黒島結菜「経済力を持って強く生きる=自立」じゃない。自分と大切な人の“未来の守り方”
さわやかな朝ドラ俳優をへて、今や自立した女性として若い女性たちからの支持が高い黒島結菜さん。
黒島さんの最新作である映画『未来』では、貧困と虐待に悩む母子の姿が描かれている。黒島さん演じる篠宮 真唯子は、教師として過酷な運命を生きる教え子に手を差し伸べようとするが、その前に立ちはだかる壁は高い。
女性が自分の人生を舵取りし、自身や子どもの“未来”を守る力を持つためには、どうすればいいのか。黒島さんと一緒に考えていきたい。
黒島結菜さん
1997年3月15日生まれ、沖縄県出身。『ひまわり~沖縄は忘れないあの日の空を~』(2013年)で映画デビュー。『アオイホノオ』(14年・テレビ東京)で連続ドラマ初出演。同年に連続テレビ小説『マッサン』に出演。映画『カツベン!』(19年)で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。その他出演作に、ドラマ『時をかける少女』(16年・日本テレビ)『アシガール』(17年・NHK)、『クロサギ』(22年)、連続テレビ小説『ちむどんどん』(22年・NHK)、映画『プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~』(18年)、『明け方の若者たち』(21年)、『夏目アラタの結婚』(24年)、『港のひかり』(25年)など
今を生きる人たちに届ける“意味”のある作品にしたい
湊かなえさん渾身のミステリーを原作とする映画『未来』は、複雑な心理描写や緻密な伏線ゆえに、実写化が難しいと言われてきた作品だ。
父を亡くした悲しみ。心を閉ざした母との孤独な日々。母の新しい恋人による虐待。壮絶ないじめ。貧困。
そんな現実と闘う教え子の章子(あきこ)に、黒島さん演じる教師の真唯子は手を差し伸べるが、思うようにはいかない。
そんな中、章子のもとに「未来のわたし」から手紙が届くようになる──。
黒島さんは、本作の出演オファーを受けた際、「この作品は今の社会に必要だ」と感じたと話す。
この作品は、現代社会が抱える課題に一石を投じるテーマを扱っています。だからこそ、今を生きる人たちに届ける意味のある映画にしたい。そんな思いで、1シーン1シーン、集中力を切らさずに丁寧に演じました。
真唯子は、教え子の章子や、その母親の文乃(あやの)の存在があってこその役なので、現場でお二人と対峙したときに感じたことを大事にしていました。あまり踏み込み過ぎず、かといって離れ過ぎず。その距離感がとても難しかったです。
教師役は初挑戦。小・中学生という、大人へと変化していく繊細な時期の子どもたちとどう向き合えばいいのか、最初は不安もあった。
先生をしている友人ですら、子どもたちと向き合うのは難しいと言っていたので、少なからず不安はありました。
でも、一緒に過ごしていく中で、「子ども」として見るのではなく、一人の人間として対等に接すればいいのだと気付いたんです。
子どもたちと真摯に向き合い、対話を重ねるうちに、少しずつ教師としての自覚も芽生えていった黒島さん。「子どもたちが私を教師にしてくれた」と振り返る。
章子を救おうと奔走する真唯子だが、彼女自身も孤独や傷を抱えている。そんな真唯子にとって、同じアパートに住み、いつしか想いを重ね合わせるようになる原田勇輝(坂東龍汰)の存在は、一つの救いだった。
真唯子は表面上では拒否していますが、しつこく気にかけてくれる存在には、やっぱり救われますよね。
自分のことをこんなにも想ってくれている人がいることで、どれだけ安心できるか。それが希望につながると思います。
そして、この作品の大きなカギとなるのが、10年後の章子から届く手紙だ。つらい境遇にいる章子にとって、半信半疑ながらも、いつしか心の支えとなっていく。
疑いながらも手紙のやりとりを続けたのは、話を聞いてくれる相手がいる安心感があったからではないでしょうか。
手紙でのやりとりでは相手の顔は見えないけれど、文字から伝わってくる温かさが支えになっていたと思うんです。
誰かがどこかで気にかけてくれること。自分のことを想ってくれていること。決して生易しくはない現実を生きる私たちにとって、そんな人の存在は大きな支えとなる。
一人で全てをこなすことが、「自立」ではない
教師である真唯子も母親である文乃も、章子の未来を守るために全力を尽くす。だが、母子はどんどん追い詰められていく。
文乃はどうすれば、自分自身と娘の未来を守ることができたのだろうか。
生きる力を付けておくことは、とても大切だと思います。
私も子どもがいますが、もし一人で子どもを育てなければいけない状況になったとしても、自分と子どもの未来を幸せにできるだけの力は持っておきたい。
不測の事態に対応できるだけの準備をしておくことが自立であり、未来を守る力に繋がっていくのではないかと思います。
人生は何が起こるか分からない。病気や事故でパートナーを失ってしまうことだってあるかもしれない。
どんなことが起ころうと、自分と子どもの未来を守るための“準備”をしておくことは大切だ。
