「中川翔子はもう終わるのかな」不妊治療、2度の流産、双子の出産をへて見えた“キャリアが途絶える恐怖”への最適解

「中川翔子はもう終わるのかな」不妊治療、2度の流産、双子の出産をへて見えた“キャリアが途絶える恐怖”への最適解

40歳で出産し、双子のママとなった中川翔子さん。

2026年5月、妊娠中から描き溜めていた絵日記を一冊のコミックエッセイとして上梓した。

本書では、双子たちとの愛おしい日々だけでなく、卵子凍結や不妊治療、2度の流産、妊娠中の生活、帝王切開当日の緊張や覚悟など、双子誕生までのリアルな日々も描かれている。

『しょこたんの子育てクエスト ママLV.1』(宝島社)を手に取り微笑む中川翔子さん

『しょこたんの子育てクエスト ママLV.1』(宝島社)

2度目の流産後、半年ほど妊活をストップして仕事に集中したことを明かす中川さんだが、39歳で不妊治療を中断するのは怖かったと振り返る。

仕事を優先しても後悔するかもしれないし、妊活を優先しても後悔するかもしれない。正解のない問いの狭間で揺れ続けた中川さんは、どのように選択を重ねてきたのだろうか。

中川翔子さん

中川翔子さん

1985年生まれ。2002年に芸能界デビューし、「しょこたん」の愛称で親しまれる。歌手・タレント・声優・女優・イラストレーターとして多方面で活躍中。 2006年に「Brilliant Dream」で歌手デビューし、同年の3rdシングル「空色デイズ」はアニメ『天元突破グレンラガン』主題歌として大ヒット。第58回NHK紅白歌合戦では同曲を披露。24年リリースの「ACROSS THE WORLD」は『機動戦士ガンダム:銀灰の幻影』主題歌に起用され、オリコン3位を記録。声優としても活躍し、『ポケットモンスター』映画シリーズに12年連続出演。 25年9月末に双子の男の子を出産。SNSでは、妊活や出産、子育てについて発信しており、注目を集めている■Instagram

仕事を止めるのも、不妊治療を止めるのも怖かった

中川さん

20代は、仕事がすべてでした。

そう振り返る中川翔子さん。しかしその一方で、「子どもが欲しい」という思いは昔から強く抱いていたという。

中川さん

結婚のビジョンはなくても、子どもはどうしても欲しいと思っていました。 「なぜ相手ありきなのだろう」とも思っていたし、子どもを持つことでお仕事が止まってしまうのも怖かった。

