。
「この仕事は自分に合わないな」「ここは自分の居場所じゃないのかも」と思ったらまず、「自分がここでできることは、全部やり切ったっけ?」と考えるようにしていて。
合わないなら切り替えることも大事だと思うんですが、その前にやれることをやって、それでもダメだったら初めて転職を選択肢に入れます。
そうしないと、納得して次に進めないから。
今の場所から逃げる前に「やり切った」かを自問する。一見遠回りに見える道も、全力で取り組めば「自分らしい未来」につながることが分かります。
和田彩花:「なぜダメなの?」と問い続ける。“らしさ”の檻を壊し、未来を自分で決める覚悟

「私の未来は私が決める」。そう力強く宣言したのは、アイドルグループ・スマイレージ(現アンジュルム)の初代リーダーを務め、現在はフェミニズムやジェンダーについて発信を続ける和田彩花さん。
彼女は、世間が押し付ける「アイドルは意見を持つ必要はない」「ただ笑顔でいて」という圧力に、強い違和感を抱いていました。
思ったことを言葉にして伝えているだけなのに、アイドルである私が「主体性」を持っていることがどうしても気に入らない人がいるようです。
「そんなに不満なら、“アーティスト”になれば?」という意見もあるかもしれません。ですが、どうしてアイドルだとそれができないのでしょうか。アイドルには、誰かが用意したステージで歌って踊ることしか許されないのでしょうか。そんなことはないはずです。
「らしさ」にとらわれ続けるのは、私の生き方ではないなと思いました。
だから私は、アイドルという立場で声を上げ続けたいと思っています。誰もが自分の個性を押しつぶさずに生きていける未来をつくるために。
びっくえんじぇる:「笑われたら、見返せばいい」。コンプレックスを“最強の武器”に変える逆転の発想

取材当時、総重量280キロ超えの「肥満落下系堕天使アイドル」、びっくえんじぇる。
「デブなのにアイドル?」とステージで笑われたり、「クソデブ」と罵声を浴びせられたりすることもあると言います。
しかし、彼女たちはその悔しさを「バネ」に変え、コンプレックスを隠すのではなく堂々とさらけ出すことを選びました。
悔しさがバネになっているところはありますね。
「私たちのことをバカにした人たちから絶対に拍手をもらってやろう!」って気持ちでステージに立ったら、ものすごく良いパフォーマンスができて、びっくりするぐらいの拍手をもらえたことがあったんですよ。
笑われたり見下されたりしても、私たちが一生懸命パフォーマンスをすることによって、少なからず人の心を動かせるって自信はありますね。