そして黒島さんの言う“準備”には、経済力や環境面だけでなく、周囲の人との関係性も含まれている。
親や友達など、相談できて、手を貸してもらえる人をちゃんと見つけておくことも、未来を守るための大切な準備だと思います。
いざという時に「助けて」と言える人を持つことが、自立につながっていくんじゃないかなと。
「自立」という言葉からは、何でも一人でこなす強さをイメージしてしまいがちだ。
だが、黒島さんの言う自立は少し違う。必要なときに助けを求められること。相談できる人がいること。頼れる状態をつくっておくこと。それが、自分と大切な人を守る力になる。
自分がいっぱいいっぱいだと、人のことを気に掛けられないじゃないですか。
自分を守るだけでなく、子どもや困っている人たちに手を差し伸べられる余裕を持つためには、大人もちゃんと助けてもらわないといけないと思います。
自分が幸せになれる生き方を選ぶ力を持つためには、「周りの人たちに助けを求める力」も必要。「助けて」と言えることは、強さなのだ。黒島さんの言葉は、私たちにそんな気付きを与えてくれる。
自分を大切にすることは、周囲の幸せに繋がる
では、周囲の人たちに素直に助けを求められる強さは、どうすれば持つことができるのか。
黒島さんは、「自分を大事にすること」がその一歩になると話す。
自分がハッピーでいないと、周りをハッピーにすることもできません。だからこそ、自分で自分を大事にすることは、日々意識しています。
自分を犠牲にしすぎると、周りにも気を回せなくなってしまいますから。自分に優しくすることは、周囲の人たちを幸せにすることにも繋がると思えれば、素直に助けを求められるのではないでしょうか。
私は毎日ゆっくりお風呂に入って、「今日も一日頑張ったな」って自分を褒める時間を大切にしています。
自分を大切にし、困ったら「助けて」と言い合えれば。手を差し伸べ合えれば。つらい現実を生きる人たちの未来にも、かすかな光が差し込むかもしれない──。
映画『未来』はつらい描写が多いが、タイトルである『未来』にはそんなかすかな「希望」が込められているのではないか、と黒島さんは話す。
過去があって、今があって、未来がある。全て繋がっているからこそ、未来のために今どう生きるかは大事だなと思います。
簡単ではないかもしれないけれど、明るい未来があると信じていれば、今を頑張れるはず。だからこそ、本作を通して「未来には希望があるんだ」ということを感じていただけるとうれしいです。
黒島さん自身は、どこまで先の未来を思い描いているのだろうか。
「50歳になったらやりたいこと」など、ぼんやりとしたイメージはありますが、どうなるかは分かりません。
だからこそ、未来に希望を見いだせるように、一日一日を大切にしながら、常に今がベストだと思って生活することを心掛けています。
仕事も子育ても、たくさん悩みながら、一生懸命毎日を過ごしていきたいです。
最後に、働く女性たちへのエールをお願いすると、黒島さんはまっすぐにこう言った。
やっぱり、自分を大事にすることが大切な人を守る第一歩だと思うんです。
働くことは大変だし、自分だけではコントロールできないこともたくさんある中で、みなさん頑張っていると思います。本当にお疲れさまです。
「あなたはとても頑張っているので、自分を大事にしてください」ということをお伝えしたいです。
「自分のことを気にかけてくれる存在」に救われる人は、きっといる。
だからこそ、まずは自分自身のことを大事にして、大切な人たちに手を差し伸べられるよう余裕をつくること。
それが、自分の人生を舵取りする力に繋がり、よりよい「未来」をつくるための、小さくても確かな一歩になるのかもしれない。
取材・文/石本真樹 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER) ヘアメイク/加藤恵 スタイリスト/伊藤省吾(sitor)
作品情報
映画『未来』2026年5月8日(金)全国公開
彼女の教え子・章子のもとにある日、一通の手紙が届く。
差出人は――「20年後のわたし」。
半信半疑のまま返事を書くことで、父を亡くした悲しみや、心を閉ざした母との孤独な日々に耐えていた章子だが、母の新しい恋人からの暴力、壮絶ないじめ、そして信じがたい事実が彼女を容赦なく追い詰めていく。
深い絶望の中、章子は唯一心を通わせる友人・亜里沙と「親を殺す」という禁断の計画を立てるのだった。
そんな章子を救おうと真唯子は、残酷な現実と社会の理不尽さに押しつぶされそうになりながら、それでも手を差し伸べようとするが――。
誰もが過酷な運命に吞み込まれようとする中で、「未来のわたし」からの手紙が導くのは、希望か。
それとも、さらなる絶望か――。
出演:
黒島結菜
山﨑七海 坂東龍汰 細田佳央太 近藤華
松坂桃李 北川景子
原作:湊かなえ『未来』(双葉文庫)
監督:瀬々敬久
脚本:加藤良太
製作幹事:東京テアトル U-NEXT 配給:東京テアトル
企画・制作プロダクション:松竹撮影所
Ⓒ2026 映画「未来」製作委員会 Ⓒ湊かなえ/双葉社
公式サイト / 公式X / 公式Instagram


