条件はたった1つ!? 50代でフローレンスに入社した保育士女性が教える“生涯続けられる仕事”の見つけ方
定年まで勤めることが当たり前で、生涯仕事をし続けることが珍しくない男性に対し、同じようにずっと働き続けている女性はまだまだ少ない。「今後20年、30年と仕事を続けていくことが想像できない」「長く働きたいけど、『長く』って一体いつまで?」。周囲にロールモデルがいないからこそ、自分の将来の姿を思い描くのは難しいもの。そこでこの連載では、60歳を超えてもイキイキと活躍し続けている女性たちにインタビュー! 人生の大先輩の姿から、“生涯働き続ける”とはどのようなことなのかを探ってみよう。
50代で夫の病気が発覚。専業主婦から本格的に社会復帰
“生涯働き続ける”というのがこのインタビューのテーマなんだそうですけど、20代だった頃の私は、「ずっと働こう」と思っていたわけではいませんでした。今のみなさんのように将来的なキャリアパスなんて全然計画していなかった。
ただ、私は子どもが大好きだったので、短大を卒業してからは幼稚園教諭としてのキャリアをスタートさせました。その後27歳で結婚して、そこからは一度専業主婦に。
それから20年以上が過ぎて子どもたちも自立したころ、本格的に社会復帰をしてフローレンスで働くことになりました。建築士として働いていた夫が病気になり、仕事が出来なくなってしまったんです。それで、家族で話し合って、私がもう一度外に出て働くことに。50代も半ばを過ぎた頃のことで、“予想外”の再スタートでした。
保育は時代とともに変わる。毎日が学び続きで気持ちが若々しくなる
先ほど専業主婦をしていたと申し上げましたが、実はそれまでも週3回程度、自主保育という形で地域のお子さまを預かる仕事をしていました。だから、全然社会と接点が無かったというわけではありませんでした。ただ、フルタイムの仕事ではありませんし、満員電車に乗っての通勤もない。フローレンスで働き始めてからは毎朝電車通勤しているので、ラッシュ時にはびっくりしてしまいましたね。企業でお勤めの方はみんなこんな大変なことを毎朝やってらっしゃったのか……と尊敬してしまいました。
いざ家の外で働き始めると、今まで知らなかったいろんなことを発見できるんです。私の職場は、同僚の先生方に若い方が多いのですが、みなさん真面目で、私が20代だった頃と比較してもよく勉強されているんですよ。手遊びとか、パネルシアターとか、遊び方1つ取っても若い人たちから教わることがたくさん! この年齢になっても、新しいことを学んでいけるのは本当にありがたいこと。おかげで、気持ちも若返ったような気がしますね。
“好き”や“楽しい”を仕事にできたから、生涯ずっと続けてこられた
また、フローレンスで仕事を始めて再確認したのは、「子どもに関わる仕事はやっぱり私の天職だ」ということ。歩くことも、喋ることもできなかったお子さんが、自分の足で立って歩いたり、言葉を覚えたりする過程をすぐ側で見守ることができるのは、保育士だからこそ。
特に、私が勤めている「おうち保育園しののめ園」は小規模保育園。お預かりしているお子さんは常時10名程度です。以前幼稚園教諭をしていた時代は、1クラス40人もこどもを持っていたことも。今の環境は少人数だからこそ、一人ひとりのお子さんに寄り添った保育ができます。
怪我だけは絶対させないように。だからと言って何でも禁止をするのではなく、子どもたちの自立心や好奇心をしっかりと育んでいくことをモットーに。しっかりお子さんたちの行動や成長を見守りながら、保育をしていく。そんな職場の方針がよく合っているんですよ。
仕事ってつらいこともたくさんあると思います。でも、だからこそ楽しむ気持ちを持てるかどうかが長続きの秘訣です。私も子どもが好きだから、この年齢になっても仕事を続けていこうという気持ちを持てるんだと思います。実際、子どものいる場所で働ける毎日がすごく楽しい。だからみなさんにも、自分が本当に好きなことは何なのかを明確にするところから始めてほしいです。
まだそれが分からないという人も、焦ることなんてないですよ。私も何となく進学した短大で保育実習があったことをきっかけに、この仕事の面白さに気付きました。習い事でもいいし趣味でもいい。好きなことを見つけるきっかけなんてそれくらい小さなことで十分なのかもしれませんね。ちょっとでも興味のあることを気軽に覗いてみたら、いつのまにか夢中になっていたなんてことはよくあるものです。
あなたの頑張りは、子どもが必ず見てくれている
私も含め、保育士は日々我が子を預けて、お仕事へ向かうお父さんやお母さんを見送っています。これを読んでいる方の中には、子どもが小さいうちに他人に預けてまで仕事をすることに違和感や後ろめたさを持っている方もいるかもしれません。
でもね、親が真剣に仕事を頑張っていれば、ちゃんと子どもは見ていてくれるものなんです。一時的に寂しい思いをさせるかもしれませんが、分かってくれて、感謝してくれる日は必ず来る。それはこれまで長い間保育に携わってきた経験から、確信を持って言えます。
専業主婦として毎日おいしいゴハンを食べさせることも、社会に出て働き続けることも、本質的には同じ。親がイキイキと使命感を持って生きることが、最良の子育てなんです。ちゃんとひたむきにやっていれば、いつか子どもが大きくなったとき、あなたの頑張りを認めた上で応援してくれる日がやってくる。だから、もし生涯働き続けたいと考えていらっしゃるなら、“子どもがいるんだから”と自分の気持ちを犠牲にせずに、一生懸命あなたの信じた道を突き進んでください。
親御さんの頑張りや愛情を子どもたちが純粋に受け止められるよう、その子たちの心や体の成長をサポートすることが今の私にとっての大切な仕事です。1日の終わりにお子さんが「今日の保育園は楽しかった!」と言ってくれるような保育がしたいし、1日頑張って働いてきた親御さんを笑顔で「お帰りなさい」とお迎えしたい。そういう気持ちをずっと忘れず、これからも仕事を続け、自分自身の人生もまだまだ輝かせたいと思っています。
取材・文/横川良明 撮影/赤松洋太
※フローレンスの定年は65歳です
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