福原遥「高すぎる理想」で自分を追い詰め続けた20年…負のループから抜け出すために変えた二つのこと

福原遥「高すぎる理想」で自分を追い詰め続けた20年…負のループから抜け出すために変えた二つのこと

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Another Action Starter

日々の暮らしの中で、ちょっとしたチャレンジをすること。それが、Woman typeが提案する「Another Action」。今をときめく人たちへのインタビューから、挑戦の種を見つけよう!

福原さん

自分に対して高い理想を掲げては、「なんでできないの?」と自分を責めてしまう。そのくり返しで、自信を失ってしまうこともありました。

そう自身について語るのは、子役から活動をスタートし、27歳にして俳優歴20年を迎える福原遥さん。

近年は、大人の女性らしさをまとった役柄にも挑戦し、俳優として新たな顔も見せている。

できない自分を責めすぎて、チャレンジすること自体が苦しくなっていた過去。そこから、前向きに新しい挑戦を楽しめるようになるまでの軌跡をたどると、自分に厳しくなりすぎてしまう働く女性たちへのヒントになる、思考の転換が見えてきた。

カメラに向かってポーズをとる、福原遥さん

福原 遥さん

1998年8月28日生まれ、埼玉県出身。NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』、『明日はもっと、いい日になる』(フジテレビ)、映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』 ほか、数々の作品で主演を務める。2025年12月19日公開、スピッツの名曲を原案にした映画『楓』では、ヒロインとして福士蒼汰とW主演■X

人物像を理解し、落とし込むのが難しかった役へのチャレンジ

福原さんが挑んだ最新作は、多くのアーティストにカバーされ、発売から27年の月日を経た今も色あせないスピッツの名曲から誕生した、この冬一番の感動のラブストーリー映画『楓』。

演じるのは、最愛の恋人・恵(けい)を失い、喪失感から抜け出せないまま、自分なりの生き方を探していく主人公・亜子だ。

深い悲しみを抱えながら生きる亜子に手を差し伸べるのは、恵の双子の兄・涼。恵の代わりになることで亜子を救おうとする。

本作で、福原さんにとって最もチャレンジングだったのは、亜子という複雑な女性像をどう解釈し、表現するかだったという。

福原さん

亜子を自分の中に落とし込むまでに、かなり時間がかかりました。でもその一筋縄で捉えられない部分もすごく人間らしいというか。

監督からもその「人間らしさ」を表現していきたいと言われていたので、亜子という人物とじっくり向き合って、理解を深めていく過程に時間をかけました。

映画『楓』場面写真

亜子の「人によってさまざまな捉え方ができる」側面は、スピッツの『楓』という楽曲とも重なると、福原さんは続ける。

福原さん

作中で「楓」は4回流れるんですが、歌われている方が違うので、それぞれ違う印象になるんです。

すごく前向きで温かく感じる「楓」もあれば、胸が締めつけられるように切なく感じる「楓」もある。それぞれの色に染められるこの楽曲は、スピッツさんの魅力が詰まってますよね。

そんなふうにみんなに寄り添ってくれる「楓」のように、多くの人に寄り添える作品になっていると思います。

「できない自分を責めない自分」になるために変えた二つの行動

劇中では、亜子が大切なことほど言葉にできず、次第に涼とすれ違っていく姿が描かれる。福原さん自身も、「本当につらいことほど、人には言えない」と感じることがあるという。

福原さん

話すとしても、一人か二人くらいですね。壁にぶつかったときは、自分と向き合う時間を大切にしています。

亜子は壁にぶつかる度におまじないを唱えて、自分で乗り越えていこうともがく。福原さんが自分自身と向き合うときに心でつぶやくのは、「なんとかなる」という言葉だ。

一見すると楽観的にも聞こえるが、そこにたどり着くまでには、長い葛藤があった。

福原さん

昔は、できないことがあると悔しくてすぐ泣いてしまっていたんです。

悔しい気持ちは原動力にもなると思うのですが、私はできない自分を責めすぎて、自信をなくしてしまっていました

カメラに向かってポーズをとる、福原遥さん

その裏側には、常に自分に高い理想を課してきた生真面目な一面がのぞく。

福原さん

理想を高く掲げすぎて、できないと「何でできないの?」と自分を責めてしまう。

目標を高く設定するのは悪いことではないけれど、自信を失って仕事を楽しめなくなってしまうのはもったいないなと、年齢を重ねるうちに感じるようになりました。

福原さん

だからまずは、「できない自分」も含めて、まるごと自分を受け入れることにしたんです。

「できないなら、じゃあどうしたらいいんだろう」って、今やるべきことを明確にして、周りと比べず、自分のペースで少しずつ進んでいけばいい。ようやくそう思えるようになりました。

