【塩野瑛久】戦隊ヒーローを経て、映画俳優を目指すも…“アイドル的需要”に苦悩した13年目の真実

【塩野瑛久】戦隊ヒーローを経て、映画俳優を目指すも…“アイドル的需要”に苦悩した13年目の真実

俳優デビュー直後に出演したスーパー戦隊シリーズ『獣電戦隊キョウリュウジャー』(テレビ朝日)で注目を集めてから13年。

映画や舞台から大河ドラマ、コメディー作品まで、ジャンルを問わず活躍の場を広げ続ける塩野瑛久さん。

演技派俳優として広く注目を集めるきっかけとなったのが、2024年に出演した大河ドラマ『光る君へ』(NHK)だ。

それまでも映画俳優の道を志し、挑戦を続けていた彼だが、「戦隊ヒーロー出身」という肩書きへの先入観や、アイドル的なポジションを求められることに葛藤することも多かったという。

それでも自分の選択を信じ、志す道を歩み続けることができたのはなぜなのだろうか。2026年6月19日に公開される『マジカル・シークレット・ツアー』での挑戦とともに、そのキャリア観に迫った。

カメラに向かってポーズを取る塩野瑛久さん

塩野瑛久さん

1995年1月3日生まれ、東京都出身。2012年、俳優デビュー。13年、スーパー戦隊シリーズ『獣電戦隊キョウリュウジャー』(テレビ朝日)で注目を集め、その後もドラマ『来世ではちゃんとします』シリーズ(テレビ東京・20年~23年)や『無能の鷹』(テレビ朝日・24年)、大河ドラマ『光る君へ』(NHK・24年)、『未来のムスコ』(TBS・26年)など話題作に出演 ■X

「善人・悪人で割り切れない役」を理解するための新しい挑戦

今月公開の映画『マジカル・シークレット・ツアー』は、「金の密輸」という秘密で結ばれた3人の女性たちのイリーガルな自分探しの旅を描いた作品だ。

平穏な日常を送っていた二児の母・和歌子(有村架純)は、ある日突然、夫の借金と解雇の事実を知る。返済のためにたどり着いたのは、シンガポールでの闇バイト「金の密輸」だった。

塩野さんが演じるのは、横領による解雇を隠している和歌子の夫・高志。物語の発端をつくる重要な人物だ。

高志は単純な悪人として描ける人物ではない。その複雑な人物像を自分の中に落とし込む過程は、塩野さんにとっても大きな挑戦だったという。

塩野さん

高志は、分かりやすく「ダメなやつ」の一面も持っていれば、そうでない一面も持っています。すごく人間らしい人物なんですよね。

高志が倒れたシーンから物語は始まるのですが、病気などで体が不自由になると、それまで傲慢だった人が急に優しくなったりすることってあるじゃないですか。

そういう人間の多面性やリアリティーを意識しながら役づくりをしていきました

映画『マジカル・シークレット・ツアー』場面写真

高志という人物を理解するため、塩野さんは今回、現場に入る前に監督の発案により新たなアプローチにも挑戦した。

監督から投げ掛けられる質問に対し、高志になり切って回答していくというものだ。

塩野さん

たとえば、高志のパートナーである和歌子について、「どんな人物だと思う?」と聞かれて、高志として答えていくんです。

「和歌子は主体性がなくて、自分の意見を言わないんですよね。何事も基本的には僕が決めます。そうしないと彼女はどうしていいか分からないと思うんで」といった感じで。

塩野さん

高志という人物を理解し切れていない中で答えていくのは、すごく難しかったです。

ただ実際にやってみると、高志の心情や人物像を深掘ることができるだけでなく、これまで妻とどんな生活を送ってきたのか、どうして二人は結婚に至ったのかなど、二人が紡いできた歴史も想像することができて

キャラクターへの理解を深める上で、とてもいい機会になりました。

映画『マジカル・シークレット・ツアー』場面写真

どうしようもない一面を持ちながらも、どこか憎み切れない。そんな複雑な人物像と向き合った経験は、塩野さんにとって新たな引き出しを得る機会になった。

映画俳優の道を志すも、アイドル的な需要との間で葛藤した日々

「金の密輸」という秘密で繋がる3人の女性たちは、それぞれ異なる事情を抱えているものの、「女性であること」によって軽視されてしまう共通の苦しみも描かれている。

その姿を見て、塩野さんは自身のキャリアを重ね合わせる瞬間もあったという。

塩野さん

エンタテインメント業界では、知名度やイメージによって扱われ方が変わってしまう現実が少なからずあると思っています。

僕自身も「あ、軽視されてるな」と感じる瞬間は、これまでの人生の中で確かにありました。

そういう意味では、彼女たちが抱える悔しさや葛藤に共感できる部分はあります。

俳優デビューした翌年の2013年、スーパー戦隊シリーズ『獣電戦隊キョウリュウジャー』で注目を集めた塩野さん。

傍から見れば華々しいスタートだが、その肩書きは時に、自らが目指す未来との間に壁をつくることもあった。

塩野さん

僕の場合はありがたいことに、早い段階でスーパー戦隊シリーズのオーディションに合格したので、無名の時代が長かったわけではありません。

経験が浅いまま表舞台に立ったので、「ちゃんと見せられるものにしなければいけない」「このフィールドで実績を出さなければいけない」というプレッシャーはありましたが、恵まれたスタートだったとは思います。

