縁結び・縁切り神社って本当に効果やご利益あるの?20~30代女性が知っておきたい神社の効果と賢い活用法【専門家解説】
「今年こそ結婚したい」「素敵なパートナーに出会いたい」と願って縁結び神社へ行く人もいれば、「腐れ縁を断ち切りたい」「人間関係をリセットしたい」と密かに縁切り神社を調べる人もいるだろう。
特に20代後半から30代にかけては、恋愛、仕事、人間関係の悩みが増える時期。「神頼み」をしたくなる瞬間も多いはずだ。
しかし、ふと冷静になった時、こんな疑問が頭をよぎることはないだろうか。
「神頼みして、本当に効果があるの?」 「縁切りなんて、なんだか怖い……」
そんな女性たちの疑問や不安を、『教養として学んでおきたい神社』(マイナビ新書)の著者で宗教学者の島田裕巳先生にぶつけてみた。
意外と知られていない「神社の効果」と、ご利益を最大化する「賢い活用法」とは?
宗教学者・島田裕巳さん
作家、宗教学者。東京大学文学部卒業、同大学大学院人文科学研究会博士課程修了(専攻は宗教学)。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、同客員研究員を歴任。現代における宗教現象、新宗教運動、世界の宗教、葬式を中心とした冠婚葬祭など、宗教現象については幅広く扱う。著書に『無縁仏でいい、という選択 墓も、墓じまいも、遺骨も要らない』 (幻冬舎新書)『神社から読み解く信仰の日本史』(SBビジュアル新書)など。X
「縁結び神社」に行くと良縁に恵まれる“本当の理由”
そもそも、縁結びのご利益とはどのようなメカニズムで働いているのだろうか。
「神様が赤い糸を引っ張ってきてくれる」というファンタジーを信じたい反面、論理的な理由も知りたいところ。
島田先生は、その効果を「自分の心をポジティブな方向に変えるスイッチ」だと解説する。
良い縁に恵まれるためには、まず自分自身が良い縁を引き寄せるための資質や環境を整える必要があります。「類は友を呼ぶ」と言うように、自分がネガティブな状態では良い出会いは望めません。
だからこそまずは、自分の心を前向きな方向に変えていけるかどうかが、良縁への第一歩なのです。
島田先生によると、縁結び神社へわざわざ足を運ぶという行為そのものが、心のチューニングになっているのだという。
例えば、出雲大社のような遠方の神社へ旅行を兼ねて参拝に行くとします。すると「わざわざ出雲まで行ったんだから、きっと良いことが起きるはず」という高揚感が生まれますよね。 そのポジティブな思い込みこそが重要なんです。
前向きな気持ちで日々を過ごしていれば、表情も明るくなり、結果として人が集まってくる。 神社は、その「良い循環」を作り出すためのきっかけとして機能していると言えるでしょう。
つまり、縁結び神社は魔法をかけてくれる場所ではなく、「私は幸せになれる」という自己肯定感をセットアップする場所なのだ。
良縁の前に知っておきたい、意外な「縁切り」の効果
縁結びというと、つい「新しい出会い」ばかりを求めてしまいがちだが、島田先生は「その前に意識しておきたい大切なことがある」と指摘する。 それが「縁切り」の視点だ。
20~30代ともなれば、これまでの人生で築いてきた人間関係は複雑なはず。
元彼への未練、腐れ縁の友人、職場の苦手な上司、あるいは「自信のない自分」……。そうした不要な縁を抱えたままでは、新しい良縁が入ってくるスペースがない。
縁結びを願う前に、これまでの縁がどういうものであったかを振り返り、「切るべき縁」を確認することは非常に重要です。
これは、いわば「人生の棚卸し」のような作業。自分にとって不要なものを整理し、身軽になって初めて、新しい縁を結ぶ準備が整うのです。
遊び半分で行ってはいけない「縁切り神社」の正体
京都の安井金比羅宮など、「縁切り」で有名な神社には、おどろおどろしい願いが書かれた絵馬が奉納されていることも多い。
「縁切りなんて、誰かを呪うようで怖い」「自分にも悪いことが返ってくるのでは…?」と感じる人もいるかもしれないが、島田先生はこれを「心のデトックス」として推奨する。
絵馬を見ると、自分の悪縁だけでなく、家族に関わる縁を切りたいといった切実な願いも多いですよね。
人にはこういった、誰にも言えないドロドロした本音や「あの人と別れたい」といった暗い願望がありますが、神様という「絶対的な他者」になら秘密として打ち明けられる。言葉にして吐き出すことによって、気持ちが静まる心理的な効果は非常に大きいのです。
誰にも言えない悩みを神様にだけ打ち明け、絵馬という形にして置いてくる。そうすることで「自分はもう、この悩みから解放されるんだ」という覚悟が決まり、気持ちがスッキリする。
現代の女性にとって、縁切り神社は「最強のカウンセリングルーム」なのかもしれない。
ただし、注意点もある。 それは「遊び半分で縁切りをしようとしないこと」だ。
縁切りは難しいがゆえに重要視される側面があり、中途半端な気持ちで行くと悪いことが自分に跳ね返ってくるという言い伝えもあります。遊び半分ではなく、それなりの覚悟を持って参拝することが大切です。
神社は自分を「ご機嫌」にするための場所
島田先生への取材を通して見えてきたのは、「神社とは、自分自身と向き合い、心をメンテナンスする場所」だということだ。
「縁切り神社」は不要な感情や人間関係をデトックスする場として。
「縁結び神社」は「良いことが起きる」と信じてポジティブになるきっかけとして。
神様にお願いして終わり、ではなく、神様という存在を借りて、自分の心を整え、ご機嫌な状態をつくること。そうすれば、自然と笑顔が増え、良い縁も巡ってくるはずだ。
次の休日は、スマホを置いて近くの神社へ行ってみてはどうだろう。
年末年始は、全国的に有名な縁結び神社…出雲大社(島根県)、東京大神宮(東京都)、川越氷川神社(埼玉県)、住吉大社(大阪府)、八重垣神社(島根県)、赤坂氷川神社(東京都)などに旅行に行くのもいいかもしれない。
心を整えたその瞬間から、運気はきっと変わり始めているはずだ。
取材・文/大室倫子(編集部)


