24 JAN/2017

【はあちゅう×村上萌対談:後編】「私らしい恋愛・結婚」について考える――自分を犠牲にする恋や仕事に未来はない

自分らしさって何だろう。そんなモヤモヤから出発したちゅうもえトーク。後半のテーマは、自分らしい人生を築くための「恋愛・結婚」とは何か――。

時に仕事やプライベートにまで影響を及ぼす20代女子の恋愛・結婚について、はあちゅうさんと村上萌さんが自身の経験に基づいたリアルな意見を聞かせてくれた。

ちゅうもえ

<プロフィール>
写真左:はあちゅうさん(30)

ブロガー・作家。1986年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。在学中にブログを使って、「クリスマスまでに彼氏をつくる」「世界一周をタダでする」などのプロジェクトを行い、カリスマ女子大生ブロガーとして活躍。電通、トレンダーズを経てフリーに。「ネット時代の作家のかたちをつくる」ことを目標に、オンラインサロンや月額課金コンテンツ『月刊はあちゅう』の運営など、表現の場所を広げている。近著に『半径5メートルの野望』(講談社)、『かわいくおごられて気持ちよくおごる方法』(幻冬舎)、『とにかくウツなOLの、人生を変える1か月』(角川書店)など
Twitter:@ha_chu ブログ:http://lineblog.me/ha_chu/
写真右:村上 萌(むらかみ・もえ)さん(29)
メディアブランドNEXTWEEKEND代表。「おてんばな野心を、次の週末に叶える」のコンセプトのもと、季節の楽しみと小さな工夫を提案。ウェブサイト『NEXTWEEKEND』の運営を始め、連動した雑誌『NEXTWEEKEND』の刊行(年2回)や週末イベント、ECストアの運営、その他空間や商品などのプロデュースを手掛ける。著書に『カスタマイズ・エブリデイ』(マガジンハウス)、雑誌『NEXTWEEKEND』(世界文化社)、『週末野心手帳』(ディスカヴァー21)など
instagram:moemurakami_ Twitter:@moemurakami_

「仕事ができる人はもれなく恋愛力も高い」というのは鉄則!?

――そもそも前提としてなのですが、20代の働く女性たちにとって、「恋愛すること」って必要ですか?

はあちゅうさん(以下、はあちゅう):それはもう絶対必要です!

村上さん(以下、村上):間違いなく必要ですね。

――即答ですね(笑)!

ちゅうもえ

はあちゅう:なぜかと言うと、大人になってからの人間関係って浅く済ませた方が楽なことって多いと思うんですよ。例えば、会社や取引先に嫌いな人がいたとしても“仕事だけの付き合い”にして深入りしなければ、ストレスも最低限に抑えられます。それが、良くも悪くも大人になるということ。でも、恋愛だけは別です。恋人になったら、相手の嫌なところも知る必要があるし、浅い人付き合いはできない。その人のバックボーンも含め、他者を受け入れていかないといけない。

それって“浅くて気楽な付き合い”に慣れた大人からすると、とても面倒臭いことです。でも、そうやって深くコミュニケーションを取るからこそ出会える新しい価値観もあるし、人間的な成長もある。恋愛からしか学べないことってすごく多いと思うんですよね。

ちゅうもえ

村上:自分の知らないさまざまな感情を経験できるのが恋愛の醍醐味。恋愛をしていないと、その感情の幅を味わうことができないから、どうしてもボギャブラリーが少なくなるし、想像力もなくなってしまいがち。例えば、ビジネスメール1つにしても、「ここにこの一言を加えるだけで相手が喜ぶだろうな」ってことがあるじゃないですか。そういう相手を想った気遣いって、恋愛経験があるとより一層磨けると思うんですよね。

はあちゅう:萌ちゃんの言うとおり、「仕事ができる人はもれなく恋愛力も高い」というのは鉄則かもしれない。あと、私25歳のときに結婚を考えていた方とお別れしたんですけど、それから1カ月間くらい、仕事もまるで手がつかなくなった時期がありました。それまでは「失恋くらいで仕事ができなくなるなんてあり得ない」って、恋愛に振り回される人をちょっとバカにしてたのに。でも、本当に大事な人を失うことは、こんなに悲しいことだったんだということを知ることができて、周りの人の気持ちにも理解を示せるようになりましたね。

――人の感情に対する想像力が増すというのは、確かにそうですね。自分が経験していないと分からないことも多いものです。一方で、恋愛にハマって「自分らしさ」を見失うことってありませんか? 何となく相手に合わせて自分をつくってしまったり、自分が守ってきたものを乱されてしまったり……。

ちゅうもえ

はあちゅう:もちろんそういうこともあります。20代のうちなんて、恋愛に没入してしまってプライベートを犠牲にしたり、仕事を犠牲にしたりしてしまうこともあると思います。でも、そういう恋を20代のうちに経験しておくことが大事だと思いますね。若いうちにちゃんとそういう経験を積んでおかないと、本当に自分にぴったりだと思える人を見極める目が養えないから。たくさんの犠牲の上に、初めて「自分を犠牲にしないでいい関係」を築けるんだというのが私の持論。自分らしくいられる相手に巡り会うためにも、自分らしさを失う恋もまた必要な経験なんじゃないかな。

村上:うん。結婚に関しても、相手のために自分を犠牲にするような関係性は絶対にうまくいかない。

――村上さんは24歳と比較的若くして結婚されましたよね。それに、ご主人の仕事の都合で札幌に移住もされていますが、そこに抵抗感はありませんでしたか?