ずっと、そんなことを考えていましたね。

パートナーはいないけれど、後で後悔することになるのはいやだ。そう思った中川さんは、2018年に卵子凍結を決意する。

中川さん

卵子凍結をするには、決まった時間に薬を打ったり飲んだりしなければいけなくて。

YouTubeの撮影で沖縄に行った時も、注射をクーラーボックスに入れて持って行ったりしていましたね。

インタビューに答える中川翔子さん

そして2023年に38歳で結婚。年齢のことも考えてすぐに不妊治療を開始するが、不妊治療は、心身への負担だけでなく、仕事との両立も大きな壁だった。

中川さん

「この日に病院へ来てください」と突然言われることもあるので、スケジュール調整も大変で。

なかなか人には言いづらいことではあったけれど、マネージャーさんに理解していただき、なんとか調整してもらっていました。

「今こんなに動いて、疲れてしまっても大丈夫なんだろうか」

周りに知られたくない気持ちもあり、友達にもなかなか相談できない中で、そんな不安を抱きながら仕事と治療の両立を続けていた。しかし、その中で2度の流産を経験する。

2度目の流産後、中川さんは一時的に、妊活を中断する決断をした。

中川さん

気持ちは焦っていたけれど、心も体もダメージが大きくて……。半年だけ妊活をお休みすることにしたんです。

頭では「流産は母体のせいではない」と分かっていても、自分を責めてしまう。

「あの時、仕事で新幹線に乗って疲れたせいかな」と、原因を自分と仕事に結びつけて考えてしまうようになり、限界を感じた末の決断だった。

ただ、その決断にも強い恐怖が伴った。

中川さん

当時、私はもう39歳。39歳の半年ってすごく大きいじゃないですか。母体が変わってしまうかもしれない。相談できる人もいないし、本当に怖かったです。

「仕事をセーブして妊活に専念する」という選択肢も頭をよぎった。しかし、その道を選ぶこともできなかった。

中川さん

お仕事をストップして、それで妊活もうまくいかなかったら、それこそ自分がどうにかなってしまうと思ったから。

インタビューに答える中川翔子さん

妊活を始めてからずっと、中川さんの中には“キャリアが終わる恐怖”があった。

今まで積み重ねてきたものが全部なくなっちゃうんじゃないか。夢見ていたこと全て消えてしまうのではないか。そんな思いが付きまとっていた。

そんな中、全国を回る周年ツアーの話が舞い込む。長年夢見てきた、大きな節目となる仕事だった。

悩んだ末、中川さんは一度妊活を中断し、このツアーを走り抜けることを決める。

中川さん

全力で走り抜けて、たくさんの方に会えて。「もしかしたら、これで最後かもしれない」と思いながら歌っていました。

あの時は正解が分からなくて、どっちを選ぶのも怖かったけれど、今となっては、あの時お仕事に集中できて良かったのかなと思っています。一回ちゃんとリセットできたので。

体重は30キロ増え、声も出なくなり…妊娠中も続いたキャリアが止まる不安

その後、妊活を再開してすぐに双子を授かった中川さん。

これまで2回の流産を経験していたこともあり、素直には喜べなかったと明かすが、双子はお腹の中で順調に育っていった。

しかし、不妊治療中にも頭をかすめ続けていた「キャリアが終わる不安」は妊娠中も中川さんに付きまとい続けた。

中川さん

授かってからも「中川翔子はもう終わりかな」と思ってしまっていたんですよね。

30キロ太って体型も変わってしまったし、今まで応援してくれた人たちは、こんな私を見たくないかもしれないとも思いました。

インタビューに答える中川翔子さん

妊娠中に双子に横隔膜を押され、声が出なくなることもあった。歌ったり、話したりする仕事なのに、声が出ない。体型も声もちゃんと元に戻るのか。

一方で、高齢出産かつ多胎妊娠というリスクも抱えている。仕事も出産も、何が起こるか分からない。

先を見通せない不安は妊娠してからも続いたが、双子が7カ月になった今、「このタイミングで妊娠・出産してよかった」と振り返る。

中川さん

あと10年早かったらもっと体力があったのかなとか、体型も早く戻ったのかなと思うこともあります。でも今は、このタイミングで良かったなと思っています

20代、30代の頃はもっと血気盛んというか、イライラすることが多かったんです。余裕もなかったので、もしあの頃に子育てしていたら、 今のように穏やかに接することはできなかったかもしれない。

今はもう、おしっこを浴びても「おもしろい!かわいい!」ってなるし(笑)

中川さん

それは周りの人たちにたくさん助けていただいているからなんだけど、高齢出産だったからというのも大きいなと思っています。

高齢出産って、リスクなどネガティブな側面ばかりが目立つけれど、いいこともあるなって思いましたね。高齢出産って言葉はあまり好きじゃないので、私は「ハイレベル出産」って呼んでます(笑)

正解がない=何を選んでも正解だということ

妊活を優先するのか。仕事を優先するのか。

どちらを選べば後悔しないのか――その答えは、誰にも分からない。

だからこそ、中川さんは「自分で悩み抜いて選んだこと」を大切にしてほしいと語る。

中川さん

何を選んでも絶対に間違いじゃないし、自分で悩んで選んだことは全部正解だと思います。

この時期に何が辛いって、人に相談しづらいことなんですよね。つい不安やストレスを溜め込んでしまう。

未来のことを考えると不安になると思うけれど、心穏やかに過ごせるように、好きなものを食べるとか、自分にご褒美をあげるとか、自分が元気になることを忘れずにやってあげてほしいですね。

インタビューに答える中川翔子さん

出産から7カ月たった今、うれしい気付きもあった。

不妊治療や妊娠、出産は、仕事にマイナスな影響を与えるのではないか――そんな不安を抱えていたが、実際には“新しい世界”が広がった。

中川さん

私が変わろうと変わらなかろうと応援し続けてくれている方もいましたし、今回出版した絵日記をきっかけに応援し始めてくれた方もいっぱいいて。

双子のおかげで、新しい世界を見ることができました

これまで、妊活や育児と仕事を両立することに罪悪感があったと明かす中川さん。

妊活をすることで、これまでの『しょこたん』を応援してくれていた人は嫌な気持ちになるかもしれない。流産も忙しく働きすぎたせいかもしれない。仕事が増えれば、双子に申し訳ない。

多方面への「申し訳ない」に押しつぶされそうになっていた彼女だが、そんな気持ちを変えてくれたのが、本書で対談した12人の子どもを持つ助産師・HISAKOさんの言葉だった。

中川さん

「これからは子どもたちが主人公の人生になる」って話した時に、「それは違う」ってきっぱり言ってもらえて。

「これまでのあなたが終わるんじゃなくて、新しく双子という新キャラが登場しただけ」なんだって。 この時に、「妊娠・出産をしたからって自分のことを諦めなくていいんだ」って思えたんですよね。

中川さん

これからは、子ども向けの歌を歌ったり、コンサートもやりたい。絵本も描きたい。漫画も描きたい。子どもたちが見るアニメの歌や声優の仕事もまたやりたい。

双子をしっかり育てながら、自分のやりたい事も諦めずにやっていきたいです。

妊娠、出産とキャリア。

バランスの取り方に正解はないけれど、悩んで決断した先には、今の自分には見えない景色が広がっているのかもしれない。

未来をまっすぐ見つめながら夢を語る中川さんの笑顔は、そんな希望を感じさせてくれる。

カメラに向かってポーズを取る中川翔子さん

取材・文/光谷麻里(編集部) 撮影/笹井タカマサ

書籍情報

『しょこたんの子育てクエスト ママLV.1』(宝島社)

『しょこたんの子育てクエスト ママLV.1』(宝島社)の書影

不妊治療や流産の経験から、巨大化するお腹との日常、帝王切開当日の緊張と覚悟、そして産後の双子育児までを率直に描写。

双子出産という大きな転機を経て“母になった中川翔子”の現在を、しょこたんらしい世界観でユーモラスかつリアルに綴ります。SNSに投稿された漫画だけでなく、本書限定のエピソードも!

子育て中の方はもちろん、これから妊娠・出産を考えている方、仕事と育児の両立に不安を抱える方、パートナーとの育児分担に向き合うすべての方に手に取っていただきたい一冊です。

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