今はSNSもあって、どうしても周りが見えやすいし、つい比べてしまいますよね。でも、比べても答えは出ないので、「自分は自分」と思うようにしています。

子役からスタートし、今年で芸歴20年。壁にぶつかったときも、「自分の成長につながる試練をもらえた」と前向きに解釈し、少しずつ考え方を変えていったという。

福原さん

いろいろな役柄をいただけて、挑戦できること自体がまずありがたいです。俳優を目指した頃から考えたら、こんな贅沢なことはないと思います。

比べる相手を「他人」ではなく、「昨日の自分」にする。高い目標に届かない時は、自分を責めるのではなく、できない自分を受け止めてあげた上で、「じゃあどうしたらいいか」と考える。

自分で自分を苦しめてしまっていた二つの行動を変えたことで、福原さんは「チャレンジを楽しめる自分」に近づくことができたのだろう。

自分を追い詰めないことを意識することで、未来は変わっていくのだ。

カメラに向かってポーズをとる、福原遥さん

物語のラストシーンは、ニュージーランドのテカポ湖で撮影された。絶景を目の前に、自分の存在と改めて向き合う経験をしたという。

福原さん

あまりにも景色が壮大すぎて、「無」になれました。この景色を見られたことで生きている実感が湧いてきて、幸せだなと思えたんです。

テカポ湖での体験は、大変なことがあったとしても「なんとかなる」と思える感覚を、福原さんの中にそっと残した。

気にしいな自分も、できない自分も受け入れた先に成長がある

昔から、「いろいろと気にしてしまう性格」だという福原さん。

できない自分を受け止めようと努力するようになってからは、そんな性格も丸ごと受け止められるようになったと話す。

福原さん

自分の性格は、ひと言では言えません。いろいろ考えてしまうし、気にしいな一面もある。

でもすべてが自分だから、それも含めてどうやって生きていこうか、最近はよく考えます。

福原さん

「できない自分」も含めて受け入れようと努力していますが、そう簡単にはいかないこともあります。でもそれができないのも、今の自分なんですよね。

気にしいな部分もあるけれど、寝たらすぐ忘れる楽観的な一面もあって(笑)。そんな風に、自分をよく知って、自分のご機嫌を取れるようになってきました。

自分の機嫌は自分で取る。オフの時間は思い切り楽しみ、旅行に行ったり、おいしいものを食べたりと、自分にフォーカスした時間を過ごすことで心に余裕を持たせる。

福原さん

仕事の現場でも、ちょっとした楽しみを見つけるようにしています。楽しみを見つけられるかどうかは、結局、自分次第ですよね。

カメラに向かってポーズをとる、福原遥さん

朝ドラのヒロインという一つの目標を達成して以降、シングルマザーや週刊誌記者、元刑事、遊女など、演技の幅をさらに広げている福原さん。これからチャレンジしたいことを聞くと、静かにこう語った。

福原さん

いろいろな役に挑戦したい気持ちはあります。でもまずは、自分自身を磨いて、引き出しを増やしていくことが大事かなと思います。

まだまだ知らないことはたくさんあるので、いろいろなことを身につけて、人としてすてきな存在になれたら、と思っています。

できない自分を責めていた過去を脱ぎ捨て、ありのままの自分とともに前へ進む。「なんとかなる」という言葉は、楽観視ではなく、自分を信じて進むための小さな勇気をくれる言葉だ。

もし今、新しい一歩を踏み出すことに迷っているなら、「なんとかなる」とつぶやいてみてほしい。心が少し軽くなり、ほんの少し前に進めるかもしれない。

取材・文/石本真樹 撮影/赤松洋太

作品情報

映画『楓』全国で大ヒット上映中

映画『楓』キービジュアル
<あらすじ>
僕は、弟のフリをした。君に笑っていてほしくて。

須永恵(福士蒼汰)と恋人の木下亜子(福原遥)は、共通の趣味の天文の本や望遠鏡に囲まれながら、幸せに暮らしていた。しかし朝、亜子を見送ると、恵は眼鏡を外し、髪を崩す。実は、彼は双子の弟のフリをした、兄・須永涼だった。1ヶ月前、ニュージーランドで事故に遭い、恵はこの世を去る。ショックで混乱した亜子は、目の前に現れた涼を恵だと思い込んでしまうが、涼は本当のことを言えずにいた。幼馴染の梶野(宮沢氷魚)だけが真実を知り涼を見守っていたが、涼を慕う後輩の日和(石井杏奈)、亜子の行きつけの店の店長・雄介(宮近海斗)が、違和感を抱き始める。二重の生活に戸惑いながらも、明るく真っ直ぐな亜子に惹かれていく涼。いつしか彼にとって、亜子は一番大事な人になっていた。一方、亜子にもまた、打ち明けられない秘密があったー。

■出演:
福士蒼汰 福原遥
宮沢氷魚 石井杏奈 宮近海斗
大塚寧々 加藤雅也

■監督:行定勲
■脚本:髙橋泉
■原案・主題歌:スピッツ「楓」(Polydor Records)
■音楽:Yaffle
■プロデューサー:井手陽子 八尾香澄
■製作:映画『楓』製作委員会
■制作プロダクション:アスミック・エース C&I エンタテインメント
■配給:東映 アスミック・エース

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Ⓒ2025映画『楓』製作委員会