ちゅうもえ

村上:「夫の仕事の都合で移住」とだけ聞くと、私の方が犠牲を払っているように聞こえるかもしれません。でも、私にとって今回の移住は「自分らしい選択」でした。スポーツ選手をしている夫との付き合いは学生の頃からで、この人と結婚することは当然のことだって思っていましたし、就職活動中もずっと「どうやったら移籍の多い彼と結婚をしても楽しく自分の仕事が続けられるだろう」ということは考えていましたから。

――もともと、いまのご主人との結婚を見据えた上で、自分らしい仕事ができる環境をご自身でつくっていらしたんですね。

村上:結婚したばかりのときはそこまで具体的に考えられていませんでしたが、「自分の暮らしと地続きになっている仕事をしよう」ということだけは、漠然と意識していたのかもしれません。

例えば、スポーツ選手の食事の支度や身の回りのサポートは、それだけでも大仕事。そこにまったく関係のない別の仕事がプラスされたら、労力も負担も倍になる。大好きな人を全力で支えたいというのが、まず私の暮らしのベース。その延長線上にあって、しかも私がそれをすることで「誰かの役に立つこと」を仕事にしようと考えた結果、辿り着いたのが今の仕事なんです。仕事やキャリアと恋愛・結婚を別々に考えるのではなく、両方どちらも自分の人生にとって大事なものなのだとしたら、それを同一線上で考えてみることも大切なのかなと思いますね。

自己犠牲から生まれるものは少ない
自分の「幸福度」を高めることが仕事の質を良くすることにつながる

ちゅうもえ

はあちゅう:「自分の暮らしの延長線上に仕事をつくる」ということは、結婚・恋愛に限らず、大事なことだと思います。私もフリーになって、ようやくそういう仕事ができるようになってきた。今、『月刊はあちゅう』というエッセイをnoteで書いていますが、ここに書いてあることは私が日々の暮らしの中で感じたことや気付きそのもの。そうやって自分の暮らしの中に自然と仕事を溶けこませていくことは、理想の働き方と言えるかもしれません。

村上:「暮らしの延長線上で仕事をする」っていうのは、決して私のように生活に関わるアイテムを扱うとか、そういうことではなくて。言い換えるなら、ずっと長く続けられる仕事だということ。結婚、出産、転職、配置転換など、たとえ環境が変わっても「続けていける」と思える働き方こそがが、「暮らしの延長線上で仕事をする」ということかな。

プライベートとのバランスとか、仕事に対するスタンスとか、もしも今「自分を犠牲にしている」と感じているなら、その感覚のままではずっとその道を歩き続けることなんてできない。漠然とでもいいから、自分が何を大切にしたいのかをちゃんと見据えておくことが重要です。その答えは人それぞれ違うもの。決して誰かと比べるものではないと思う。

ちゅうもえ

はあちゅう:「人生において大事にしたいもの」その答えこそが、「自分らしさ」なんだと思います。私が今一番大切にしているのは、仕事のために無理をしない生き方かな。会社員の頃は自分を犠牲にすればするほど仕事は上手くいくと思っていた。でも今は自分の幸福度を高めることが仕事の質も良くするんだって思えるようになりました。

――では、最後に働く女性たちに向けて、「人生における大切なもの」、「自分らしさ」を一人一人が見つけるためのアドバイスがあればぜひ。

はあちゅう:20代は感情が揺れ動きやすい時期だからこそ、自分の変化に敏感になるといいと思います。日々変化する自分の心境を、ただ目の前を通り過ぎていく景色のように眺めるのではなく、ちゃんと定点観測すること。例えば、手帳に日記をつけるとか、SNSで何か発信するとか、そういう気軽なところからで全然構いません。自分の感情を出せる場所を用意してログをとっておくことで、後で振り返ったときに、自分が何に幸せを感じるのか、何を不幸せだと思うのか、自分でも気付かなかった「物差し」を見つけられるようになると思います。

村上:私も、自分の感情を記録してみることが「自分らしさ」発見の近道だと思います! 自分の歩いてきた道のりが可視化されたら、「自分は目標に対して今ここまで来たんだ」ってことが分かるようになる。一歩でも二歩でも自分が歩を進めていることが実感できると、将来に対する漠然とした不安感も減っていくはずですよ。

【ちゅうもえ特別対談企画】
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取材・文/横川良明 撮影/赤松洋太