塩野さん

ただ僕は、映画の世界がすごく好きだったので、映画俳優としての道を進みたくてチャレンジを重ねてきました。でも、周囲から求められるものは、分かりやすくアイドル的なポジションだったんです。

映画に登場する3人の女性たちは「女性であること」が壁になっていたけれど、僕の場合は男性だったからこそ、軽んじられたり、自分がやりたいことをやる上で壁を感じたりすることがありました。

カメラに向かってポーズを取る塩野瑛久さん

アイドル的な需要と、映画俳優として生きていきたいという思い。その狭間で葛藤しながらも、塩野さんが自分の選択に迷ったり、自信を失ったりすることはなかった。

塩野さん

自分の選択を後悔しないために、軸がブレそうになった時は一度立ち止まって、信念に立ち返るようにしています。

自分が本当に望むことは何なのか。しっかり向き合った上で道を選択することを常に意識しています。

自分の信念に従って進んだ先に、明るい未来が待っているとは限らない。

結果が出ない時間が続けば、「本当にこの道でいいのだろうか」と迷いが生まれることもあるだろう。

それでもなお、自分を信じ続けられる理由を尋ねると、塩野さんは迷いなくこう答えた。

塩野さん

自分の意志で選択した道だからだと思います。

誰かにやらされている仕事ではなく、自分で選んでこの道にいる。そう思えることが、自分を支えてくれているんです。

それに、応援してくださっている方々も、僕が自分の意志で選択し、進んでいく姿を見てくださっているはず。だからこそ、その方々に対して、絶対に不誠実なことだけはしたくないという強い思いがあります。

カメラに向かってポーズを取る塩野瑛久さん

自分の信念と真正面から向き合った上で選んだ道だからこそ、たとえ結果が見えなくても、その選択に自信を持てる。

塩野さんの揺るがない信念は、「自分で選択する」というシンプルな覚悟の上に成り立っている。

苦しければ、道を変えたっていい

自分で選んだ道だからこそ信じ続けられる。

そう語る塩野さんだが、一方で「つらければ、道を変えたっていい」とも話す。

塩野さん

最終的なゴールさえブレさせなければ、そこへの向かい方は何でもいいと思っています。自分のやりたい気持ちを貫くのがつらいなら、周囲に求められる役割に応えることを優先する時期があったっていい。

回り道や軌道修正はしてもいいけれど、最終的な目的地だけは絶対に明け渡さない。僕自身も、ずっとそんな気持ちでやってきました。

カメラに向かってポーズを取る塩野瑛久さん

「今の仕事は自分に向いていないかもしれない」
「この転職は失敗だったかもしれない」

そんな風に、自分の選択に自信が持てない働く女性も多い。塩野さんは、そんな人たちに「回り道をしたからこそ見える景色もある」とエールを送る。

塩野さん

前に進むための選択なら、どんな道をたどってもきっと大丈夫。

回り道をしたことで、自分が漠然と思い描いていた「なりたい姿」や「行きたい場所」が明確になることもありますから。

別の角度から見てみたら、それまで自分が「きれいな丸」だと思っていたものが、実は少しいびつな形をしていたり、そのいびつさこそが本当に美しいのだと気づいたりすることもあると思います。

今の場所からでは見えない景色が、進んだ先には必ずある。回り道をしながら物事を見つめ直してみることは、とても有意義なことなんじゃないかな。

自分の選択に自信が持てない時、人はつい「正しい道」を探してしまう。

けれど塩野さんが教えてくれたのは、正解の道を選ぶことではなく、自分で選んだ道に意味を見いだしていくことの大切さだ。

悩んで、迷って、遠回りして選択した一つ一つが、まだ見ぬ景色へとつながっているのかもしれない。

カメラに向かってポーズを取る塩野瑛久さん

取材・文/光谷麻里(編集部) 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER) ヘアメイク/奥平正芳 スタイリスト/能城匠 (TRON)

作品情報

映画『マジカル・シークレット・ツアー』6月19日(金)全国公開

映画『マジカル・シークレット・ツアー』キービジュアル画像
<あらすじ>
罪という秘密が3人を仲間にした、魔法のような半年間。
あの旅が、私たちを変えた―― 生きることに夢中になった。
平穏な日常を送る二児の母が、突然知らされた夫の借金と、解雇。
返済のため行きついたのは、シンガポールでの闇バイト【金の密輸】だった。
そこで偶然出会った、非正規雇用の研究員と、未婚で妊婦のキャバ嬢。
密輸の成功に味をしめた3人は、自分たちで密輸を始めることに!
人生、思いっきり生きる!このラスト、痛快!
実話に着想を得た【金密輸事件】を描く、違法だけど痛快なエンタテインメント。

出演:
有村架純
黒木 華 / 南 沙良
塩野瑛久 青木 柚 / 斎藤 工
監督:天野千尋
脚本:天野千尋 熊谷まどか 音楽:侘美秀俊
主題歌:『ありあまる富』椎名林檎(EMI Records / UNIVERSAL MUSIC)
製作幹事:murmur ⽇本映画放送 企画:カラーバード 制作プロダクション:エピスコープ
配給:アスミック・エース

公式サイト:https://magicalsecrettour.asmik-ace.co.jp
公式X:@magical_0619
公式Instagram:@magicalsecrettour_movie

(C)2026「マジカル・シークレット・ツアー」製作委員会